2022年08月15日( 月 )
by データ・マックス

次の時代の都市・空間に求められる「設計思考」というアプローチ

空間デザイン家
インテリアデザイナー/ディレクター
松岡 秀樹 氏

「屋」と「家」の違い

 皆さんは「政治屋」と「政治家」の違いをご存じでしょうか。次の選挙に勝てるかどうか、職業として政治を行うのが政治屋、一方将来の国のかたちを考え行動に移す人を政治家だと聞いたことがあります。

 建築業界でも「建築屋」/「建築家」だったり、「設計屋」/「設計家」の比較で呼ばれたりします。“家”が付く方の建築では、空間を創造するための一本の画線に魂を込めるし、建築物が人々の暮らしにどのような影響を与えるのかを考察し、都市の在り方を啓蒙したりしますが、“屋”の付く側の建築では、目の前の建物の建設工事に終始精進するだけだと揶揄して呼ばれたりします。

空間デザイン家 インテリアデザイナー/ディレクター 松岡 秀樹 氏
空間デザイン家
インテリアデザイナー/ディレクター
松岡 秀樹 氏

    私の仕事は、まだまだ学び続ける「空間デザイン家」といったところですが、“空間をつくる“とはかたちあるものをつくるようで実は似て非なるものだと考えています(大きな意味で「建築物」も“空間”と捉えています)。“空間デザイン”は特定の物体をつくるわけではなく、包括的な行為を補助する副次的なものです。“経験”をフィジカルにそしてメンタル的に支えるいわば「体験をデザイン」するものです。作者自身の趣向やアイデンティティーが成果物の隅々まで覆っていき、その思想がユーザーを支配していきます。

HowからWhyの時代へ

 義務教育の授業では、住宅の構造や機能、都市・建築に纏わる空間リテラシーについては学べませんでした。孤立した子ども部屋が心理的な疎外感を与えてしまうだとか、飲食店では照明の色温度や照度によってワインの飲む量をコントロールできるだとか、BGMのボリュームの大小でコミュニケーションの円滑さが変わる、といった空間認識術は教えてくれませんでした。こういうことは教育からではなく、生活から学び取っていく領域です。「人が環境をつくり、環境がまた人をつくる」という言葉にあるように、空間を扱う人間には一定のモラルと責任がともなうともいえます。空間リテラシーをすべての人が一定の見識をもって理解し、分別できるような社会であるべきだし、つくり手も使い手もお互いが抑止することも、共感することも積極的にあって欲しいと思います。

 医療の世界では最新医療を受けることが回復の近道だと考える人もいますが、必ずしもその人にとってそれが最適とは限りません。空間デザインも同じで、目の前のユーザーにとっての最適解は何なのか、(ユーザーが誰なのかを理解したうえで)クライアントの志向も汲み取りそれを追求していくことで少し社会貢献できるのではないかと思います。

 これまでの空間は「How」が重要視されてきました。これから脱炭素時代へ加速していくなかでは、何をつくるか=「What」と、なぜそれをつくるのか=「Why」のアプローチが重要だと考えます。それが今後必要になってくる「設計思考」というスキルではないかと思うのです。空間は場合によっては人目に晒される公的な共有資産です。だからこそ次の時代の都市・空間のあるべき姿を同時に考えられる構想家でありたいとも思っています。


<プロフィール>
松岡 秀樹
(まつおか ひでき)
1978年、山口県生まれ。大学の建築学科を卒業後、店舗設計・商品開発・ブランディングを通して商業デザインを学ぶ。大手内装設計施工会社で全国の商業施設の店舗デザインを手がけ、現在は住空間デザインを中心に福岡市で活動中。メインテーマは「教育」「デザイン」「ビジネス」。2021年12月には丹青社が主催する「次世代アイデアコンテスト2021」で最優秀賞を受賞した。

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