2022年06月26日( 日 )
by データ・マックス

【検証】山口FG取締役会議事録(5)

吉村氏の山口FGへの想い

山口フィナンシャルグループ    NetIB-Newsでは、吉村前会長のスキャンダルを指摘してきたが、この日の取締役会では理路整然と議論を展開しており立派なものである。しかも、代表取締役会長を解任された直後にも関わらず、山口FGへの想いを感じる発言もあった。

 P26には過去に起こった山口銀行でのクーデターについての言及がある。

「ちょっと正直申し上げてですね、ええと、これ多数決の暴力だと思います。
理由もなくおっしゃるっていうのは、これはもう田原頭取の時に、行われた多数決で、前は解任ですけど、今回はさせないということで、そういう権限があるからそれはしょうがないんだよねっていうふうにやれらるんでしょうけれども、これはでも残念ながらですね、将来の銀行にこの前のように、ずっと影響を与えるもんだと思います。

 やっぱりここでですね、結局、溝を作って、敵味方を多分、おそらく作られる形になると思います。

 収まったものが、また私はこれ理由なしに、させられたっていうふうに申し上げることになると思うので、そういう意味では、結局また同じ事を、亀裂をしたまま、になるのは、あまりよろしいことではない気がするし、これ、私の問題だけで済むのならいいけれども、椋梨君にもかなりインパクトがあるような話になろうかと思います。」

 この日の取締役会で20年近くも前のクーデターについて触れられていたとは思わなかった。田原頭取とは、昨年12月に亡くなられた田原鐵之助氏のことである。この取締役会のときにはご存命であった。田原氏もクーデターにより失脚し、山口銀行は今に至るまで暗い影を背負うこととなった。吉村氏は将来の山口FGにも影響があると警告したのである。そして、この日以後に起こる粛清人事を危惧したかのような言及もある。事実、多くの社員・行員が理不尽な異動や降格、退職の憂き目に合うこととなる。吉村氏の頭をよぎった心配は現実のものとなったのである。

 P58では、ジョブ型人事制度に関する議論のなかで次のような発言がある。

「さっきの保険ひろばの話もあるから、やっぱりその何というか、やっぱ外の価格とかもよく見ないと、結局銀行員の給与体系で振っていくっていうことになると、何をしたかよくわかんなくなるので、そこだけは本当保険ひろばの仕事の価値と、銀行のリテーラーの価値がどうなんですかみたいなところもよく見てあげて、僕はちょっと保険ひろばの給料も今大変だけど、銀行のリテーラーに比べたらやすいと思うんだよね。安すぎると思うんですよ。だから、リテーラーが高いのか、保険ひろばが安いのかよくわかんないけど、ちょっとその辺りもよくバランスがとれるように、せっかくのチャンスなんで、見ていただければいいんじゃないかと思います。」

 保険ひろばの従業員の給与が少ないとの認識からの発言である。解任された直後にもかかわらず、従業員の給料に配慮した内容に驚いた。しかも、銀行員ではなく買収した会社の給与についての発言である。吉村氏の「脱銀行」への想いを垣間見た気がする。この発言からは、吉村氏は銀行以外のビジネスを真剣に考えていたことが推測される。

 吉村氏は、かねてから銀行員が給与に見合うだけの仕事をしているのか、適正な市場価値へと是正していくべきではないのかという疑問をもっていたという。それは、銀行が銀行以外の業務を行っていくなかで、直面せざるを得ない問題でもある。銀行が銀行員の高い給与のままで銀行以外のビジネスを行っても競争力はないからだ。「脱銀行」を進めた吉村氏はそのことを痛いほど感じていたはずだ。

 クーデター後の山口FGは3名の銀行頭取を取締役に加えるなど、銀行主体の体制に後退している。時代錯誤の守旧派に権力が戻ってしまった結果なのだろう。今の山口FG経営陣には「脱銀行」を進めた吉村氏ほどの危機意識はなく、昔の銀行の栄光を懐かしんでいるようにも感じられる。

 吉村氏には多くの問題があり、部下を厳しく叱責するパワハラのような行為もあった。愛人問題が指摘され、その女性が人事を私物化していたという疑念もある。しかし、山口FGの将来を心配する気持ちはあったのであろう。その思いが空回りし、山口FGを違う方向に進めてしまったことは残念である。では、吉村氏の退任後に山口FGが健全化されたというと、そうではないようだ。いまだに多くの社員・行員が会社を去っており、吉村氏の在任中よりも事態は悪化しているとの声も聞こえてくる。

現在の山口FGの体制

 クーデターを主導したのは3人の取締役監査等委員である。大所高所に立つべき立場の監査等委員や監査役が積極的に体制転換を図るというだけでも異常である。現在の山口FGの筆頭執行役員は専務執行役員・監査部長・田辺修司氏であり、社長・椋梨氏に次ぐポジションである。監査部長がNo.2というのも驚きだが、クーデターを主導した福田氏の元部下であるという。監査部は内部監査を行い、各部署の不備を指摘する権限を有している。どこで監視されているか分からず、まるで恐怖政治のようだ。

 それに次ぐ常務執行役員は矢儀一仁氏(地域事業共創本部長)と平中啓文氏(金融事業本部長)である。異例の昇格をはたしている平中氏は福田氏の母校(県立山口高校)の後輩であり、かねてから親密である。クーデター発生時には北九州銀行の福岡支店長を務めており、重要な役割をはたしたとの噂があるという。クーデター直後に山口FG執行役員に復帰し、すぐに常務執行役員へと昇格した。着々と椋梨氏の院政体制が構築されつつあるのではないだろうか。

 NetIB-Newsには多くの内部告発が寄せられ、ワイエムライフプランニングでは日常的にパワハラが行われていたことを何度か記事にしているが、パワハラをもみ消した当時の社長は北九州市・折尾地区で何事もなかったかのように銀行支店長を務めているという。これは一例でしかなく、責任を問われるべき人物が責任を問われず、罪のない被害者が退職に追い込まれるような組織風土の刷新が行われることはなさそうだ。

 銀行が輝いていた古き良き時代を懐かしみ、社内・行内に恐怖政治を敷くような非民主的な組織に未来はあるまい。社内・社外とも取締役を一新し、管理職を入れ替え、外部からの人材を招聘することでしか山口FGの再生はなさそうだ。地域銀行は一部の取締役だけのものではなく、株主のものであり、そこで働く従業員のものであり、地域社会のものである。会社を預かっているに過ぎない取締役が横暴を重ねることは許されない。銀行を取り巻く厳しい環境を考えると、現在の取締役では山口FGの舵取りは不可能である。現在の取締役は潔く辞任するか、そうしないようであれば株主は退任を求めるべきだ。無能な役員を一掃しなければ、山口FGの生き残る道は見えてこない。

臨時取締役会議事録稿本

(了)

【特別取材班】

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