2024年02月29日( 木 )

京町家に見る 築古空き家の活用事例

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 国土交通省は2022年10月、新たな地域価値の共創を実現するうえでの課題と対応の方向性について検討を行うべく、“「ひと」と「くらし」の未来研究会Season3”を始動した。11月29日の第2回目の会合では、空き家として放置されてしまうケースが多い築年数の古い建築物などの流通や活用を促すため、条例などによる行政が支援する方策の拡大や空き家を活用した取り組みに対する融資の活性化などについて議論した。今回は、「京都市の京町家保全・継承の取り組み」にフォーカスして、リポートする。

京町家が存続の危機に

 古い街並みを残すためには、行政や地域のほか、さまざまなプレイヤーが一体となって活動する必要がある。京都の街並みを彩る京町家は、1950年の建築基準法施行の際に現存した木造の建築物で、伝統的な構造や都市生活のなかから生み出された形態意匠を有するものを指す。しかし、今やその京町家が存続の危機に立たされている。そのため、京都市はその保全・継承に全力に取り組んでいる。

 京町家の数は、4万7,735軒(2008年)から4万146軒(16年)に減少していることが、16年の調査で確認された。年間に約1.7%が減少している計算だ。そこで京都市は17年11月、「京都市京町家の保全および継承に関する条例」を制定。これまでにない新たな施策として、京町家の解体の危機を事前に把握し、保全・継承につなげる仕組みを創設している。具体的には、努力義務として、すべての京町家への解体着手前の届出を促し、指定した京町家への解体着手の1年前までの届出を義務化した。

京町家の現状
平成28年度に実施した調査では、前回の20・21年調査から京町家の数が47,735軒➡︎40,146軒に減少していることを確認(不明分を除き、7年間で5,602軒、年約1.7%が減少)

個別建物と区域を指定

指定京町家改修補助金を活用した改修事例    京都市は京町家の指定制度に基づき、趣のある町並みや個性豊かで洗練された生活文化の保全、継承を効果的に進めるため、個別の建物や区域を指定した。22年10月時点では、個別指定が1,243軒、地区指定は17地区。

 京都市は、京町家の改修費がネックとなり維持が困難である場合、京都市登録の建築・不動産関連団体と連携し、京町家の改修・活用方法・継承者とのマッチングを提案する制度のほか、指定京町家改修補助金を付与し、指定地区内の京町家に対しては上限額100万円、個別指定京町家は上限額250万円などの補助をしている。

 また、京都市が固定資産税・都市計画税相当額で京町家を借上げ、公募により選定した事業者に同額で転貸し、民間の活力により京町家の改修・活用などを行う「京町家賃貸モデル事業」を実施。第1号の適用事例として、21年7月に東京のIT企業が入居し、現在、サテライトオフィスとして再生している。「不動産会社や金融会社はまちを良くし、京町家を残していくことに積極的で意識が高い」(京都市)。

「建築基準法適用除外制度」を活用

 次に、「建築基準法適用除外制度」を活用し、京町家の改修に合わせて一部増築し、現代的に再生する試みも展開している。伝統的な意匠形態などを保存し、これらの京町家を良好な状態で使い続けることが困難である場合、建築基準法がハードルとなるケースもある。しかし、建築基準法第3条第1項第3号の「適用除外規定」を活用することで、京町家のような景観的・文化的に価値のある建築物は、法の適用を除外できるようにした。

 続いて京都市は、手続きを簡素化し、一般的な京町家に係る用途変更や一部増築などの保存活用をさらに促進するため、17年1月に標準的な規模の京町家について、建築基準法を適用除外する際の技術的基準「包括同意基準」を全国の地方自治体では初めて制定した。これにより、京都市が建築基準法適用除外指定を行うにあたり、建築審査会の個別審議を経ることなく同意を得て処分を行うことができるようになった。同基準は20年に標準的な規模の居住用京町家に、第1段階の工事内容を構造部材の健全化や屋根の軽量化だけでも可能となるように改正され、さらに利用しやすい制度とした。

 22年7月には、路地での建築物の建替えを容易にするとともに、路地を構成する大きな要素である京町家の一層の保全・継承を図る観点から、路地奥の建築物の大規模な改修を可能とする運用の見直しを行った。この運用により、あらゆる路地の再生を促し、防災性と居住環境を向上させ、若者・子育て世帯などの新たな住民の呼び込みを図るという。

 このような路地の多くは建築基準法上の道路ではないため、老朽家屋の建替えの際には建築基準法に基づく許認可の制度で対応する必要があったが、これらはセットバックを要件としているため、大規模な改修や建替えが実質的にできなかった。「接道許可制度や連担建築物設計制度などを使って、狭小な通路に面した京町家であれば建物の改修、それ以外であれば建物の建替えを進めることが可能になる」(京都市)。

ファイナンス面でも支援

 京都市景観・まちづくりセンターは、京町家の価値を京町家カルテとしてまとめ、評価について、「基礎情報」「文化情報」「建物情報」「間取図」の4つの情報を作成している。13年から地元金融機関3行(京都銀行・京都信用金庫・京都中央信用金庫)により、京町家カルテを活用した京町家専用ローンが商品化され、京町家の改修や購入を支援する仕組みが確立。標準金利よりも優遇を受けられるという特典もある。

 京都信用金庫は、京町家住宅専用ローン「のこそう京町家」を創設。10年間で162軒・約46億円(1軒あたり約2,800万円)の融資を行ってきた。外国人が京町家に価値を見出し、購入を目的に同専用ローンを活用するケースもあるという。

 また、事業用京町家専用ローン「活かそう京町家」も創設しており、31軒・8億円の融資実績があるようだ。31軒のうち法人は13軒で、賃貸物件とするケースが多いといい、また20軒程度は宿泊施設として活用されているという。京町家では、外観はそのままであっても内部はより住みやすい構造であれば、リセールの際の価格も向上するため、金融機関としてはなるべく実勢に即した担保評価を心がけていく。しかし、京都市全体でも京町家専用ローンがまだ周知されていないこともあり、この点が課題といえる。

再生のキーワードは「共創」

 空き家など老朽化した建築物を再生するキーワードは、「共創」ではないだろうか。会議の終盤、国土交通省は次のようにコメントした。「国が旗を振り、制度を創設すれば解決する問題ではないと改めて認識した。規制行政を担当する市町村、地元金融機関がコミットしていくことがますます大切になる。そこで国としては、取り組みをしやすくするためのツール、枠組みがどうあるべきかについて検討していかなければならない」。

 行政単独だけではなく、地域住民、不動産会社、ファイナンス会社とともにつくり再生していくことが肝要なのだ。

【長井 雄一朗】

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