2021年12月07日( 火 )
by データ・マックス

『競争と情報』~未来予測力と危機管理力の強化~(9)

日本ビジネスインテリジェンス協会会長
日本大学大学院グローバル・ビジネス研究科講師
東京経済大学経営学部・大学院経営学研究科元教授

中川 十郎 氏

結論~情報教育の強化を

ローバル・ビジネス イメージ ステバン・デデイジェール博士は筆者の情報研究の恩師でもあるが、1972年、世界で最初にスウェーデンのルンド大学大学院に画期的なビジネスインテリジェンス講座を設けた。私は過去2回ほど同大学に招かれ、情報をテーマに講演したことがある。

 デデイジェール博士は、情報収集・活用において世界的に有力な情報機関として3つを挙げている。それは、バチカンとスイス銀行、そして多国籍企業ロイヤル・ダッチ・シェルだ。

 バチカンは教会、神父の宗教ネットワーク、スイス銀行は金融ネットワーク、シェルは世界中に張りめぐらせた石油・エネルギーのビジネスネットワークを通じ、それぞれ世界中の関係情報を収集、活用してきた強力な情報・諜報機関であるというのが、彼の説である。

 スウェーデンには強力な情報戦争学校があり、軍・産・学の情報専門家を総動員して、熾烈なグローバル・ビジネス競争を勝ち抜くためのビジネスインテリジェンス教育を行っているというのもうなずける。

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 フランスは2006年10月、パリ近郊のベルサイユにヨーロッパ経済情報大学院を設立。有力企業、欧州委員会、欧州各国教育機関と連携を強化し、EUを挙げて全ヨーロッパベースで情報教育に力を入れている。このことを日本は強く認識すべきである。

 世界金融危機の後、グローバル・ビジネス競争はさらに熾烈となってきており、ビジネスインテリジェンスの収集、分析、活用の仕方いかんが企業の死命を制するといっても過言ではない。我が国も欧米の情報先進国に対抗するために、官・産・学・軍の情報教育の強化が喫緊の課題である。

 我が国は知識情報時代を見据え、欧米並みに産・学・官が協力し、ビジネスインテリジェンスを大学学部、大学院で本格的に教育するためのカリキュラムを早急に導入し、欧米に30年遅れている情報教育の挽回に全力を注ぐべきではないだろうか。

 ビジネスインテリジェンス教育をいつまでも疎んじるようならば、我が国は今後とも欧米の金融、経済危機に性懲りもなく翻弄され続けると思われる。

(つづく)


<プロフィール>
中川 十郎(なかがわ・ じゅうろう)

 東京外国語大学イタリア学科国際関係専修課程卒後、ニチメン(現・双日)入社。海外8カ国に20年駐在。業務本部米州部長補佐、開発企画担当部長、米国ニチメン・ニューヨーク本社開発担当副社長、愛知学院大学商学部教授、東京経済大学経営学部・大学院教授などを経て、現在、名古屋市立大学特任教授、大連外国語大学客員教授。日本ビジネスインテリジェンス協会理事長、国際アジア共同体学会顧問、中国競争情報協会国際顧問など。著書・訳書『CIA流戦略情報読本』(ダイヤモンド社)、『成功企業のIT戦略』(日経BP)、『知識情報戦略』(税務経理協会)、『国際経営戦略』(同文館)など多数。

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