2024年05月03日( 金 )

急加速する天神ビッグバン&博多コネクティッド(2)

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 2022年の下半期―とくに年末にかけて、福岡市の都心部再開発プロジェクト「天神ビッグバン」の新たな大規模プロジェクトが次々と発表された。現在、天神および博多という都心部で市主導の2つの再開発プロジェクトが進んでいるが、コロナ禍での一時的な停滞を経て、再び活況を呈し始めている。今回、現在進んでいるプロジェクトの概要を改めて振り返ってみたい。

天神ビッグバン(つづき)

福ビル街区建替プロジェクト

 天神交差点の一角では、西鉄が「福岡ビル」「天神ビブレ」「天神コア」の3棟のビルを建替え、街区全体を1棟の大型複合ビルとして一体開発する「福ビル街区建替プロジェクト」を進めている。

 同プロジェクトは、オフィス・商業・ホテルなどで構成される大型複合ビルを建てる計画。地下および低層階が商業フロア、中層階がオフィスフロア、高層階がホテルフロアとなる。ホテルについては21年12月、西鉄が(株)Plan・Do・Seeとホテルマネジメント契約を締結したと発表した。オフィスフロアでは、1フロアの面積が西日本最大級の1,400坪かつ天井高3mの大規模無柱空間を計画している。21年11月には福岡市の「天神ビッグバンボーナス認定」を取得して容積緩和制度の適用を受け、21年12月に着工。24年12月の竣工予定および25年春の開業に向けて、着々と開発が進んでいる。

 なお22年7月には、西鉄と米・CIC(ケンブリッジ・イノベーション・センター)とが共同で新ビル内にイノベーションキャンパスを創設するための検討に着手した。イノベーションキャンパスとは、スタートアップを中心に、国内外のさまざまな企業やベンチャーキャピタル、大学・研究機関、政府・自治体機関、弁護士等のプロフェッショナルファームなどが集積する施設のことで、創造交差点の象徴としてビル7階のスカイロビーエリアに設置。24時間・365日利用可能なプライベートオフィスやコワーキングスペース、会議室、アメニティスペースなどを計画しており、ビル内のさまざまな機能を緩やかにつなぐことで、組織の枠を超えたコミュニケーションを誘発するとしている。

福ビル街区建替プロジェクト

福ビル街区建替プロジェクト

<敷地面積>
約8,600m2
<延床面積>
約14万7,000m2
<規模>
地上19階・塔屋1階・地下4階建
<用途>
商業、オフィス、ホテル、カンファレンスほか
<建物高さ>
約97m
<竣工>
2024年12月(予定)

天神一丁目北14番街区ビル

 日本生命保険相互会社(以下、日本生命)と積水ハウス(株)が共同で進めているのが、昭和通り沿いの「福岡三栄ビル」(所有:積水ハウス)と、その南側に隣接する明治通り沿いの「日本生命福岡ビル」(所有:日本生命)の2棟のビルを解体して一体開発を行う「(仮称)天神一丁目北14番街区ビル」だ。

 主にオフィスや店舗が入居する予定で、近隣にある赤煉瓦文化館や天神地下街のような、重厚で風格のある佇まいを次世代に継承する外観デザインを採用。地下鉄コンコースに接続する明治通り側の地上地下立体広場や、昭和通り側の地上広場には、ランドマークとなる壁面緑化や赤煉瓦文化館をモチーフとしたクラシカルな化粧壁、高さ8m以上のシンボルツリーなどを配置し、憩いや風格のある広場空間を創出していくとしている。

 さらに、明治通りから昭和通りをつなぐ新たな都市計画道路天神通線と⼀体となった幅員8mのゆとりあるプロムナード(歩行者空間)を形成するほか、地上から地下までつながる壁面緑化を配置。緑と相性の良いレンガ積の列柱やプロムナードに面したカフェ、ベンチの配置などにより、来街者やオフィスワーカーが憩い、楽しめる空間を創出する。

 同ビルの設計は(株)久米設計が担当し、施工は(株)大林組が担当する予定。21年12月に天神BBBの適用を受けており、竣工は25年3月を予定している。

天神一丁目北14番街区ビル

天神一丁目北14番街区ビル

<敷地面積>
約3,050m2
<延床面積>
約3万9,300m2
<規模>
地上18階・塔屋2階・地下2階建
<用途>
事務所、店舗など
<建物高さ>
約88m
<竣工>
2025年3月(予定)

天神1-7計画

 天神1丁目のイムズ跡地では、三菱地所による「(仮称)天神1-7計画」が進んでいる。

 22年8月に発表された再開発計画の概要では、都市と自然が調和した都市空間の形成を目指し、建物外装には九州産材のCLT(直交集成板)のパネルと植栽を有機的に配置する。また、渡辺通りに面する敷地南西側の建物低層部にはV字柱と吹き抜け空間を整備することで、シンボリックかつランドマーク性の高いデザインを実現する。低層部および地下に商業施設を設けるほか、中層部はオフィス、高層部はホテルとして活用する。

 また、敷地南側には、渡辺通りと福岡市役所西側ふれあい広場とをつなぐ約500m2の地上広場や、天神地下街とつながる敷地西側には約300m2の地下広場を整備するほか、敷地北東側にはシンボリックな緑化柱を配した地上広場を整備。建物低層部には植栽と合わせてベンチなどの休憩施設を設けることで、人々の憩いの空間の創出にも寄与する。

 同計画は、22年8月に天神BBBの認定を受けているほか、市が推進する「感染症対応シティ」や「Fukuoka Art Next」などにも寄与する方針で、今年7月の着工を経て、26年3月の竣工を予定。完成の暁には、イムズに替わる新たな天神のランドマークとなることが期待される。

(仮称)天神1-7計画

(仮称)天神1-7計画

<敷地面積>
約4,640m2
<延床面積>
約7万4,020m2
<規模>
地上20階・塔屋1階・地下4階建
<用途>
事務所、ホテル、店舗、駐車場
<建物高さ>
約91m
<竣工>
2026年3月(予定)

(つづく)

【坂田 憲治】

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