• このエントリーをはてなブックマークに追加
2015年04月22日 14:17

米国債を売却して損失を取り戻せ 植草一秀氏ブログ「知られざる真実」 

 政治経済学者の植草一秀氏が4月21日、自身のブログとメールマガジンの記事で、日本政府が53兆円の巨大損失を出した米国債購入について、円安・ドル高の今こそ米国債を売却して損失を取り戻せと主張した。NETIBでは、同記事の一部を抜粋して紹介する。


 4月15日、米国財務省が発表した国際資本収支統計で、2月末の米国債保有高は、日本が1兆2,244億ドル(約145兆7,000億円)となり、リーマン・ショック直前の2008年8月以来、6年半ぶりにトップになったことが明らかになった。
 メディアは、日本の米国債保有が世界一位に「返り咲いた」などと表現して、日本にとっての「吉報」であるかのように伝えているが、論評にも堪えない低質な情報である。

 報道は、「成長鈍化で国内への外貨流入が細り、人民元安の傾向が進む中、以前のような元売り・ドル買いの為替介入がなくなってきていることが要因」などとするが、これも完全な事実誤認である。
 たとえば、人民元円レートを見ると、2011年3月に1人民元=11.7円だったのが、2014年12月には1人民元=19.8円に、人民元が大幅上昇している。中国人にとってみれば、訪日して消費を行う際の購買力が、わずか4年足らずの間に2倍近くに跳ね上がっている。この中国人観光客が「爆買い」と呼ばれる消費激増を実行して、消費税増税不況に苦しむ日本の消費業界を救済していることがよく知られている。
 政府の外貨準備高で言えば、中国がダントツ一位の約4兆ドル。日本は3分の1の1.3兆ドルである。日本は外貨準備の大半を米国国債で保有している。
 中国の外貨準備が約4兆ドルも存在するなかで、米国国債の保有は中国全体で1.2兆ドルにとどまっている。中国は外貨準備の保有構成(ポートフォリオ)を多様化しているのである。

 日本政府が外貨準備で米国国債を保有している経緯は次の通りである。
 2012年まで、円ドルレートは、円高・ドル安傾向で推移した。この過程で、日本政府は円高の進行を食い止めるという名目の下で、ドル買い・円売りの為替介入を続けてきた。日本政府が日銀からお金を借りて、米ドルを買うのである。
 具体的な保有は米国国債である。政府が日銀からお金を借りて米国国債を購入する。
 これが、政府による外為市場でのドル買い=円売り介入である。2007年6月の時点で日本政府は外貨準備を9,136億ドル保有していた。当時の為替レート1ドル=124円で換算して、113兆円のドル資産を保有していた。
 この2007年6月から2012年1月までの4年半の間に、日本政府はさらに米ドル資産を3,931億ドル買い増しした。政府が米ドル資産を追加購入した際の為替レートは、平均すると1ドル=100円程度だった。つまり、日本政府は約39兆円のお金を注ぎ込んで、3,931億ドルの米ドル資産=米国国債を追加購入したのである。

 2007年6月時点で日本政府が保有していた米ドル資産=外貨準備高が9,136億ドル=113兆円で、ここに39兆円の資金を注ぎ込んで、日本政府の外貨準備高は1兆3,067億ドルに膨らんだ。円資金では113兆円に39兆円を追加投入したから、152兆円の元手がかかっている。
 ところが、2012年1月には、大幅に円高・ドル安が進行していた。1ドル=75円にまで円高・ドル安が進行したのである。その結果、1兆3067億ドルに達した、日本政府が保有する米ドル資産の円換算金額が、なんと98兆円に目減りしたのである。152兆円の元手で購入した米ドル資産の時価評価額が、なんと、たったの98兆円に減少してしまったのだ。日本政府の米国国債投機で、4年半で53兆円の巨大損失を計上したのである。
 このような投機損失など前代未聞である。民間の投資顧問会社であれば、1,000億円の損失を出しただけで大騒ぎである。それに対して、日本政府の投資損失は、わずか4年半で53兆円。1,000億円の投資損失の、なんと530倍の超巨大損失が生まれたのである。

 米国では政府による外国為替介入に対して、厳しい制約と監視がある。「儲かる介入は良い介入、損する介入は悪い介入」として、政府の外為介入での損失を議会が許さない。為替レートが行き過ぎた上昇、下落を示したときに外為介入は行われる。ドル高が行き過ぎたときにドルを売って日本円を買う。ドル高の行き過ぎが是正されればドルは下がり、円は上昇する。この局面で、介入して購入した円を売れば、為替利益を獲得できる。これが「良い為替介入」である。
 日本政府が、値下がりするドルを買い続けて、巨大な為替損失を生み出すことなど、まさに言語道断。厳罰に処されなければならない、国民に対する背任行為なのだ。
 しかし、日本では、53兆円もの外為損失を計上したにもかかわらず、ただの一人も責任を問われていない。その一方で、米国国債保有が世界一などと持ち上げる、馬鹿馬鹿しい報道が展開されているのである。

※続きは、メルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」第1129号「総督でなく首相なら米国債売却を決断できる」で。


▼関連リンク
・植草一秀の『知られざる真実』

 
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

     

トップニュース

2021年08月05日 11:07

【読者からの投稿】コロナ感染者の入院制限方針についてNEW!

 新型コロナウイルス感染者の入院制限方針ですが、受け入れる側の医療機関からすれば、すでに崩壊に直面しているわけなので、本件やむなしと思えるかもしれません...

2021年08月05日 10:52

京大名誉教授鎌田氏が富士山噴火について語るNEW!

 江戸時代の1707年(宝永大噴火)を最後に約300年噴火していない富士山。関連の学会ではそう遠くない時期の噴火の可能性およびその場合の被害などについて議論されている...

2021年08月05日 10:06

博多三大祭り・筥崎宮の放生会~規模を縮小、露店出店は中止NEW!

 新型コロナウイルス感染拡大を受け、お触れ行事や御神輿清などの神事を取りやめるなど、規模を縮小して開催する...

2021年08月05日 09:36

動物園アジアゾウ舎整備、別府JVが2.4億円で落札NEW!

 福岡市発注の「動物園アジアゾウ舎放飼場整備(その3)工事」を(株)別府梢風園を代表とする別府・小山JVが2億4,361万2,000円(税別)で落札した...

2021年08月05日 06:00

同一労働同一賃金、個別の処遇は?NEW!

 今回は、個別の処遇について検討します。なお、以下の解説はあくまで例示ですので、会社によってその手当の「性質・目的」が異なる場合には、別の結論になることもあります...

2021年08月05日 06:00

【みやき町「健幸長寿」のまちづくり(4)】健幸長寿の象徴をカタチに、元気なまちづくりを支援NEW!

 「市村清記念メディカルコミュニティセンター」は、隣接する町営の温水プール施設の改修に合わせて周辺一帯を再開発する「メディカルコミュニティみやきプロジェクト」の肝とな...

2021年08月05日 06:00

【球磨川水害から1年】「流水型ダム」が球磨川治水の要(中)NEW!

 あくまで個人的な意見になるが、緊急治水対策プロジェクトのさまざまなメニューのなかで、最も重要であり、最も象徴的な対策は、流水型ダムだとシンプルに考えている...

2021年08月05日 06:00

22年度、ついに延伸開業 地下鉄・七隈線が博多駅へ(5)NEW!

 薬院は、七隈線では天神南に次いで2番目に乗降人員が多い駅である。西鉄・天神大牟田線への乗り換えが可能なほか、駅前から博多駅方面へのバスも運行しており、交通結節点の様...

2021年08月04日 17:02

中国の再エネ巨大市場 脱炭素化を追い風に「技術覇権」狙う(前)

 中国は世界の太陽光パネル生産量の約8割を占め、風力発電設備でも主要生産国の1つだ。巨大エネルギー市場をもつ中国は石炭火力発電が主力であるが、再生可能エネルギーが急拡...

2021年08月04日 16:25

【業界を読む】斜陽産業だが改革進まず、新聞は恒常的な赤字事業へ(後)

 毎日新聞は毎日新聞グループホールディングスの連結決算の公表がなくなり、持株会社と毎日新聞社の単独決算だけが公表されたため、別表は毎日新聞社単独の業績推移と決算内容で...

pagetop