2024年04月27日( 土 )

麻生が大豊建設を買収 ゼネコン再編に参戦(後)

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 御曹司は投資が大好きだ。ターゲットは東洋建設と大豊建設。前者には、任天堂の創業家が買収に名乗り上げ、後者は九州の名門企業グループ・麻生が買収した。一見、無関係に見える2つのM&Aには共通するキーワードがある。旧村上ファンドだ。

麻生の次のターゲットは若築建設

海洋土木 イメージ    18年には基礎工事など特殊土木大手、(株)日特建設をTOBで子会社化した。麻生グループ傘下の(株)エーエヌホールディングスが57.92%を保有する(22年3月末時点)。麻生巌氏は日特建設の取締役だ。

 株式を上場している建設会社を傘下にもつのは、大豊建設が2社目だ。

 麻生が次のターゲットにしているのが、北九州市に本店を置く、海洋土木大手の若築建設(株)(東証プライム上場)。麻生は21年3月期に3.78%を保有していたが、21年9月末に一気に買い増して17.67%の筆頭株主に躍り出た。22年3月末には持ち株比率を20.00%にまで高めた。持ち分法適用会社に組み入れることができる。

 若築建設は1890年(明治23年)、海上の要衝である洞海湾(現・北九州市若松港)および周辺の運河を改良し、筑豊炭田から採掘された石炭の積出港として開発・運営することを目的に創立された。筑豊炭田で財を成した麻生家とは縁が深い。

 若築建設は洋上風力発電に関わる。九州電力(株)グループや電源開発(株)などが出資するひびきウインドエナジー(株)(北九州市若松区)は、北九州市沖の響灘で着工する洋上風力発電事業の25年度の運転開始を目指す。輸送船が発着する港は若築建設と五洋建設(株)のJV(共同企業体)が担う。

 麻生が若築建設を傘下に収めれば、22年3月期の売上高は日特建設(660億円)、大豊建設(1,565億円)、若築建設(891億円)と合算して3,116億円となり、準大手1社分に匹敵する。準大手建設会社、麻生グループの誕生だ。

西松建設は伊藤忠と資本提携

 麻生が建設株の買収に動いたのは、旧村上ファンド系が動きを活発化させている業界の1つだからだ。建設業界は東日本大震災の復興や東京五輪に絡んだ需要で建設投資は60兆円台になったが、そろそろピークアウトするとの見方が台頭。生き残りを賭けたM&Aに発展した。

 旧村上ファンドはシティインデックスイレブンスなどの名義で、20年春に準大手ゼネコン西松建設(株)の大量保有報告書を出して以降、21年に入ってから急速に保有比率を積み増し、一時最大で約25%を保有。21年5月、西松建設に本社の入る虎ノ門ヒルズなどの保有不動産を売却したうえで、連結純資産とほぼ同額の最大2,000億円もの自社株買いを要求した。

 21年9月にシティ側が全保有株についてTOBに応じる契約を西松建設と締結。シティ以外からの応募が西松建設の当初想定を超えたことで、最終的に議決権ベースで10%の株式が村上氏側に残った。これを伊藤忠商事(株)が買い取った。最終的に伊藤忠商事がホワイトナイトとして登場し、西松建設の筆頭株主になった。

 シティインデックスは、他に、三井住友建設(株)を6.25%、東亜建設工業(株)を9.35%保有している。

 村上ファンド系は、業界再編を促して企業価値を高め、株価上昇を狙って売り抜けるという手法だ。ゼネコン業界に対する投資で、村上ファンド系は、西松建設は伊藤忠、東洋建設(株)は任天堂の創業家を呼び込み、大豊建設は麻生に売却して三連勝だ。

 麻生の投資は、村上ファンド系を後追いしている点に特徴がある。アクティビストの攻撃を防ぐ防波堤の役割をはたすことで企業を傘下に収める。

 大豊建設は典型的な例だ。村上ファンド系は「ボロ儲け」する。シティインデックスなど村上ファンド系の大豊建設株の取得費用は243億円、売却が370億円で、売却益が127億円程度になると試算されている。投資家としては、百戦錬磨の村上ファンド系が麻生グループより数段上手だ。

(了)

【森村 和男】

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