2024年05月10日( 金 )

次世代リーダーが見据える永続企業への道(前)

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(株)曙設備工業所
代表取締役 蒲生 和紀 氏

 福岡県を代表する設備工事会社として、地場ゼネコンや建築設計事務所から厚い信頼を寄せられている(株)曙設備工業所。同社は次世代に向けた取り組みの一環として、経営陣の若返りを図った。これまで経営トップとして、30年の長きにわたり同社を牽引してきた野田弘之氏は会長に就任し、代表取締役には取締役営業部長・蒲生和紀氏が就任。今回、蒲生氏に改めて代表就任に際しての思いなどを聞いた。

(聞き手:(株)データ・マックス 代表取締役 児玉 直)

苦難の時を乗り越え、築き上げた基盤

(株)曙設備工業所 代表取締役 蒲生 和紀 氏
(株)曙設備工業所
代表取締役 蒲生 和紀 氏

 ──まずは代表取締役就任、改めておめでとうございます。

 蒲生和紀氏(以下、蒲生) ありがとうございます。最初に野田会長から代表の打診を受けたときは、正直驚きました。社内には私よりも経験豊富な先輩たちがおられましたから。当然悩みもしたのですが、次第に、せっかくお話をいただいたのだから「やってやろう!」という気持ちが強くなり、お引き受けすることにしました。

 ──蒲生代表は営業職で経験を積まれていたのですか。

 蒲生 私はもともと現場管理を担当していました。本格的に営業を担うようになったのは、直近3年程です。実をいうと学校も水産系で、建設業界からは程遠い場所に身を置いていました。しかし、いわゆる就職氷河期に直面したことが、転機になりました。職探しが思うように進まないなか、設備工事会社を経営する親族の伝手を頼り、曙設備工業所にお世話になることになったのです。こうして振り返ってみると、学卒後、20年以上お世話になっている会社の代表に就任することになりますので、改めて身が引き締まる思いです。

 ──私も御社とは長いお付き合いになりますが、印象深いのはやはり、2002年の高木工務店、03年の豊栄建設倒産です。蒲生代表もその真っ只なかにおられたわけですね。

 蒲生 はい。私が入社してまだ間もないころ、26~27歳ごろの出来事だったと記憶しています。当時は不動産市況が活発で、ゼネコンの間でもマンション受注が旺盛でした。当社もサブコンとして、マンション関連の給排水、空調設備工事を多数手がけていましたから、高木工務店や豊栄建設などのゼネコンの倒産で、大きなダメージを負うことになりました。
 この経験を生かすことで、当社のほうからゼネコンや建築設計事務所に設備設計・施工提案を行うという現在の営業スタイルが確立され、他社との差別化につながっています。ありがたいことに仕事も途切れることなくいただけており、手持ち工事だけで85億円を確保しています(22年10月取材時点)。

 ──苦難の時があったからこそ、今があるというわけですね。

 蒲生 少なくとも向こう3年は安心して経営に取り組める状態でバトンを渡していただきましたので、企業存続を第一に、まずは私の代になって業績に変調をきたすようなことがないように、一所懸命に経営者として精進してまいります。

曙設備工業所 本社
曙設備工業所 本社

継承への思いと次世代への期待

 ──野田会長にお尋ねしますが、蒲生氏を代表に選定された一番の理由は何だったのでしょうか。

 野田弘之氏(以下、野田) そうですね、当社の新卒採用一期生ということで、長い間そばで見てきて信頼感があったというのも、もちろんあります。勤勉ですし、頭の回転も良い。ただ、何よりも大切なのはお取引さまからの信用ですので、最終的にはお取引先さまの声を直接聞いてから判断しようと考えました。

 そして、主要なお取引先さまに、「彼(蒲生氏)に代表を任せようと考えています」と伝え、皆さんから「良いと思います」との声をいただけたことから、決断しました。プレッシャーはあるでしょうが、自信をもって会社を引っ張っていってもらえればと思います。

 ──先ほど手持ち工事の話もありましたが、先をある程度見通せることで、少しは気が楽になるのかなと思います。

 野田 当社で設計を担当した物件の、8~9割を自社で受注できており、今年の1~9月の完工高だけで37億円です。少なくとも再来年までは現状以上の業績が見込めるでしょう。熊本支店を出した際には、蒲生くんに1人で現地に入ってもらいました。ガッツもありますので、期待しています。

(つづく)

【文・構成 代 源太朗】


<COMPANY INFORMATION>
代 表:蒲生 和紀
所在地:福岡市早良区田村4-15-10
設 立:1982年2月
資本金:6,000万円
売上高:(21/12)37億6,826万円
URL:http://kk-akebonosetsubi.com/


<プロフィール>
蒲生 和紀
(がもう・かずのり)
1975年7月生まれ。長崎大学水産専攻科卒業後、99年4月に(株)曙設備工業所に入社。現場管理などの経験を積み、取締役営業部長に就任。2022年10月1日付で、同社代表取締役に就任した。趣味はスポーツ観戦。

(後)

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