2024年05月05日( 日 )

木材本来の強み生かし利用促進へ法改正で記念シンポジウム開催

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CLT需要を増やし、単価低減の実現が必要

_耐火木構造を採用した「江東区立有明西学園」
_耐火木構造を採用した「江東区立有明西学園」

    記念シンポジウムでは、林野庁長官・天羽隆氏がコーディネーターとなり、パネルディスカッションも行われた。パネリストは、東京海上日動火災保険(株)相談役・隅修三氏、消費者庁長官・伊藤明子氏、林業漫画家・平田美紗子氏の3名。隅修三氏は「マンションなど中高層建築の木造化により、大きな木材需要を生み出すことができる」と話した。木造ビルの普及に向けて、林業再生補助金の見直しなどによる木造の安定供給体制の整備、一級建築士への木造の教育・研修の実施、耐火基準など建築基準法の緩和、CLT需要を増やし、CLT単価を低減することが必要だとした。

 また、木は燃えやすいイメージをもたれているが、断面が大きい場合は木の中心部までは燃えにくく、耐火性も保たれる。さらに、鉄の場合、火災から10分後に20%以下まで強度が落ちる一方で、木は炭化層の働きで約80%に保たれて強度が急に落ちにくいという性質がある。「木造の中高層建築を多くの人に体感してもらい、『常識』に囚われた施主・発注者の意識を変えることが必要だ」(隅修三氏)と続けた。東京海上日動火災保険は、地下3階・地上19階建(延床面積約12.5万m2)の「新・本店ビル計画」(28年度竣工予定)において、柱や床材などの構造材に木材を用いて、「国産材1万m3の利用を見込んでいる」(隅修三氏)。

 伊藤氏は「日本の個人消費はGDPの半分以上を占める。そのため、木材利用を推進するには、脱炭素化や木材の大切さなどを国民に向けて発信することが必要だ。とくに若い世代にとって木材は、新たな良さを発見する素材という感覚が強いのではないか」と話した。

 平田氏は「循環型資源として木材が活用される流れが強くなることを目指している。自宅マンションのリフォーム時は、リフォームへの北海道産材の利用が進んでいないなかでも、道産材を準備することができたため、地域の木材を身近に利用できると知ってもらうことが大切だ」とした。平田氏は林野庁北海道森林管理局職員でもあり、都会に暮らす人、とくに子どもたちに森林や林業を知ってもらえるよう、「北の森漫画」を描いて発信している。

北海道のカラマツを用いた「マザーズプラス(mother's+)」
北海道のカラマツを用いた「マザーズプラス(mother's+)」

【石井 ゆかり】

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