2024年05月20日( 月 )

【2022年流通・小売業界回顧(2)】業態開発からみえる未来のカタチ(前)

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 コロナの感染が収まらなかった2022年。それでも社会・経済活動の正常化が進むなかで、小売業は生活者の意識や行動の変容に対応しつつ、コロナ後の持続的な成長を目指して、業態開発やDX(デジタルトランスフォーメーション)活用、M&Aなどといった取り組みを活発化させた。この1年の動きを振り返りながら今後を展望する。

冷凍食品専門店 こだわりで需要を深掘り

 小売業の成長エンジンは、リアルでは販売機会を増やし売上を伸長させていく新規出店だが、そのうえで欠かせないのが業態開発だ。新業態は現在と次代を映す鏡であり、消費の変化に対応しながら新たな価値を提供し需要を喚起し取り込んでいくものであるが、2022年は次代の成長を見据えた新業態が相次いで登場した。

 食シーンで注目を集めたのは冷凍食品専門店。冷食マーケットは近年、簡便性に加えてグルメ志向が強まるなかで消費者の支持を集め、成長を続けている。コンビニやフード&ドラッグ(スーパーマーケットとドラッグストアの複合店舗)も冷凍食品を強化しているが、スーパーは売り場を拡充するのみならず専門店業態を開発し、新たな販路を開拓する動きが目立った。

フランス発の高級冷凍食品ショップ「ピカール」
フランス発の高級冷凍食品ショップ「ピカール」

    イオングループはフランス発の高級冷凍食品ショップ「ピカール」の国内1号店を16年11月に東京・青山で出店、現在12店舗を展開しているほか、新業態「@FROZEN」の展開を8月に開始した。「イオンスタイル新浦安MONA」のインショップとして1号店をオープン、424m2のスペースに、「朝食」「ランチ」「ディナー」「おつまみ」「スイーツ」の5つのカテゴリーを展開、約1,500アイテムを取りそろえている。3つのゾーンに分かれ、「Cook」では簡便な約300アイテム、「Heat」では有名飲食店の本格メニューなど約800アイテム、「Eat」では洋菓子の名店のスイーツなど約400アイテムを展開し、ピカールの75アイテムも投入している。

 イオンは現時点で今後の出店計画について明らかにしていないが、好調な冷凍食品に注力することで新たな成長や業態を実現できる可能性があることから、当面は首都圏で展開しつつ、業態開発を進めるだろう。

 神奈川県を中心に「スーパー生鮮館TAIGA」を9店舗展開し、冷凍食品卸売も手がけるアイスコ(神奈川県横浜市)は12月、川崎市に冷凍食品専門店「FROZEN JOE’S」の1号店をオープンした。82.6m2の店内には、有名レストランのメニュー、中華、スイーツ、ご当地アイス、国産野菜、代替肉などこだわりの約320アイテムが展開されている。朝食をはじめ、昼食・夕食・軽食・おやつとあらゆるシーンに対応した品ぞろえで、こだわりと買い求めやすい価格で豊かな食生活を提案する。アイスコは冷凍食品卸としての豊富な実績を生かし、トレンドを深掘りするとともに、商業施設や駅ナカへの出店も視野に入れ多店舗展開を目指す。

「あたたかみのある冷食専門店」がコンセプトの「得正商店」
あたたかみのある冷食専門店「得正商店」

    食品卸のSANMI(大阪市)はカレーうどん・カレーライス専門店50店舗以上を展開する得正(大阪市)と組み、「あたたかみのある冷食専門店」がコンセプトの「得正商店」の1号店を、11月に開業した「三井ショッピングパーク ららぽーと堺」に出店した。約80アイテムの冷凍食品などこだわりのアイテムを集積し、カレーと一緒に提案するショップであり、ギフトにも対応する。

 これらの店舗は、共働き世帯・単身世帯・シニア世帯をメインターゲットにしており、グルメアイテムを充実させ、提案力を高めて冷凍食品の新たな魅力をアピールし需要の掘り起こしを図っている。

(つづく)

【西川 立一】

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