2024年05月20日( 月 )

日本占領を招く日銀の円安誘導

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 NetIB-Newsでは、政治経済学者の植草一秀氏のブログ記事から一部を抜粋して紹介する。今回は人為的な低金利政策、ドル安誘導政策に正当性はないと訴えた5月1日付の記事を紹介する。

円安進行に歯止めがかからない。

理由は単純明快。

日銀が円安誘導政策を実行しているからだ。

円安が進行する最大の理由は内外金融政策の非対称性にある。

米国が金融引締め政策を推進するなかで日本銀行が頑なに金融緩和政策を維持している。

長期金利は本来、金融市場が決定するものだが、この長期金利を日本銀行が人為的に定めようとしている。

「人為的低金利政策」が長期金利決定において遂行されている。

日銀の政策決定は「安心して円売り投機を行ってください」というものになっている。

この政策誘導によって円売りが殺到。

順当に円安が進行している。

ドル円レートは20年ぶりに1ドル=131円台に突入した。

実質実効レートでは50年ぶりの円安水準である。

円安で利益を得るのは輸出企業。

消費者は輸入製品が値上がりして損失を蒙る。

円安の理由は「人為的低金利政策」。

「人為的低金利政策」で利益を得るのは債務者。

預金を保有する一般庶民は「人為的低金利政策」で損失を蒙る。

つまり、円安誘導政策は輸入品を購入し、預金を保有する一般庶民から所得をむしり取り、これを、債務を抱える輸出企業に補助金として投下することを意味する。

円安誘導政策を実施する正当性が存在しない。

円安誘導政策には、もう1つ重大な問題がある。

それは日本の実物資産所有権を外国資本に移転することを促進することだ。

「経済的安全保障」が論議されているが、最大の「経済的安全保障」の問題が外国資本による日本資産の買い占めだ。

1986年から1989年にかけて円高が進行した。

日本では円高の下で金利が低下し、資産価格が急騰した。

巨大な資金力を保有した日本の投資家が米国市場に殴り込みをかけた。

米国の主要な資産が日本資本によって買い占められた。

ニューヨーク・マンハッタンの巨大ビルディング、米国の映画会社、米国を代表するゴルフコースや名門ホテルの所有権が日本に移転した。

ドル安が日本資本による米国買い占めのリスクを顕在化させた。

1988年の米大統領選でブッシュ父大統領候補が掲げたスローガンが

「ストロングダラー・ストロングアメリカ」

だった。

ドル下落は米国弱体化の象徴。

強いアメリカを取り戻すには強いドルを回復させなければならない。

大統領選を契機に円安が始動した。

ドル円は1ドル=120円から1ドル=160円に変化し、これに連動して日本のバブルが崩壊。

日本凋落がスタートしたのがこのときだった。

超円安の進行によって外国資本による日本資産買い占めが進行している。

これが最大の「経済的安全保障」問題なのだ。

日銀の黒田東彦総裁は2013年の就任以来、一貫して超金融緩和政策=円安誘導政策を実行してきた。

これがアベノミクス核心を構成していた。

しかし、アベノミクスは失敗した。

日本経済は超低迷を続け、格差拡大だけが加速した。

挙げ句の果てに外国資本による日本資産買い占めの危機を招いている。

黒田日銀の「人為的低金利政策」により円安進行に拍車がかかる。

最終的に長期金利の人的抑制政策は破綻する。

長期金利が跳ね上がり、金融市場に大きな混乱がもたらされるだろう。

黒田東彦氏は金融市場に強制されるかたちで政策変更を迫られることになる。

間違った政策運営に固執すればするほど、最後に受ける傷は大きくなる。

速やかな政策転換が求められている。

実は日銀が政策を転換して長期金利の上昇を容認しても、日本株価暴落は長期化しない可能性が高い。

なぜなら、日本円の方向が転換するなら、外国資本が一斉に日本資産買いに転じるからだ。

円安放置と日本からの資本流出は日本資産価格を大バーゲンセールの状況に移行させている。

この日本円のトレンドが下落から上昇に転じるなら、巨大な資金移動が発生して外国資本が日本資産取得になだれ込む。

長期金利上昇で株価下落などが生じるにしても一時的な現象にとどまる可能性が高い。

長期金利上昇は政府の利払い費負担を上昇させるが、同時に預金者の金利所得を増大させる。

これまで、預金者は「人為的低金利政策」によって膨大な金利所得を奪われてきた。

その奪われた所得は債務者の金利負担軽減として、債務者に対する補助金として作用してきた。

超金融緩和政策によるインフレ誘導も企業部門に利益を与えるもので、家計部門には負の影響しかないものだった。

※続きは5月1日のメルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」「日本占領を招く日銀の円安誘導」で。


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