社会のために物言う企業経営者~日本の未来を担う子どもたちのために(後)
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(株)ゆうネット
代表取締役 堤 猛 氏家づくり、リフォームに関する情報提供を行う(株)ゆうネット代表取締役・堤猛氏は、地元紙をはじめ全国の60を超える新聞に、子どもに対する新型コロナ予防ワクチン接種についての意見広告を掲載した。大きな反響を呼び、全国の心ある市民から集まった寄付金は総額で約3億円。広告掲載は子を持つ親の1人として、企業経営者として、何ができるのか考えたうえでの決断だった。企業経営と公益を両立させながら、社会貢献を行う経営者の在り方について堤氏に話を聞いた。
郷土愛から物言う経営者に(つづき)
──堤さんの意見広告は、データがわかりやすく掲載されており、知らないことがたくさん書かれていて驚きました。
堤 テレビや新聞では、「コロナの恐怖」など、感情ばかりが煽り立てられていて、正確なデータや、ワクチンの被害の実態はほとんど無視されていた状態ですからね。メリットと同時にデメリットも表記する「両論併記」という報道の鉄則も守られておらず、世間の皆さんが、ワクチン接種について冷静に考えるための材料が提供されていなかったのです。
ですから、まずは、多くの方々に「事実」を知っていただくことを目的とし、厚労省が公開している情報をグラフ化しただけの「事実広告」として構成することにしました。
文章を書くことには非常に苦労しましたが、この広告は、全国で大きな反響を呼びました。当初は自腹で出稿していたのですが、寄付金のお申し出をいただくようになり、次第に多くの方々の思いが集まっていきました。
お1人で広告費用の全額を拠出される方もいらっしゃいましたし、「お孫さんのために」と定期預金から寄付してくれた方もいらっしゃいました。ママ友さんのネットワークで、1口1,000円の寄付を呼びかけてくれ、300人以上の賛同者を集めて、地元紙掲載を実現された主婦の方もいらっしゃいます。
私の活動を取り上げてくれる大手週刊誌も現れて、最終的に3億円もの寄付金によって全国60紙に掲載することができました。
すると、意見広告の活動と同時期に、テレビや新聞の論調が接種勧奨の一辺倒から両論併記へと修正されはじめ、「リスクとベネフィットについて家族で話し合うこと」といった文言が見られるなど変化していきました。その結果、5歳~11歳の子どもの接種率については18%程度と、他の年齢層に比べて大幅に低い水準にとどめることができたと思っています。
新聞広告そのものは、当社の事業の延長線上にあることでしたから、何か特別なことをしたわけではありませんが、私自身は、たった1人で思い立った取り組みが、多くの方のご賛同をいただきながら、次第に全国的な展開になっていき、気がついたときには「物いう経営者」になっていたという感覚ですね。
常に公益を意識し、自身の信念に誠実に
──強い意見を発信されたことで、ご自身のビジネスに影響はありましたか?
堤 世間の風圧も強い時期でしたから、最初は、ゆうネットとして広告出稿することで、よからぬ風評が立つのではないかと危惧する意見が、社員から上がっていました。
しかし、広告掲載後、論理的な反論や批判を受けることはなく、それどころか、「よくぞ広告を出してくださいました」というご支持の声を数多くいただくことになりました。
想像していた以上に、賛同してくださる方が大勢いらっしゃったのだと驚きましたし、これまで、経営者が社会に対する「意見」など発信する必要はない、それはリスクにつながると考えてきたことは、私の単なる思い込みに過ぎなかったのだと思い直し、背中を押されるような感覚になりました。
故郷に育てられてきたことに対する感謝や愛着心が、勇気に変わったのだと思いますし、なにより、会社のことを思って支えてくれている社員の理解があってこそ、実現したことです。今でも本当に感謝しています。
また、「これはおかしい」と感じたことを、自分の胸のなかだけに留めるのではなく、公の問題として誠実に発信することで、同じ違和感を抱いていた多くの方々の思いと出会うことができました。
このことは、自分が行ってきた事業のやり方と、根底ではそう変わらないもので、経営者である自分にとっては、自然なかたちだったのだと、今振り返って思います。
──公の問題として物を言うからこそ、賛同者も現れるということですね。
堤 そうですね。大声でわがままを叫ぶだけでは、誰も聞いてくれませんし、ついてきてもくれません。自分が大事にしている地元や、身近な誰かに対する実感のこもった思いを起点にして、そこに「公の問題」が起きていると捉えるからこそ、公の一員である自分にできることをしなければいけないと感じるわけです。逆に、そこがなければ、大それたことはできないとも思います。
事業においても、私は、自社だけが儲かればいいという考えでやってきたことはありませんでした。いつも公益を意識して、お客さまと取引先の利益になり、当社が行うべきだと確信した事業やサービスしか行ってきませんでしたし、その思いは社員とも共有しています。
意見広告においても、それは同じです。この意見広告を掲載することが、世の中のためになり、今、これに取り組むことが、自分や自分の化身でもある会社にとっての社会的使命なのだという確信があったからこそ、ひた走りました。
さまざまなリスクも考慮しましたが、やはり、この確信があったために、信念も揺らぐことなくやり通せたのだと思いますし、同時に、多くのご賛同をいただいた理由でもあると思います。
──今後の展開についてお聞かせください。
堤 私は、何ら特別な能力をもった存在ではありませんし、地元の八女を愛してやまない1人の商売人にすぎません。簡単にいえば、日本の未来を担う子どもや若者たちに降りかかる前代未聞の出来事を、とても黙って見てはいられなかったというだけの話です。
ただ、自分はこの故郷に生かされてきたのだ、という気持ちがある限り、この先も、もし何らかの出来事が起きたときには、再び「物言う経営者」として、そのときの自分がとれる行動をとるのではないかと思います。
そして、こんな自分の姿を、記憶の片隅にでも残してくれる子どもたち、若者たちがどこかにいてくれたのなら、いつかそれは、同じ思いの流れる、違う姿の勇気として、花開くことになるかもしれません。そんな未来を彩る1人でいたいと思いながら、今後も、信念に対して誠実に邁進していきたいと考えています。
(了)
【取材:近藤将勝、文:泉美木蘭】
<COMPANY INFORMATION>
(株)ゆうネット
代 表:堤 猛
所在地:福岡市中央区天神4-1-17
設 立:2014年8月
資本金:9,000万円
TEL:092-715-6518
URL:https://ykn.jp
<プロフィール>
堤 猛(つつみ・たけし)
1974年生まれ。福岡県八女市出身。明治大学政治経済学部卒。住宅リフォーム会社勤務を経て(株)ゆうネット設立。2018年皇后(現・上皇后)陛下に拝謁、紺綬褒章を受章。著書に『60分でわかる!建築家とつくる「いい家」づくりの教科書』『「超簡単」60分でわかる!リフォーム・外壁塗装の教科書』。法人名
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