2022年01月25日( 火 )
by データ・マックス

新たなステージ迎えた再エネの未来(8)

 2030年、一般社団法人太陽光発電協会(JPEA)が掲げる、太陽光発電だけで100GW超、5,700万世帯分の電気がまかなえる時代は来るのか。原発39基分の電気が太陽光だけで生み出せるようになれば、日本のエネルギー自給率も大幅に上がり、海外に依存しない国産電力ができるかもしれない。しかし、太陽光のみならず再生可能エネルギーの普及が進む一方で、ハードルはまだまだある。本シリーズでは新たなステージを迎えた再生可能エネルギーの未来について、現在のトレンドから読み解いていきたい。

季節や天候問わず安定した地中熱

 太陽光や風力など自然エネルギーによる発電は、季節や天候によって発電量が左右する。需給調整は火力発電など従来の発電設備で補っているが、再生可能エネルギーを拡大するという点だけ考えれば、いつまでも化石燃料に頼るわけにいかない。

 そこで最近注目されているのが、天候や昼夜問わず日本中どこでも利用できる「地中熱発電」という省エネ技術だ。
地中熱は、日本では地熱の一種に包括されているが、両者には大きな違いがある。地熱は地球内部の熱源に由来する熱エネルギーなのに対し、地中熱は太陽光が地表を温めたことに由来する地下200mまでの地中の熱エネルギーを指す。
 夏季の地中温度は気温より低く、冬季は気温より高いという温度差を利用し、冬は温熱、夏は冷熱として利用できる。深さ10m以深の地中温度は季節や天候を問わずほぼ一定で、安定した熱エネルギーを地中から取り出せるのが大きな特長だ。

 具体的な利用方法として、「ヒートポンプシステム」「空気循環」「熱伝導」「水循環」「ヒートパイプ」の5つがある。再エネ普及の研究者で、地中熱の有用性を訴える松本真由美・東京大学客員准教授によれば、これまで最も多かったのは路面の融雪・凍結防止の「水循環」で、積雪が多い東北地方に導入が集中していたため、日本では地中熱があまり周知されていないという。
 そうしたなか、ここ数年で急速に普及が進んだのが「ヒートポンプシステム」の活用だ。背景には、省エネで環境に配慮した技術であること、国による設備導入における補助金制度が整ってきたことがある。
 ヒートポンプとは、少ないエネルギーで空気中から熱をかき集めて大きな熱やエネルギーとして利用する技術で、エアコンや冷蔵庫などに使われている。通常は空気熱を使うが、地中熱を利用すれば、夏は15~20度、冬は10~15度で安定しているため、大きな節電効果を生み出せる。

 松本氏によれば、こうした技術がすでに東京スカイツリータウンや小田急電鉄などで利用されているという。東京スカイツリータウンでは1次エネルギーの年間消費量が44%削減され、二酸化炭素の年間排出量も50%削減と大きな効果を発揮したそうだ。
 また小田急電鉄では、駅の空調の一部に、鉄道トンネルとしては日本初となる地中熱ヒートポンプシステムを導入。きっかけは、駅周辺が閑静な住宅地で、空気熱ヒートポンプだと駅舎の外に室外機を置く必要があり排熱や騒音など周辺環境への影響が懸念されたからだという。
 地中熱はまだ初期導入コストが高いという課題があるものの、持続的に地中エネルギーを活用できる大きな可能性を秘めている。二酸化炭素などの温室効果ガスの排出がほとんどなく地球温暖化対策にもなり、冷暖房時の排熱を地中に放出するため都市部のヒートアイランド現象を抑制できるという優れたシステムとしても期待されている。

地中熱ヒートポンプの設置件数は急速に伸びてきた(環境省)<

地中熱ヒートポンプの設置件数は急速に伸びてきた(環境省)

【大根田 康介】

 
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