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2015年06月26日 17:08

漫画のキャラクターが『おもてなし』!(5)

『週刊少年チャンピオン』で新人賞獲得

 ――今回は話題を変えて、先生と漫画との出会いについて教えて頂けますか。

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すねやかずみ氏

 すねや 私は赤塚不二夫先生の『天才バカボン』や『レッツラゴン』を読んで育った世代です。同時に、小学校、中学校の頃は、漫画が「悪書」(子供に悪影響を与えるもの)と言われていた時代です。学校に漫画を持っていけない時代だったのです。そこで、私は大学ノートに、毎週新刊が出る度に、漫画を写し友達に見せていたのです。友達は大変に喜んでくれました。
 そのうちに、まったく同じものを写すことに飽き足らなくなり、キャラクターにクラスの友達を登場させたり、セリフを変えたりしました。それを見て、友達が笑ってくれることに喜びを感じていたのです。今授業では、「はじめはたくさん模写をしなさい」と教えることがあります。これはとても大事なことなのですが、今から思えば、私は当時自発的にその行為をしていたことになります。

結果的に、私は初動の段階で、読者(友人など)のために漫画を描き始めていたことになります。その後、高校2年の時に『週刊少年チャンピオン』で新人賞を獲りデビューすることになります。すでにその当時には、将来は漫画家になることを決めていました。しかし、私は生来、好奇心が旺盛な性格で、このまま、出版社や雑誌社の編集者だけとの付き合いで、漫画家生活に入ってしまうことに少し躊躇しました。その背景には、大学のいわゆる漫研「漫画研究会」にとても興味があったのです。

『週刊少年マガジン』増刊号でホラー

 そして、大学に入学、憧れの漫研に入り、現在でも『月刊少年マガジン』に「鉄拳チンミ」を連載中の前川たけし先生に、先輩として出会うことになります。卒業後は前川たけし先生のところで約3年半、アシスタントとして、修行させてもらいました。その後、幸運にも、いきなり『週刊少年マガジン』で読み切りを描かせてもらい、引き続き『週刊少年マガジン』増刊号で連載を描いていくことになります。これは、ホラー漫画です。

緊張と緩和に関する2代目桂枝雀理論を生かす

 ――好運なスタートですね。しかし、ギャグ漫画を描かれていた先生が急にホラー漫画とはすごいですね。

20150526_013 すねや 以前、楳図かずお先生が、ギャグ漫画からホラー漫画を描き、大変人気がありました。そこで、編集者は「ギャグ漫画を描ける人はホラー漫画も描けるだろう」と考えたみたいで、私に白羽の矢が立ちました。
 もともとギャグ漫画家だったので、ホラーはまったく描いたことがありません。すぐに、レンタルビデオショップに行き、ホラーの棚にあるものをすべて借り、メモを取りながら見続けました。そのうち、編集者の言われた意味がわかるようになります。

 落語家の2代目桂枝雀師匠の唱えられた「“緊張の緩和”が笑いを生む」という有名な理論があります。まさにこれなのです。「緊張しているのを緩ませる」と人は笑います。ホラーはまったく逆で、「緩んでいるところを“きゅっ”と緊張させる」と人は怖くなるのです。つまり、同じストーリーでも、演出を逆にすることで、ギャグ漫画はホラー漫画になり、ホラー漫画はギャグ漫画になるのです。私は自分の中のギャク漫画のテクニックを利用してホラー漫画を描きました。

 私が最初に描いたホラー漫画は、その雑誌の人気投票のトップに躍り出ました。その後4.5年はホラー漫画家として活動して行くことになります。

日本国内で約5万人の紙芝居師がいた

 ――目から鱗というか、とても興味深いお話ですね。話は変わりますが、先生は日本の「紙芝居」に関係する活動もなさっていると聞きました。漫画と紙芝居は何か関係があるのですか。


 すねや 私は、現職に就く前から、今も引き続いて(株)漫画家学会の取締役をしています。この会社は「漫画家の新しい仕事を創造する」ことが設立の主旨になっています。現在の主だった事業は紙芝居師派遣と紙芝居制作になっています。漫画の原点である紙芝居は日本独自の文化でもあり、戦前、戦後に大きなブームにもなっています。職業としての街頭紙芝居の免許制度も整備され、一時期は日本国内で約5万人の紙芝居師がいたと言われています。

 漫画学会では、漫画の原点でもある日本の伝統文化「紙芝居」を継承し、再び日本で大きな「紙芝居業界」を作り上げるべく、プロ紙芝居師の社員が紙芝居師の育成もして「エンターテイメント紙芝居」を広げています。このことで出版メディアには依存しない「漫画・紙芝居制作」という漫画家の新しい仕事を作ることも目指しています。

地の利を活かし、誇りを持って頑張れ

 ――先生はとても多方面にご活躍なので話は尽きません。残念ながら時間も来ましたので、最後に読者に向けてメッセージをいただけますか。

 すねや 「クールジャパン」の象徴として漫画・アニメが取り上げられる事は多いですが、それは漫画やアニメだけの事ではなく、日本人がモノづくりをするときに大事にしている「魂をこめる」という行為自体が評価されているのだと思います。それは、単に独りよがりや自己満足が目的ではなく、日本独自の「おもてなし」の心をもって、常にユーザー(受けとる側)目線で考えての行為であるということがクールジャパンの本質なのだと思います。当校でも、技術だけでなくこの本質を見失わずにきちんと学生へ伝えていけたらと思っています。

 日本で漫画・アニメ作家を目指されている皆さんには次の言葉を伝えたいと思います。漫画・アニメに関して日本は世界の中心で、野球の世界で言えば大リーグです。しかし、ここ台湾の当校の学生のレベルや感性も日本人とほとんど変わりません。ダブルスクールや仕事をしながら非常にまじめに授業に取り組んでいます。その勤勉さに関しては日本人以上かも知れません。その彼・彼女たちにとって日本は憧れの地です。日本人として生まれた時点で、皆さんは地の利があるわけですから、ぜひ誇りを持って頑張って欲しいと思います。

 ――本日はありがとうございました。

【金木 亮憲】

<プロフィール>
suneyakazumiすねやかずみ氏(本名:強矢和実)
 台湾角川国際動漫股份有限公司 教務総監・漫画家。『週刊少年チャンピオン』(秋田書店)で新人賞を獲りデビュー。『マガジンSPECIAL』(講談社)などにギャグ/ホラー/コメディーなどのジャンルで連載。漫画家ユニットとして集英社『週刊少年ジャンプ』公式WEBサイトでデジタルマンガを連載。携帯コンテンツ初の占いマンガ制作DoCoMo・ソフトバンクの公式占いサイトのプロデュースなどを行う。 
 2008年より(株)漫画家学会の取締役として、漫画家に対して新たなマンガ事業の開拓・提案や紙芝居の事業化を行っている。京都精華大学マンガ学部ストーリーマンガコース非常勤講師、総合学園ヒューマンアカデミー東京校マンガカレッジ専任講師を経て現職。

 
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