2024年05月06日( 月 )

【糸島市】情報公開に改善求める声 言行不一致の黒塗り非開示

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県と市の公開情報量に大きな開き

 糸島市の情報公開に対して、市民や事業者から改善を求める声が挙がっている。市は情報公開に関する規定として、「糸島市情報公開条例」を定め、これに則って情報の開示・非開示を決定している。

 情報公開条例の内容は自治体ごとに異なってはいるものの、非開示は国民の知る権利を侵害する恐れがあるため、近年では原則開示する自治体が一般的だ。もっとも、個人が特定されるようなものや公開することで法人や個人の事業活動に不利益になると認められるものは部分的にマスキング(黒塗り)されることはある。

 糸島市は、条例に従って情報公開制度を適切に運用しているとするが、それでも情報公開の在り方に対して改善を求める声が挙がるのは、市の言行不一致によるところが大きい。

 たとえば、建設業者Aが市の発注工事に対して、予定価格の積算根拠について担当者に質問したところ「(福岡)県に準じております」との回答を得たという。そこで、A社は県と市に対して情報公開請求を実施した。ところが、県と市が公開した情報量には大きな開きがあったため、市の積算根拠について詳細を知ることができなかった。県は開示しているが、市は非開示としている箇所が複数確認されたためだ。たとえば、県(県警)と市の発注した新築工事で比較してみると、糸島市側は部分的に黒塗り非開示となっている。

開示情報の一部を抜粋 左:城南警察署新築工事 / 右:糸島市新庁舎建設工事
開示情報の一部を抜粋
左:城南警察署新築工事 / 右:糸島市新庁舎建設工事

恣意的黒塗りの可能性も

 市が黒塗り非開示としているのは、見積もりによって決定された価格。県に準ずるという市の言い分が正しいのなら隠す必要はなかったはずで、情報公開の在り方に対して改善を求める声が挙がっているのは、こうした現実とのギャップがあるからにほかならない。さらに、このギャップこそ、市の積算根拠に対する疑念を招く原因にもなっている。

 建設業者からは、「設計事務所から得た見積もり額から市の担当課が歩切りしている」「見積もりを3パターンとり、最も安値のものを採用している。そしてそこからさらに歩切りしている」という声が聞かれた。これが本当であれば、市が見積もり部分だけ黒塗り非開示としていることに対して恣意的な黒塗りではないかという疑念も沸く。同様の工事で県と比較された場合に、部材などの見積もり額に大きな差が出るであろうことは想像に難くないからだ。

 適正な価格で工事を行うことは手抜き工事を防ぐことにもつながり、ひいては安全な建築物を担保することにもつながる。あるべき公共工事の姿を議論するためにも、糸島市は議論の土台となる情報を広く開示すべきではないだろうか。

【代 源太朗】

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