JR九州による「駅舎無人化計画」(前)
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運輸評論家 堀内 重人 氏
JR九州は、3月12日(土)のダイヤ改正から29の駅で駅舎の無人化を行い、48の駅で、きっぷの販売窓口(みどりの窓口)を廃止すると発表した。
自然災害で多くの路線が被災
JR九州による今回の発表を聞くと、「山間部などにある利用者が少ない駅のため、経営合理化を図るのだな」と思われるかもしれないが、JR九州が公表している2020年度の駅別乗車人員によると、3月に無人化される駅は、1日当たりの乗車人員が数百人程度の駅が多い。
なかには、豊肥本線・東海学園前駅の1,212人や篠栗線・門松駅の1,132人、日豊本線・南行橋駅の1,122人、鹿児島本線・崇城大学前駅の1,021人のように、コロナ禍でも乗車人員が1,000人を超えている駅があり、旅客サービス上だけでなく、乗降時の安全性などの面でも懸念されている。また駅舎が無人化されると、無賃乗車が横行すること以外に、暴走族などの「たまり場」になるなど、治安の悪化も懸念されるところである。
少子高齢化の影響で、日本の人口は2008年をピークに減少に転じ、労働人口の減少など、今後、鉄道利用者が増える見込みは少ない。それもあってJR九州の鉄道事業は赤字を計上しているが、不動産事業におけるマンション分譲などが好調で、鉄道事業の損失を補填している。
そんな中、昨今では集中豪雨の影響で、日田彦山線、久大本線や肥薩線が被災してしまった。久大本線は無事に復旧したが、日田彦山線の添田~夜明間は、鉄道での復旧をあきらめ、線路敷きをバス専用道としたBRT(Bus Rapid Transit)として、整備する道を選んだ。
JR九州の青柳社長は、肥薩線について、2022年1月末までに復旧に要する費用の見積もりを公表するといった旨の発言をしているものの、一部区間において新線に切り替えなければならないぐらい甚大な被害が発生したことに加え、そのような地区では集落も高台へ移転させる方向にあることから、JR九州は肥薩線の復旧に対して、前向きではない。
筆者は、そのような状況に危機感をもったため、NetIBNews「肥薩線復旧に向けた現状と課題~肥薩線を高速新線として再生する(後)」で、国(鉄道建設・運輸施設整備支援機構)が、八代~人吉~吉松間に単線の高速新線を建設して、最高速度200km/h運転の高速列車を運行することを提案した。
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肥薩線復旧に向けた現状と課題~肥薩線を高速新線として再生する(後)人口減少社会の到来や少子高齢化とモータリゼーションの進展、中心市街地の空洞化という鉄道事業者にとっての逆風が吹いている。また、ここ10年の間に自然災害が多発して被災した線区が数多くあり、2016年4月の熊本地震で被災した豊肥本線の全線復旧には4年半近くかかっている。
コロナ禍が追い打ち
もともと九州は、台風の上陸などが多く、被災しやすい環境にあるが、そこへ新型コロナウイルス感染症の影響が加わり、「泣きっ面に蜂」のような状況にある。
新型コロナウイルス感染症の発生により、政府による緊急事態宣言などが発令されたことで、国民が外出を自粛するようになった。旅行の中止だけでなく、テレワークの普及や大学や各種学校によるZoomを用いた遠隔授業の導入もあり、鉄道利用が減り、旅客運輸収入が減少してしまった。コロナが終息したとしても、以前のような水準には戻らないことが予想され、JR九州も経営体制を見直さざるを得なくなっている。
駅舎の無人化や「みどりの窓口」の廃止が行われない駅でも、「みどりの窓口」の営業時間が短縮されるという。県庁所在地駅などの主要駅は午前7時~午後9時に、福北都市圏の駅や新幹線、特急列車が停車する一部の駅などは、午前7時30分~午後7時になる。それ以外の駅は、利用状況などを勘案して午前7時30分~午後3時や午前7時30分~正午など、実質的には「みどりの窓口」が廃止に近い状態になる駅もあるという。
「みどりの窓口」の廃止や影響時間の短縮に関しては、特急券・乗車券類のインターネット予約の普及、非接触式乗車券の普及なども影響している。山陽新幹線利用者の46%はインターネット予約である。また近畿圏では、利用者の84%が非接触式の乗車券類で乗車しているという。
(つづく)
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