2024年04月27日( 土 )

【福岡IR特別連載102】長崎IR完全崩壊、結果はHIS澤田氏の一人勝ち

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ
法人情報へ

ハウステンボス イメージ    昨日、読売新聞が先行し、マスコミ各社がそれに追随、HISがハウステンボス売却転売を発表、香港のPAGに666億円で売却することが報道された。正に、筆者が予想した通りの結果だ。

 これで、長崎IRは完全に崩壊した。結果は、HIS澤田氏の「一人勝ち圧勝」で、そのハウステンボス株主である福岡財界関係者の一部は「漁夫の利」を得ることになったのである。

 ハウステンボスの新たな所有権者となった中華系不動産投資企業者PAG(本社:香港)はグローバルな知名度をもつが、「日米経済安全保障」の観点から、我が国政府が長崎IRの本件パッケージプロジェクトに対して、また先の区域認定申請に対して、その承認を出すことなどは今後絶対にない。

 なお、今回のハウステンボス単体での売却は、長崎IRとは別物であり、もう止めようがない。このことについては前号で解説した。

 しかし、この結果が出ても、長崎県行政とその関係者はこの結末をまったく理解せず、したくもないだろう。彼らは結果責任を問われる可能性があるため、自らの責任で、本件IRの中断をすることはできない。

 これらは、これまで重ねて指摘していた通りで、誠にお粗末な経緯による行政と議会関係者の結果責任である。

 要は、前述のすべての関係者がHIS澤田氏の「手のひらで転がされた」のだ。蚊帳の外に置かれ、愚弄され、狼狽させられた結果の情けない姿である。

 行政が以前から約束している、当該地隣接の土地買収予定価格205億円という、実現性のない本件IRのパッケージプロジェクトを付加価値に、つまり武器にしたことが、この売却転売価格666億円という取引を産んだのだ。

 当然、PAGもその将来性と可能性は考慮しているはず。可能性はゼロではなく、嘘ではないからだ。グローバルなビジネスマン澤田氏の優れた手腕と交渉力である。

 HISがハウステンボスを継承する際に投資した額は約20億円。その後、僅かな約12年という期間に、その33倍もの高額な利回りでの転売となったというわけだ。法的な問題はないが、倫理的には誇れるものではない。筆者は、これを彼らの「一人勝ち、圧勝」だと言っている。

 誰からも責められる問題ではない。お粗末なのは当該地管轄の政治家と行政関係者たちだ。

漁夫の利を得た、九州電力筆頭の福岡財界関係者達

 元九州電力・松尾新吾氏や元JR九州・石原進氏は、すでに本件での役目が完了し、世代交代が進むだろう。事実上の社会からの引退である。

 九州電力を筆頭に、西部ガス、JR九州、西日本鉄道等のサラリーマン組織の現主管者たちは、今回の売却転売問題で思いもよらぬ「漁夫の利」を得た。各社とも所有しているハウステンボス株を、損失を出すことなくHIS側に買い取ってもらえるからだ。

 今後の展開次第では紙切れ同然になる可能性があるものを、それなりの価格で買い取ってくれるのであり、いうことはないだろう。

 加えて、不安定なハウステンボスの経営から正式にきれいな形で撤退できるのだ。彼らにとっては「盆と正月が一緒にきた」ようなものであり、本音では大変喜んでいるものと筆者は推察している。

 今回のハウステンボス売却転売取引の確定により、IR長崎は「日米経済安全保障問題」に抵触する可能性がある。そして、福岡企業の株式売却により、福岡財界の長崎IRに関する協力体制は一挙に崩壊した。当然、これらはグローバルな感覚の持ち主HISの澤田氏は「百も承知」の上での取引なのである。

 知らぬは、国際ビジネスも世界情勢にも鈍感な長崎の行政機関とそれぞれの政治家、議会関係者たちだけだったのだ。

 これらは、昨年の長崎県行政による公開入札時に後から気づいて、恣意的に香港に本社を置く中華系カジノ投資開発企業のオシドリ・インターナショナル・ディベロップメントおよびニキチャウフー・パークビューを入札から除外した件と同様の失敗を再度繰り返しているだけなのだ。誠にお粗末極まりない話だ。

 当然、現在の本件IR事業予定者であるカジノ・オーストリア・インターナショナル・ジャパン(CAIJ)の林氏も、今回のハウステンボス売却転売の件では、澤田氏と仲間だと考えるべきだ。この期間にCAIJから一切何のアクションもないということは、この売却転売話についてある程度熟知しているとみるべきだろう。

 長崎県行政とその関係者自身が「日米経済安全保障問題」への抵触や福岡財界関係者たちの株式売却問題に異論がないなどはあり得ないことである。もし、これらに異論なく、本件IRの継続を主張するならば、彼らは「ど素人」の集団である。

 長崎新聞を筆頭とする地元マスコミの反応を見ていると、何をしているのかと疑問に感じる。すべてが不可思議だ。

 最後に、本件を管轄する行政の首長である大石賢吾知事は、即刻長崎IRの中断を決断すべきであると言いたい。中央政府から本件について批判される前に実行すべきだ。

 これらは前知事の中村法道氏が実行したものであり、責任がある。愚かな発言をしている朝長則男佐世保市長も同様だが、中断の決断が遅れれば遅れるほど、大石知事は自らの政治生命を危険に晒すこととなるだろう。 

【青木 義彦】

(101)
(103)

関連キーワード

関連記事