坂田藤十郎丈、曾根崎心中のお初役を62年で1400回
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「6月博多座大歌舞伎」6月25日昼の部「曽根崎心中」でお初役1,400回を迎えた坂田藤十郎丈(83)が、歌舞伎では珍しい特別カーテンコールを行った。
終演、緞帳が降りると場内に「お初1,400回達成」のアナウンスが響き渡った。再び緞帳が上がると満員の観客席からは一斉に拍手が起こり、「山城屋!」の声が飛び交った。
舞台上には藤十郎丈が白装束のお初の衣裳のまま正座しており、観客に向かい2度深々と頭を下げた。そして静かに立ち上がり、感慨深く天を仰ぐように両手を広げ、喜びをかみしめていた。
共演の中村梅玉丈と博多座・芦塚日出美社長より花束贈呈が行われた後、再び観客席に向かった藤十郎丈は、言葉ではなく表情と立ち姿そのもので「ありがとうございました」という感謝の思いを露わにした。博多座関係者は「62年という長い期間、一人一役で女形を演じ続けた歌舞伎役者は、近年では藤十郎丈以外にいないであろう」と、藤十郎丈の偉業を称えている。
坂田藤十郎コメント(当日発表)
本日、「曽根崎心中」のお初を演じて、初演以来1400回を達成させていただきました。
まことに感慨深く、昭和28(1953)年8月、21歳の時、東京の新橋演舞場で、父・二代目鴈治郎の徳兵衛と復活初演した舞台が、まるで昨日のことのようによみがえってきたような、そんな感じがいたしました。
回数もさることながら、初演から数えて62年という長きにわたり、19歳のお初という女性を演じ続けてきましたことにも深い感慨がございます。この間、さまざまな思い出があります。
特に忘れられないのは、平成7(1995)年1月、大阪の中座での1000回達成の日で、あの阪神大震災の前日でした。そういう大変な時でもお客さまが見に来てくださったことは大変ありがたく、感謝の気持ちは私の胸に深く刻まれております。
自分の人生で「曽根崎心中」という作品に出合えた私は幸せです。お初という女性に出合えたことも運命だと思っています。お初が私の歌舞伎人生を変えてくれました。
1400回演じていても、私は、毎回毎回、お初を新しく生きています。それは初演以来、変わりません。
「曽根崎心中」を上演している時はいつもお客さまがより近くに感じられます。お客さまに支えられて演じ続けて来られました。感謝の気持ちで、明日の千秋楽もお初を生きたいと思っています。(原文ママ)
6月大歌舞伎は、本日26日千穐楽を迎える。
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