2024年05月19日( 日 )

バングラのIT人材を宮崎に 産官学連携で地域の活性化を図る(中)

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(株)教育情報サービス
国立大学法人宮崎大学

 高齢化、若年人口の減少が進む日本。今後、社会経済活動を維持するための方法の1つが外国の高度人材の呼び込みと移住促進だ。宮崎市は、この数年でバングラデシュから54人のIT人材を呼び込んでいる。産官学が連携し、日本語能力を身につけたバングラ人IT人材を企業に供給する仕組みを構築したことによるものだ。この「宮崎―バングラモデル」について、企業と人材とのマッチングに取り組んだ(株)教育情報サービスの荻野次信社長、日本語教育に取り組む宮崎大学国際連携センター日本語教育部門長の伊藤健一准教授に話を聞いた。

(株)教育情報サービス、
(株)B&Mの入居するビル(中央)

    KJSは人材紹介業務を行うために子会社として(株)B&M(宮崎市)を設立、B&Mが宮崎県のIT企業と彼らとのマッチングを支援するほか、採用を検討する企業向けに現地視察ツアーや現地での研修なども行う。宮大は日本語教員を新たに採用し派遣した。宮崎市はKJSなどからの要望に基づき、「バングラデシュIT人材雇用促進補助金」の制度を設け、同市内の企業がバングラのIT人材を雇用する際にB&Mに支払う紹介手数料の半額(1人あたり上限67万5,000円)を支援する。また、バングラから新たな就職者が来日するたびに市長を表敬訪問する機会を設けることで、彼らに安心感を与えている。

 このスキームの特徴の1つは、彼らが就労ビザを取得しやすくするために留学期間を設けたことだ。宮大の伊藤氏によると、国際業務経験のない中小企業が就労ビザを求めても発給は容易ではないが、日本政府が留学生受け入れを促進していることから、まず留学生として来日し、それからビザを就労に切り替えることは難しくないと判断したためだ。彼らはB-JETを終え内定を得た後、留学生として宮大にやってきて、3カ月の「日本語×ITインターンシップ・プログラム(JIP)が始まる。宮大の寮に住み、日本語の講義を受けながら企業でのインターンシップに参加する。これは彼らと外国人採用に不慣れな企業がお互いに馴染むのを促す場としても機能している。

同僚としてのバングラ人

 荻野氏はバングラ人を日本に連れてきたいと思った理由について、高いITスキルのほか、彼らの気質が控えめで真面目であり、同じ南国の宮崎県民に共通すると感じた点も挙げる。同国のIT人材や企業、政府機関の人と話すうちに宮崎の風土に合うと感じるようになり、多くの宮崎の関係者も同じような感想を抱いたという。ただ、時間厳守という観念が弱いと感じられるが、それは新興国において広く見られることであり、首都ダッカの深刻な交通渋滞を経験すると理解できなくはないという。なお、B-JETでも彼らに日本での習慣に慣れるよう、遅刻についても厳しく管理している。バングラ人が親日的であることも好材料だ。日本がバングラを西側諸国で最初(1972年2月)に国家承認したこと、政府開発援助(ODA)の実績がインドに次ぐ2位であることが好意的に受け止められているという。

JIPでの授業風景(宮崎大学)
JIPでの授業風景(宮崎大学)

 荻野氏も伊藤氏もバングラの魅力の1つとして、若さを挙げる。同国の平均年齢は27.6歳(20年、国連)、B-JETでの内定者の来日時の年齢は平均約25歳で、彼らの大半が20代だ。今後も若い人材が多く供給されていくと見られる。彼らのうち実務経験を有するのは約半分。ほぼ新卒でB-JETに参加している人材もいるが、来日後に平易な業務を行いながらスキルを高めていき、数年後には大いに活躍しているという(荻野氏)。KJSでも3人雇用している。

 彼らとの接し方について、伊藤氏は日本人の若者とほぼ一緒であり、お客さん扱いしないこと、特別視しないことが大事だと強調する。異文化に不慣れな企業では、彼らとの適切な距離感が掴めず、イスラム教徒だからとお祈りについて過剰に配慮するケースが見られるが、昼に会議室の使用を許可するくらいで十分という。お客さん扱いでは彼らは疎外感を感じ続け、受け入れる側の負担も大きい。伊藤氏は企業の既存のサポート体制でうまく対応している事例として、バングラ人の入社時期を日本人新卒と同じ4月に設定している企業を挙げる。そうすると彼らは上司よりも同期の日本人社員と馴染みやすいうえ、お互いに助け合うため、会社としても過度な対応をしなくてすむという。

 意思疎通において、伊藤氏は外国人がわかりやすい「やさしい日本語」を話すことが大事だと強調する。日本の国語教育ではわかりやすく書く、話すという教育をしておらず、方言を交えて話していることに無自覚であるが、外国人が学ぶ日本語とは異なる。それに気づき、わかりやすく話すことで意思疎通をスムーズにできるという。

(つづく)

【茅野 雅弘】


<INFORMATION>
(株)教育情報サービス

代 表:荻野 次信
所在地:宮崎市橘橋西3-10-36
設 立:2008年4月
資本金:645万円
売上高:(22/5)2億1,221万円
TEL:0985-35-7851
URL:https://www.e-kjs.jp/index.php

国立大学法人宮崎大学
学 長:鮫島 浩
所在地:宮崎市学園木花台西1-1
設 立:1949年5月
TEL:0985-58-7104(国際連携センター)
URL:https://www.miyazaki-u.ac.jp

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