2022年08月14日( 日 )
by データ・マックス

日本のNATO首脳会合への参加 今後は欧米日VS中露となるか

国際政治学者 和田 大樹

ターニングポイント イメージ    6月末は、国際政治にとって大きなターニングポイントとなった。6月26日から3日間、ドイツ南部エルマウでG7サミットが開催され、G7諸国がロシアや中国へ対抗していく姿勢が改めて鮮明に示された。

 G7諸国はこれまで石油やダイヤモンド、ウオッカ、魚介類などロシアの主力産品の輸入を停止してきたが、今回、新たに金の輸入禁止など制裁の強化が合意された。また、中国が進める巨大経済圏構想「一帯一路」に対抗していく狙いで、G7諸国は中低所得国に向けたインフラ整備に今後5年間で6,000億ドル(約81兆円)を投資していく計画を発表した。日本も650億ドル(約8.8兆円)以上を担うことを明らかにしている。

 その直後には、スペイン・マドリードでNATO首脳会談が2日間の日程で開催された。今回の首脳会談には大きく3つのポイントがあった。

 1つ目は、ウクライナ侵攻によってロシアを現実的脅威とNATOが受け止めるなか、新たにNATO加盟申請を行ったフィンランドとスウェーデンの加盟が確実となり、NATO加盟国が30から32となること。

 2つ目は、NATOのロシアと中国に対する認識の変化だ。今回の首脳会合で、NATOはロシアを「戦略的パートナー」から「最大かつ直接の脅威」と認識を変化させ、インド太平洋で覇権的な行動をエスカレートさせる中国について初めて言及され、中国は欧米に対して組織的な挑戦を行っていると強い懸念が示された。

 3つ目は、インド太平洋とNATOの協調である。岸田総理が日本の総理として初めてNATO首脳会合に参加したが、韓国やオーストラリア、ニュージーランドの指導者たちも相次いで参加し、今後対中国を念頭にインド太平洋とNATOが接近していく姿勢が示された。

 一方、このような欧米、日本などの行動に対し、中国やロシアは自らの陣営づくりを強化している。中国の習氏は6月、オンラインで開催されたロシア主催の国際経済フォーラムの席で、欧米による一方的なロシア制裁は排除する必要があるとの認識を初めて示し、プーチン大統領も同月に行われた新興5カ国BRICS首脳会議のビデオ演説で、ロシアは欧米による制裁に一切屈せず、中国やインド、南アフリカやブラジルなど信頼できるパートナーとの間で経済・貿易関係を強化していく姿勢を鮮明にした。

 以上のような事実に、岸田総理のこれまでの対中国、対ロシア、そして欧米との協調という姿勢を加えて考えると、今後「欧米日VS中露」のような大国間の構図がより表面化してくることは想像に難くない。

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 日本周辺では中露両軍による共同飛行、共同航行など空や海からの軍事的威嚇が目立ち始めており、それによって日本も米国やオーストラリア、ニュージーランドなどのインド太平洋諸国だけでなく、英国やフランスなど欧州との安全保障上の協力を強化することになるだろう。近年、英国やフランス、ドイツ、オランダなどが海軍のプレゼンスをアジアで強化している。

 欧米日VS中露という構図がより表面化するであろうが、1つ加えたい。それは、マクロ的視点だけでなくミクロ的視点も必要になるということだ。

たとえば、NATO諸国のなかにも中国と深い経済関係にある国も少なくなく、中国脅威論についてはNATOのなかでも温度差があり、対中国でNATOがすぐに結束できるほど、事はそう単純ではない。ロシアについても、ロシア産エネルギー資源に深く依存している国も多く、バイデン政権による対露制裁強化でも温度差がある。

 要は、欧米日VS中露のような大国間の構図が表面化しても、そのなかには2国間の関係が毛細血管のように生じており、経済のグローバル化、デジタル化が進んでいる今日の複雑化した国際関係においては、マクロ点視点とミクロ的視点を同時並行で見ていく必要がある。


<プロフィール>
和田 大樹
(わだ・だいじゅ)
清和大学講師、岐阜女子大学特別研究員のほか、都内コンサルティング会社でアドバイザーを務める。専門分野は国際安全保障論、国際テロリズム論、企業の安全保障、地政学リスクなど。共著に『2021年パワーポリティクスの時代―日本の外交・安全保障をどう動かすか』、『2020年生き残りの戦略―世界はこう動く』、『技術が変える戦争と平和』、『テロ、誘拐、脅迫 海外リスクの実態と対策』など。所属学会に国際安全保障学会、日本防衛学会など。
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和田 大樹 (Daiju Wada) - マイポータル - researchmap

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