2024年05月02日( 木 )

【JA福岡中央会】農業×SDGsで支える持続可能な暮らし、担い手育成で地域産業の中核へ

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コロナ禍でも盛況維持、JAの直売所

 ──新規就農者に人気が高いのは、やはりイチゴなのでしょうか。

 乗富 福岡では、県や大手広告代理店との官民連携や異業種コラボの成果も
あり、イチゴの「博多あまおう」やイチジクの「博多とよみつひめ」などが全国的なブランドとして確立されています。お米も「元気つくし」や「夢つくし」などの県産米ブランドがあるのですが、人気が高いのはイチゴなどです。

 集中豪雨をはじめ、毎年自然災害に見舞われるなか、お米や麦、大豆などの農産物をつくるのは高リスクになってきています。そのため、新規就農者数は多くはなく、建設業者などによる異業種参入が散見される程度です。

 イチゴでもお米でも、大切なのは稼げる農業への道筋を示すことだと考えています。農業と地域社会は、切り離せません。地元で採れたものを、地元の人たちでいただき、健康な毎日を過ごす。地産地消を徹底するだけでも、農業を取り巻く現状は変えられると思います。

 ──稼げるという点でいえば、JAの直売所はコロナ禍でも好調でした。

 乗富 県内JAには42の農産物直売所があり、新鮮な県内農産物を県民の皆さまに提供しています。SNSを活用した対外的な情報発信にも力を入れており、これが直売所への動線の役割をはたしてくれたのかなと思います。また、JAでも独自に市場調査を行っており、消費者や実需者(バイヤーなど)のニーズに合わせて荷姿包装で取引するなど、販売戦略を柔軟に変えています。2020年度の直売所売上高は約147億円(前年比106.4%)で、農畜産物のブランド化とマーケットインの考え方が相乗効果を発揮できているのだと考えています。

 この好調を維持するためにも、やはり人手の確保が重要で、JAとしても親元就農(※2)以外の新規参入を促していかなければなりません。先ほどのトレーニングファームは、県内5JA(糸島、筑前あさくら、にじ、ふくおか八女、みなみ筑後)やJA全農ふくれんが行っていますが、ほかにも、新規就農者の確保や育成に向けて、すべてのJAがさまざまな取り組みを行っています。

※2 親元就農:実家が農家で、親または家族が行っている経営に入る。将来的には次期経営者としての役割を担う。 ^

JA糸島の産直市場「伊都菜彩」には年間130万人の客が訪れる
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将来を見据えた県域オールJA構想

 ──JA福岡中央会では、「県域オールJA」構想を掲げています。

 乗富 県域オールJA構想は、県内の20JAを集約することで、スケールメリットを生かした価格交渉力の強化、取り扱う品目数や数量をまとめることによる農業者の所得増加や生産コストの削減、管理部門統合による業務の効率化などを目指すものです。

 当初は22年4月の実現を目指していましたが、幾度となく会合を実施し、組合員の皆さんの声を直接聴いて回るなかで、時期尚早と判断し、最終的に30年をメドに実現する方針となりました。このことは、21年11月に開かれたJA県大会で決議された、22~24年度の中期方針に盛り込まれています。

 少子高齢化にともなう人口減少のなかで、組合員の皆さんの負担を軽減し、利便性を高めるためにも、いずれは向き合わなければならない課題だと思います。

 ──人口減少が避けられないなか、組織の在り方も状況に応じて最適なものに変えていく必要があります。

 乗富 県内20JA体制というのも、今までは、それが最も効率的な在り方だったのだと思います。近いところでいえば、JA山口県、JA沖縄県は1県1JAとなり、九州の複数県で集約が進められています。現在、そして将来における社会構造や経営状況の変化とその影響を、どのぐらい実感しているのかで考え方も変わるのだと思います。

 福岡県には政令指定都市が2つあり、都市でありながら農業も盛んという、全国的に見ても稀有な県です。農産物の消費量も相応に多いため、市場としては恵まれていると思います。しかし、この状態がいつまでも続くわけではありません。

 次世代を担う青年部(若い農業者)や、女性の声も取り入れながら、新しい組織を構築していければと考えています。

福岡県JA組合員数 (2021年3月31日現在)
福岡県JA組合員数 (2021年3月31日現在)

【代 源太朗】


<プロフィール>
乗富  幸雄
(のりとみ・ゆきお)
1951年生まれ。福岡県みやま市出身。2014年6月、JAみなみ筑後代表理事組合長に就任。20年6月にはJA福岡中央会代表理事会長に就任し、JA全農経営管理委員会副会長、JA全農ふくれん運営委員会会長も務める。

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