2024年05月09日( 木 )

中国の大学「卒業」=「失業」?

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

中国 大学 イメージ    6月7日から8日にかけて、中国全土で全国統一大学入試(高考)が行われた。中国教育部の発表によると、2022年の全国統一大学入試の受験者数は1,193万人で、昨年より115万人多く、過去最多であった。中国の大学入試は「一度の試験が人生を決定する」とされ、日本のような大学二次試験はなく、中国の高校生にとっては、この数日間が人生のなかで最も重要な時期だ。

 中国政府は中学卒業時から学生に対して「人生の分岐」を行っており、中学卒業者のうち普通高校に入学できるのは5割程度で、残りは中等専門学校、職業高校などに入り、ブルーカラー労働者になるための訓練を受ける。従って、多くの中国の幼い子どもたちにとって、高校に入ることは人生最初の関門であり、この関門によって「ブルーカラー労働者」になるか「大学生」になるかが決まるのだ。

 人生における第二の関門は、大学入試だ。中国教育部のデータによると、2021年に全国の大学に入学した学生は1001.32万人で、全国大学入試の合格率は全体で92.89%だったが、通常の4年制大学への入学者はそのうちの41%に過ぎず、大半は短期大学などの「専門学校」に進学した。つまり、大学に入学できたとしても、4年制大学に通えるのは10人中4人で、残りは短大で2~3年学んで卒業することになる。

中高生に対して行う「人生の岐路」

 中国の学生にとって、政府によるこの強制的な分岐制度は非常に不公平であり、半数の子どもたちから大学へ行く権利を奪っている。しかし、14億人の大国に対して、すべての学生が大学進学を希望すると、大学が足りなくなるばかりか、一人っ子の若者は大学を卒業しても技術労働者として働こうとしないため、かえって中国の製造現場には技能型ブルーカラー労働者が不足し、中国の製造業の発展を妨げ、本当の製造大国になることが難しいというジレンマが発生している。

 識字率の低い出稼ぎ労働者に頼っていては、中国製造業の水準を上げることはできない。 そのため、中国政府は技能型ブルーカラー労働者の育成に力を注いでおり、「中高生の半分に技術を学ばせる」というのが、中国の新しい国策だ。

 2022年、新型コロナウイルスの影響は中国経済に大きな打撃を与え、多くの中小企業が倒産し、大企業は従業員の解雇を始め、中国の若者の失業率は18%に上り、今も上昇を続けている。

 中国政府にとって、2022年に直面するもう1つの大きな課題である、全国の大学卒業生1,076万人が6月に卒業する。しかし、中国人力資源保障部の統計によると、4月17日までの全国における大卒者内定率は23.61%に過ぎず、卒業生の4分の1(822万人)が就職浪人になってしまう。そして、中国政府が就職問題解決のために取り組むべきは、この1,076万人の大卒者だけではなく、実際、中等専門学校と高等専門学校の卒業生合わせて2,000万人近くにのぼる。

広東省、学生起業家に20万円を支給

 広東省政府は5月31日、大学生の起業を支援する措置を発表した。 毎年、技術革新を目指す1000以上の研究グループに資金援助をするもので、大学生を対象に、全国級のイノベーションや起業訓練案件に選ばれたものには1件あたり平均2万元を、同じく起業の実践関連の案件には10万元を支給する。条件を満たした学生起業家は、1万元(約20万円)の一時金と、年間4000~6000元、最長で3年分の賃借料補助金を申請することができる。また、省の人力資源社会保障部門により優秀案件に選ばれたものについては、5~20万元(約100~396万円)を支給するという。

 さらに、起業への融資および利息減額も行われ、条件を満たした学生は最高で30万元(約579万円)、創業で5人以上を雇用した場合は同じく50万元、条件を満たした中小企業については同じく500万元(約9,910万円)を起業融資として申請することができる。


中国経済新聞を読もう

<連絡先>
(株)アジア通信社
所在地:〒107-0052 東京都港区赤坂9-1-7
TEL:03-5413-7010
FAX:03-5413-0308
E-mail:edit@chinanews.jp
URL:https://chinanews.jp

関連キーワード

関連記事