2021年12月03日( 金 )
by データ・マックス

【大企業の「解体新書」】東芝解体の前にセゾングループの解体が(前)

 経営理論には流行がある。2021年の経営改革のキーワードは「会社分割」になりそうだ。(株)東芝の会社3分割が話題になったが、海外でもグローバル企業の会社分割がトレンドだ。バブル崩壊後はセゾングループの解体があった。会社分割に至る経営理論の変遷をたどってみよう。

「選択と集中」の元祖・米GEが会社分割

オフィス街 イメージ 日本経済新聞は11月10日、米ゼネラル・エレクトリック(GE)が中核3事業の分離を決めたと報じた。2024年までに航空機エンジン・医療機器・電力の3つの事業会社に分割し、それぞれが株式を上場する。事業ごとの経営課題が複雑化するなか、各社が単一事業に専念して成長分野に投資を集中するという。

 1980~90年代にGEを率いたジャック・ウェルチ氏の経営戦略が「選択と集中」。その「選択と集中」の元祖企業であるGEが3分割する。日経は「複合企業の代表格だったGEの解体は最終章を迎えるが、小粒になった個別事業が生き残れる保証はない」と厳しい見方をしている。

 続いて11月12日、ニューヨーク発で、製薬大手のジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)が、日用品や市販薬を含む「消費者向け部門」と、処方薬と医療機器などの「医療向け部門」の2事業に分割すると発表したと報じた。

 10月28日、ロンドン発で、米投資ファンドのサード・ポイントが英蘭石油大手ロイヤル・ダッチ・シェルに会社分割を提案したと報じた。

 (株)東芝は11月12日、会社全体を3社に分割して、それぞれ23年度下期をめどに上場させる計画を表明した。東芝もまた、「小粒になった個別事業が生き残れる保証はない」という意味ではGEなどと同じだと言えるだろう。

バブル崩壊後に流行した「選択と集中」

 経営理論には流行がある。2000年代、経営改革のキーワードとして「選択と集中」が流行した。「選択と集中」は、自社が得意とする事業分野を明確にして、そこに経営資源を集中的に投下する戦略のことをいう。

 日本企業の場合、1980年代のバブル経済期においては、むしろ多角経営がもてはやされた。「選択と集中」が注目されたのはバブル崩壊後の1990年半ばからで、バブルの時代に広げすぎた戦線の縮小を迫られたのだ。そのときの行動指針となったのが、ウェルチ氏の「選択と集中」だったのである。

 大流行した「選択と集中」の結果はどうだったか。成果を上げた企業もあるが、失敗した企業の方がはるかに多い。

 「選択と集中」には2つの点でリスクがある。

 1つ目は、あたりはずれが大きいという点だ。特定分野に特化するので、それだけ外部環境の変化に大きく左右されてしまう。一発当たれば儲けが大きいが、外れたら皮算用なんか吹き飛んでしまう。ハイリスク、ハイリターン戦略なのである。

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 2つ目は、短期決戦型のため、長期的な視野に立った経営には向いていないという点だ。儲かっている事業だけやって、儲かっていない事業は切り捨てるわけなので、4~5年のスパンで業績を向上させるのには適している。だが、特定の事業だけで、長期的に高収益を続けるのは至難の業だ。「選択と集中」は、儲からない新事業の芽を摘み、縮小均衡を繰り返すという悲惨な結果を招いてしまう。

東芝は「選択と集中」が命取りになった

オフィス街 イメージ 東芝の例を見てみるとわかりやすい。

 「選択と集中」で名前を売った、スター経営者は、東芝社長(当時)の西田厚聰氏である。圧巻は、2006年2月の米原子力プラント大手、ウェスチングハウス社(WH)の買収だ。大本命と目されたのが、WH社と古くから取引関係がある三菱重工業だったが、東芝は、想定をはるかに超える約6,200億円の買収価格を提示して、最終コーナーで三菱重工を抜き去り、大逆転に成功した。

 勝者となった西田氏は、半導体と原子力発電を経営の二本柱に掲げた。両事業に経営資源を集中する一方、音楽事業の東芝EMIや銀座東芝ビルを売却、第三世代光ディスクHD DVD事業から撤退した。東芝は総合電機メーカーだが、圧倒的にナンバーワンといえる分野はなかったが、選択と集中を進めた結果、半導体は国内首位で世界3位(いずれも当時)、原発は世界首位に躍り出た。鮮やかな選択と集中は、経済メディアから高く評価された。

 しかし、西田氏は東芝のウェルチ氏にはなれなかった。新たな難題が浮び上がったのだ。それは2事業とも特有のリスクが付きまとう、ハイリスク、ハイリターンのビジネスだったということだ。

 半導体事業は価格と需要の変動が激しい。リーマン・ショック後の需要の急減によって価格が70%も下落。東芝は半導体事業が巨額な赤字に転落したため、2009年3月期には3,435億円の最終赤字に転落した。

 経営のもう1つの柱、原子力発電事業は、買収した米WH社が工期の遅れにより巨額の損失を計上。17年3月、米連邦破産法11条を申請した。WHの倒産で、東芝は9,100億円の債権が確定。「選択と集中」が東芝の命取りとなった。

 「選択と集中」は肥大化した多角化事業を整理する短期決戦には向いているが、次世代事業を育てる中長期戦には不向きだ。新事業への種まきは赤字になりやすいため、業績の足を引っ張るような事業には手を出さないでおこうとなりがちだからである。

 「選択と集中」の直輸入は、メリットよりもデメリットのほうが大きいといえる。

(つづく)

【森村 和男】

(中)

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