2024年10月14日( 月 )

不可解な創業者の退任の裏側は?(前)

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(株)ディーノシステム

 企業PRサイト『社長.tv』を制作・展開する(株)ディーノシステム。同社の創業者で代表取締役であった中島一明氏が、2015年4月29日に退任した。突然の中島前代表の退任の理由が不明瞭で、同社の取引関連を含めた関係者から「なぜ、中島氏が退任したのか?」との問い合わせが相次いだ。取材を進めるなかで、中島前代表の退任は、現代表の山田文彦氏が絡んでいる可能性が高いという話が、複数の関係者から入ってきた。同社の中島前代表の不可解な退任についてレポートする。

経営者動画のパイオニア

office_ousetusitu (株)ディーノシステムは、中島一明氏が2007年に設立したIT制作・運営会社である。中島氏は高校を中退後、土木関係の仕事や飛び込みの営業職などを経て、19歳のときに単身で世界一周の旅へ出た。その旅のなかで、200の特許を取ったソフトバンクの孫正義社長にならって200もの起業プランを作成した。その後日本に戻り、21歳のとき3人で起業した。設立当初は、『立体的な音で聞こえる怖い話』を携帯電話のコンテンツ販売をすることを事業化することを目指した。提携電話各社にその企画を持ち込んだが、実績がないという理由で頓挫。事業資金が底を尽きかけたが、前進し続け、各方面で活躍する地元・福岡の経営者に会って話を聞くことに専念した。

 その活動のなかで各経営者の話を、映像に残してコンテンツ化、そして経営者の映像をネットで見ることができる、効率的な新規開拓のきっかけづくりというイメージで、08年1月に『福岡の社長.com』を作り上げ開設した。中島氏のビジネスモデルである経営者のインタビュー集をまとめた動画サイトは、新鮮な切り口として評判を呼んだ。また、著名な経営者ではなく、地方の中小企業の経営者を全面に出してのコンテンツづくりは、出演者および動画のユーザーから高い評価を得た。

 『次世代型企業ネットワーク』というキーワードでのコンテンツの構築を目指した中島氏。「若者に、地域に根ざした中小企業を知ってもらいたい」と過去、弊社のインタビューで中島氏は述べている。『福岡の社長.com』には、中小企業と人材を結ぶ地消地産のプラットホームという中島氏の明確なビジョンがあった。

 中島氏の秀逸なビジネスモデルと事業推進への情熱により、サイトの開設1年後の09年2月には、動画に出演する企業および経営者は100を超えた。それを機に、『福岡の社長.tv』に改名した。その後、翌10年4月には200を突破し、11年10月に全国展開の第1歩として『熊本の社長.tv』を開設した。同年11月に東京と長崎、12月には佐賀、12年1月山口、2月に大分と宮崎に、それぞれ『社長.tv』を開設した。それら開設のスピード感は圧巻で、12年5月時点で40もの都道府県で『社長.tv』を展開した。

 13年1月には同社は5周年を迎え、『社長.tv』に出演する企業および経営者は2,000を超えた。そして14年4月に5,000を超えて、経営者の動画のパイオニアとして同社と中島氏はその名を轟かせ、業界内外から大きな注目を集めることとなった。

 『社長.tv』は動画コンテンツにおけるブランドとなり、その躍進の影響でさまざまな経営者を対象とした動画サイトが全国各地に次々と立ち上がっていった。それでも『社長.tv』は、どこの動画サイトより圧倒的に掲載数が多い。同社の掲載数5,000に追随する同業他社は皆無だ。それが可能となったのは、中島氏は経営者の動画サイトのパイオニアであり、目指す目標と理念が明確であったことに尽きる。ただし、通信機器の発展とともに、『YouTube』をはじめ、さまざまなPRの動画が拡大し続け、動画サイト市場においては競合が激化している。同社も厳しい競争にさらされている状況下であったが、中島氏を支持する経営者は数多く存在した。

(つづく)
【河原 清明】

<COMPANY INFORMATION>
代 表:山田 文彦
所在地:福岡市博多区博多駅南1-3-6
設 立:2007年3月
資本金:2億606万円
売上高:(14/11)4億2,771万円
TEL:092-409-4845

 
(後)

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