2024年03月29日( 金 )

日立製作所、日立建機の株式半数を売却へ~建機、伊藤忠の資本受け入れの狙いは?(前)

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 日立製作所は上場子会社の建設機械大手、日立建機の保有株の約半分を伊藤忠商事と国内投資ファンドの日本産業パートナーズに売却する。日立のITを軸としたグループ再編が最終段階を迎えた。

日立建機株の売却でグループ再編は終盤に

パワーショベル イメージ    (株)日立製作所は今月14日、連結子会社である日立建機(株)の株式の半分を売却すると発表した。保有する約51%の株式のうち、26%を伊藤忠商事(株)と国内投資ファンドの日本産業パートナーズ(株)(JIP)へ売却する。譲渡額は約1,824億円。6月の取引完了を目指す。

 日立は、伊藤忠とJIPが共同出資する予定の特別目的会社(SPC)へ日立建機を売却する。このSPCが日立建機株の26%を取得し、日立建機の筆頭株主となる。

 株式売却後の日立の議決権所有割合は25.4%となり、日立建機は日立の持ち分法適用会社となる。両社は引き続き、情報技術の研究開発やデジタル技術を活用した部品サービス事業で連携する。

 日立は2023年3月期の連結決算に事業再編等利益として約770億円を、個別決算に株式売却益1,500億円を計上する予定。

 10年以上続いてきた親子上場の解消作業が完了し、あらゆるモノがネットでつながる「IoT」を軸にした成長戦略に経営資源を集中させる。

東証の市場再編に備えて「親子上場」を解消

 (株)東京証券取引所は今年4月、現在の1部、2部、マザーズ、ジャスダックの4つの市場区分をプライム、スタンダード、グロースの3市場に再編する。

 最上位のプライムは、持ち合い株などを除いた流通株式の時価総額で100億円以上、流通株式比率35%以上といった従来の東証1部よりも厳しい上場基準を設定している。

 プライムへは1,841社が移行する。そのうち296社が経過措置の適用組だ。プライムの上場基準に適合しないため、いつまでにどのように基準をクリアするかの具体策を明らかにしなければならない。

 最難関は流通株式比率35%以上。5割以上を親会社が保有している上場子会社にとってハードルは高い。これらの企業にとって親子上場の解消は待ったなしだ。

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 日立製作所は、日立建機株の約51%(21年9月期末時点)を保有する。親会社と子会社の「親子上場」をめぐっては、子会社の少数株式が不利益を受ける恐れがあるとして、解消を求める声が市場にはあった。

 日立は建機株の半数を売却することで親子上場を解消、建機は流通株式比率35%以上の基準をクリアする。

外国人の社外取締役が反対した建機の売却

 日立建機は、日立が注力するあらゆるモノがネットにつながる独自のIoT基盤「ルマーダ」を活用した大型建機の自動運転システムを手がける。

 建機の株を手放すことをめぐっては日立社内で曲折があった。取締役会では、執行側が進めようとする建機の売却に対し、外国人の社外取締役らが再三反対の意向を示し、紛糾したと伝えられている。

 というのは、日立が成長エンジンと位置づけるITと建機のシナジーが大きいからだ。20年3月期にグループで売り上げたルマーダ関連の約1兆円のうち、約2割は建機によるものだ。

 取締役会の13人のメンバーのうち、執行を兼任しているのは東原敏昭社長兼CEO(当時、現・会長)と、中西宏明会長(当時、21年6月死去)のみ。大半を占める社外取締役の意向を無視できない。

 建機は日立本体との相乗効果が見込めることから、日立は一定の保有株を残し、協業関係を維持することで決着した。伊藤忠に売却しても、日立建機が「日立」ブランドの使用を続ける理由だ。

(つづく)

【森村 和男】

(中)

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