2022年06月30日( 木 )
by データ・マックス

【読者投稿】コロナ禍でマスク着用の是非を問う 弁護士への懲戒請求事案(前)

 NetIB-Newsでは、読者のご意見を積極的に紹介し、議論の場を提供していきたい。
 今回は、ある勉強会でのマスク着用トラブルから弁護士への懲戒請求に至った事案についての読者からの投稿を紹介する。

 2021年 (令和3年) 4月2日に開催された会員制勉強会において参加者へのマスク着用を案内した際に生じたトラブルにより、主宰者側が対象の弁護士に対し懲戒請求の訴えを起こした事案を紹介する。

◎懲戒請求事案の原告側 (当時)
懲戒請求者 (株)西日本新聞社営業本部 取締役営業本部長 伊藤 陽 氏

◎懲戒請求事案の被告側 (当時)
対象弁護士 萬年総合法律事務所 萬年浩雄 氏

事案の概要

不織布マスク イメージ    本件は懲戒請求申請者主宰の会員制勉強会に参加した懲戒対象弁護士が、開催会場の受付で、同勉強会事務局のスタッフからマスクの着用を求められた際、「マスクはもっていない」と答えたため、受付スタッフが「こちらを使っていただけますか」と主宰者側で準備していたマスクを渡そうとしたところ、対象弁護士から、その手を強く振り払われたことで、このスタッフは、とても怖くなり、それ以上の案内ができなくなった。

 対象弁護士は、マスク未着用のまま勉強会会場へ入室し、着席したため、次に、この勉強会の事務局長が対象弁護士の席へ向かい、再度マスクの着用をお願いしたところ「うるさい、何で俺がマスクをしなきゃならないんだ。そんなことを誰が決めたか言ってみろ」と大声で恫喝するような言動をした。

 そこで開催会場であるホテルの社長と相談し、他の参加者から離れた席で受講させる方法が最善と考え、対象の弁護士に協力を促して「ほかのお客さまのご迷惑になりますので後方の席に移動していただけないでしょうか」と丁寧な案内をした。

 しかし、対象弁護士は「やかましい。こんな失礼な会は辞めてやる」と大声を出し、机上の配布物を事務局長に投げ付け、名札も投げ捨てて自ら会場を去った。

 当日、会員制勉強会に参加したほかの弁護士からは、当日のアンケート用紙に「勉強会主宰者側スタッフからの再三にわたるマスク着用の要請を無視して、果ては女性スタッフに怒鳴り声を浴びせかける言動をしていた、この人は弁護士であるが、とても信じがたい光景であった。こういう人は退会させた方がよいので、主宰者側の毅然とした対応を期待したい」と記載するなど、この対象弁護士の言動が参加者の間で波紋を呼んでいた。以上が本件事案の概要である。

原告側が懲戒請求に至った経緯

 この騒動の後、対象弁護士から本会を退会する旨を記した脱会届が送られてきた。

 事務局としては脱会届を受理するものの、当日、受付で対象弁護士の対応をした女性派遣スタッフが、とても心を痛めていることを考えると、当日の言動について謝罪の気持ちを示すような文書を提出していただきたいという旨の、お願いの文書を事務局から対象弁護士へ郵送した。その後も再三にわたり謝罪を求めたが「絶対に謝らない」との回答のみであった。

 「事務局が求めているのは謝罪であり懲戒処分を目的とするものではない」と伝えても結果は同じであった。

 これにより対象弁護士の行為は、弁護士法第56条(懲戒事由及び懲戒権者)に定める「弁護士および弁護士法人は、この法律又は所属弁護士会若しくは日本弁護士連合会の会則に違反し、所属弁護士会の秩序又は信用を害し、その他職務の内外を問わず、その品位を失うべき非行があったときは、懲戒を受ける」に該当するとして、同第58条(懲戒の請求、調査及び審査)に基づき、貴弁護士会に勉強会主宰者が懲戒請求をするに至った。

被告側の主張と弁解の要旨

 本職の言動による懲戒請求事由の概略については対象弁護士自身が認めている。

 しかし、コロナウイルス感染拡大防止のためならば、一般国民は無条件にマスクを着用する義務があると思っているのか。申立人は「自由」と「法の支配」を何と考えているのだろうか。法の支配から言って、マスク着用は法律で強制されない限り、マスクを着用する義務はないはずである。マスク着用は「法的義務」ではなく「要請」であるにも関わらず、それを国民一般に強制する、あるいは、それを着用しないことを批判する風潮に強い危機感を抱いている。

 対象弁護士は普段から事務所や裁判所など内外で一切マスクを着用しない主義を貫いているという。弁護士法第1条に弁護士の基本的な義務は「基本的人権の尊重と社会正義の実現」と謳っている。この基本的義務を実行しないのは弁護士の存在意義を喪失すると考えている対象弁護士は、「申立人がマスク着用を強要してきたため、当日の私は非常に立腹した。さらに私宛に『文書で謝罪しなければ弁護士会に懲戒請求する』と、脅しとも受け取れる内容の文章が書かれた郵便物が届いた」と語り、「これが西日本新聞社の品格であるのか。こんな文書を送り付けて来る西日本新聞社を軽蔑し、このような相手に謝罪文を書く意思はなくなった」と弁解し主張している。

(つづく)

(後)

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