公演ごとに拡大した福岡・九州ファン 期待膨らむ地域作品の製作
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2017年にアクロス福岡で開催したミュージカル「ブッダ」。終了後、主演俳優は言葉を失った子どもたちがいることに驚いた。ロビーで行われた俳優陣との記念撮影では、上気した外国人留学生が列をなした。19年の「北前ザンブリコ」では、高校生・大学生が興奮を発露。20年の「ジパング青春記」では、東日本大震災に慶長の大震災を重ねた観客から嗚咽(おえつ)が漏れた。
「ブッダ」公演の観客は約600人。「ジパング青春記」では1,100人に膨らんだ。わらび座が確実にファン層を獲得していることが示された。次回公演は求心力を確認する場になるはずだった。直近の「北斎マンガ」は今年6月に開催した。新型コロナの拡大周期でいえば第4波の終わり。ほかの公演がほとんど中止となるなか、データ・マックス主催公演は入場者数制限を余儀なくされた。
わらび座の強みは経済的に自立した集団であったこと。公演の収益だけに依存せず、劇場を中心に温泉・ホテル、地ビール工場を併設した飲食施設、農園や木工体験施設まで備えた総合リゾート「あきた芸術村」をつくり上げた。ただし、各事業は演劇をやり続けるための手段で、真のビジネス化はされていなかった。また、どの事業も人間同士の関わり合いを前提としたもので、いわば「3密」こそが強みの源泉だった。終わりの見えないコロナ禍の凶手には抗えなかった。
反省を基に新生「わらび座」は、多様な作品群など高質なサービス・商品の本格的な事業化に取り組む。もとより「北斎マンガ」の俳優陣からは異様な迫力が発せられていた。観客は「外部環境がどう変化しようとも存在し続ける」決意であると感じていた。4作品の公演を通じてわらび座も福岡・九州の観客、支援者への思いを醸成してきた。平坦な道ではないが、福岡・九州にゆかりの作品を披露することが再建への励みの1つとなっている。実現に向けてデータ・マックスでは今後も公演活動を継続していく。
【鹿島 譲二】
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