2024年04月20日( 土 )

【IR福岡誘致開発特別連載70】IR大阪の資金調達、資本構成が明らかに

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多数の国内メジャー企業と地元財界が資本参加

 いまだに組織組成ができない長崎、和歌山などと違って、10日付の「日刊建設工業新聞」の報道により、IR大阪のほぼすべてのエクイティ参加者(資本構成)が明らかになった。

 以前から、米MGMリゾーツ・インターナショナルとオリックスに加え、地元の関西電力や大阪ガスなど約20社の参加が報道されていた。今回明らかになった資本参加予定者は、近鉄グループホールディングス(HD)、京阪HD、サントリーHD、JTB、ダイキン工業、南海電気鉄道、NTT西日本、JR西日本、日本通運、パナソニック、丸一鋼管、三菱電気、レンゴーなどの地元勢である。

 これこそIRの開発運営事業母体(コンソーシアム)の組織組成である。総事業費1兆円超で、そのエクイティ(総資本)部分の約60%にあたる6,000億円を彼らが投資し、残りをプロジェクトファイナンス(借入金)とノンリコースローンで賄うことが公表された。

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 首都・東京に次ぐ大都市の大阪市を中心に、隣接する神戸市や京都市など後背地人口が豊かな関西大都市圏での誘致開発事業となる。従って、多数の国内メジャー企業と地元財界が資本参加し、資金調達ができるのは当然だが、言い換えれば、大規模な後背地人口を有する市場でなければ資金調達は不可能となる。

IR福岡、年間集客数500万人弱の現実的な計画

福岡 イメージ    年明けにIR福岡関係者に挨拶した際、近く公表されると思われる具体的な計画の一部を確認できた。IR福岡の場合もIR大阪と同様、国内市場が主体の集客計画である。集客計画は福岡市を中心とした大都市圏と、北九州市・久留米市・佐賀市・熊本市などの後背地人口から算出され、移動時間が1時間以内の約500万人に上る。

 このうち海外からの観光客誘致による集客計画は、全体の5%以内に抑えている。コロナ禍も十分に考慮した計画という。総事業費は5,000億円弱と巨額だが、十分な利益が出る。

 IR大阪やIR福岡のように国内市場が主体の基本計画でなければ、巨額な資金調達(総資本と借入金で賄う)は不可能である。

 これらと比較すると、IR長崎の年間集客数840万人は途方もない数値であることがわかる。IR和歌山は昨年10月に計画を大きく変更し、年間集客数を約400万人とし、そのうち国内観光客を約280万とした。しかし、長崎も和歌山も国内外の観光客頼みでは収支は安定せず、投資・融資する投資家も金融機関もない。

 IR誘致開発事業が可能な場所は、東京都中心の関東都市圏、大阪市中心の関西都市圏、福岡市中心の北部九州都市圏の3地域しかないと言える(名古屋市中心の中部都市圏は文化が異なる)。

【青木 義彦】

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