木材本来の強み生かし利用促進へ法改正で記念シンポジウム開催
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木材利用で脱炭素社会を実現
「脱炭素社会の実現に資する等のための建築物等における木材の利用の促進に関する法律」(改正公共建築物等木材利用促進法。以下、木材利用促進法)が10月1日に施行。これを記念した講演会・シンポジウムが10月8日に開催された。
今回の法改正では、木材利用促進の対象を公共建築物から民間建築物まで拡大した。さらに、木材利用促進本部を農林水産省に設置し、林業および木材産業事業者に対して木材安定供給を努力義務化。さらに、10月8日を「木材利用促進の日」に、10月を「木材利用促進月間」に定めた。
新国立競技場のデザイン・設計に携わった建築家・隈研吾氏による記念講演「木が拓く日本の未来」も実施。隈氏は、「木は日本にとって経済や文化を動かすための基本となる存在だ。木は単に建築の仕上げ材として利用されるだけではなく、木造は社会全体にとってとても重要な仕組みだ」と話した。その隈氏は、12階建の高層木造商業施設・(仮称)銀座8丁目開発計画などの建物で、新たな木材利用の手法を提案している。
(仮称)銀座8丁目開発計画(10月8日現在)
デザイン監修:隈研吾建築都市設計事務所
事 業 者 :ヒューリック(株)
設計施工 :(株)竹中工務店
建築面積 :252m2
延床面積 :2,457m2
竣 工 :2021年10月(予定)
燃エンウッド(耐火集成材)・集成材、CLT、内装材、外装材(木ルーバー)により、構造材と仕上材の総量で302m3の木材を使用している。隈氏は「木材は燃えやすいのではないかと懸念されやすいが、耐火集成材の燃え止まり機構により、木材を現し(※)で用いることができる」という。
※現し:木の梁や柱の表面などを耐火被覆せずに使うこと。
木材利用の取り組みとして隈氏はほかにも、壁や屋根に地元の木材を使うことで、木材輸送による温室効果ガスの排出量を減らし、地元の経済活性化や地域文化の強化を目指した栃木県の「那珂川町馬頭広重美術館」(2000年7月竣工)なども手がけている。
そして、伝統的な木組み構造を用いたデザインの「スターバックスコーヒー太宰府天満宮表参道店」(11年11月竣工)は特徴的な空間が話題となり、「インスタグラムに最も多く載ったスターバックスとなった」(隈氏)という。
また、人が集まれる空間づくりや、新潟県長岡駅前をウォーカブルにすることを目指した「アオーレ長岡」(12年2月竣工)は、建物に地元の越後杉を利用し、市役所やホールなどの公共施設が一体化した複合施設。18年には、年間来場者数130万人を記録した。太陽光パネルと緑化パネルをデザインとして一体化させて屋根の上に設置するなど、環境に配慮している。【石井 ゆかり】
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