2024年04月16日( 火 )

JR九州による「駅舎無人化計画」(後)

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運輸評論家 堀内 重人 氏

 JR九州は、3月12日(土)のダイヤ改正から29の駅で駅舎の無人化を行い、48の駅で、きっぷの販売窓口(みどりの窓口)を廃止すると発表した。

代替サービスを充実

みどりの窓口 イメージ 「みどりの窓口」の廃止や営業時間の短縮にともない、切符の受取ルールが一部変更される。福岡市内・北九州市内の駅のうち、無人駅や一部時間帯に駅員が不在になる駅、またはインターネット予約の切符を受け取れない駅から乗車し、利用当日に最寄りの「みどりの窓口」がある駅まで列車を利用した場合、その運賃を切符の購入時に払い戻すことになるという。

 駅舎が無人化されるとサービスダウンになるが、利用者の不便を極力緩和させるため、サービス代替策も充実させるという。駅舎などが無人化されると、身障者などが困ることになってしまうが、無人駅や時間帯によって駅員が不在になる駅では、身体障害者を補助する介助スタッフが駅に出向いて乗降を手伝うようにするという。

 JR九州は、「当日でも基本的に対応させていただきます」としているが、「事前にご連絡いただけると、円滑にご案内できます」としているように、本音では事前連絡を求めているようだ。

 2月からは、香椎線で乗務員による乗降補助を試験的に開始するというが、ネット上で事前に介助を申し込める「WEB受付窓口」は、夏頃導入予定であることから、それまでの間に鉄道を利用する身障者には、不安が残ることになる。

 安全対策として駅のホームや改札口に録画カメラを導入する以外に、駅によってはカメラによる遠隔監視も行うという。しかし、カメラでは、昼間であっても光線の当たり具合や角度により、見づらい場合もある上、事件発生後の対応になってしまう。また防犯カメラだけで、治安を維持できるのかという問題や、掃除が実施されないため、駅舎などが汚れることも懸念される。

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 筆者は、「犯罪防止」だけが安全対策ではないと考える。JR九州は、列車接近警報装置を設置し、列車がホームに進入する際、放送と電光掲示などにより、列車接近の注意喚起を行うとしてはいる。だが夜間などは、酔っ払いによるホームへの転落事故などもあり、防犯カメラだけでは防げないため、ホームドアが必要となるが、それには設置費用や稼働コストがかかる。

地域のコミュニティとしても機能

 JR九州は今後、業務運営の効率化に向けた取り組みを進め、新たな技術を取り入れるなど、長期的な交通ネットワークの維持に取り組む考えであるが、駅舎の無人化を進める前に、嘱託や地域ボランティアなどを活用して、サービス水準の維持を目指してほしい。

 高校や大学の最寄り駅であり、かつ乗降客数が1,000人を超えるような駅であれば、駅員は生徒や学生に対する「コミュニケーション要員」でもある。取材で田舎へ行ったとき、ローカル線の駅員が高校生などに挨拶する光景をしばしば目にする。また地元の高齢者に対しても、同様に挨拶するなど、駅が地域のコミュニティとしても、機能している。生徒や学生は、通学定期で通学するため、無賃乗車の心配は少ないかもしれないが、なかには、昼間でも悪ふざけする生徒もいるため、駅員は教育者としても機能する。

 一方、1日当たりの乗降客数が数百人規模の駅であっても、その駅が幹線道路に面しているか否かで、状況が変わる。幹線道路に面した駅であれば、駅舎に食堂などのテナントを誘致することで、テナント料が得られるだけでなく、誘致した食堂などに乗車券類を販売してもらうと同時に、トイレなどの清掃を担ってもらうことで、駅舎を維持することが可能となる。

 JR九州は、2021年度の鉄道旅客運輸収入は、同社が発足して以来、最低であった2020年度に次ぐ低水準になることを予想している。確かに、以前のような水準には戻らないかもしれないが、ローカル線であれば駅員がいることで、企画旅行を販売するチャンスなどが生まれることも事実である。駅員を「コスト」として考えるのではなく、「人財」や「営業要員」だという考えのもと、駅員を活用した販売力強化戦略と、テナント誘致による無人駅解消といった施策も、打ち出してほしいと思う。

(了)

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