2024年05月05日( 日 )

『脊振の自然に魅せられて』「春の兆しを求めて」(前)

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 今年の冬は、脊振にも雪がたくさん降り雪原の山歩きや、脊振でのスキーなど、脊振での冬を十分楽しめた。

 寒さも一段落し、2月末になると、山では早春の花が咲き始める頃と心はそぞろになる。
 2月27日(月)の平日なので登山者も少ないと山行きを決める。天気予報では気温も高くなり晴れマークであった。平日に山歩きができるのはシルバー族の特権であり、気ままに山を歩けるのはありがたいものである。

 脊振直下の林道は2年前の土砂崩れがいまだ復旧せず、他の林道へ迂回せざるを得ない。
 迂回しても余分な時間は5分足らずで、蛇行の多い林道を通るだけである。林道は車1台と通れる幅で離合できる場所が遠い。対向車が来ないことを祈りながら運転する。この日は脊振山直下の車谷ルートをマンサクの咲く谷:マンサク谷まで歩く予定だ。登山口近くに空き地に車を停め登山準備をする。

 登山口へ入ると、笹藪が20m四方何かに押しつぶされすべての笹が伏せていた。12月末の大雪で山は50㎝近い雪で覆われていた。雪の重みで笹が押しつぶされたのである。笹の葉が裏返しになり白い葉が光り、笹に押しつぶされ登山道は見えなくなっていた。登山道らしい笹藪に足を入れると道はぬかるみ、足場が悪い。ぬかるみは50mほど続いていた。

朝日にキラキラと輝く雪氷
朝日にキラキラと輝く雪氷

 15分ほど歩くと、沢沿いの休憩ポイントについた。ここに設置した小型道標(灌木に取り付けている)は12月初め、汚れをタワシで磨いた。かつ道標が目立つように蛍光テープをその下に巻いた。道標はきれいな状態であった。

 ザックを担ぎ直し、今日の目的の花:ホソバナコバイモの群生地へと足を向けた。ここから10分の距離である。大きな岩の側にザックを下ろす。カメラを手に腰を屈め、春を知らせる花、ホソバナコバイモを探す。この植物はユリ科で葉が3枚、百合の形状をした小さな花をつける。しばらく見回して、見慣れた3枚を発見した。さらに辺りを見回す。

そうそうと蕾をつけたホソバナコバイモ(細花小貝母:ユリ科)
そうそうと蕾をつけたホソバナコバイモ
(細花小貝母:ユリ科)

  「あった、あった」。米粒を大きくした様なかたちの蕾が朝日に照らされ輝いていた。地表から5㎝ほどの高さである。周辺をさらに見回すと、枯れた杉の葉の間にいくつも見ることができた。

 筆者は、昨年、右目に眼底出血が見つかり治療中である。このため、効き目である右目の視力がすっかり落ち、細かいピントが合わせづらくなった。デジタルカメラでフレームだけ確認し、液晶モニターを見ながらカメラ任せで撮影した。

 撮影も一息つき休んでいると、1人の男性登山者がやってきた。1月に雪の脊振で出会った I 氏であった。彼は脊振山系を、くまなく歩いて回っている。筆者は彼を「脊振の放浪者」と名付けている。「よく会うね」と2人で話を始めた。彼はザックに GPS機器のガーミンを携帯している。

ヤブツバキの落花 朝日に輝いてきれいでした
ヤブツバキの落花 朝日に輝いてきれいでした

 筆者もレスキューポイント設置事業時に必要なので「脊振の自然を愛する会」で購入した。筆者が購入したのはスマートフォン同様、操作は液晶のタッチパネル式である。タッチパネルに慣れていない筆者には使いづらい。彼の携帯しているのは1つ前のアナログ式で、冬も手袋をしたまま操作ボタンを押せるので便利。現在地さえわかればいいので国道地理院地図と並行して使っているらしい。使用時間も15時間もつので便利だという。

 パソコンも熟知しているようだった。年齢は筆者より少し若い74歳である。彼のもつスキルは為になった。筆者は今後、彼を「GPSおじさん」と呼ぶことにした。住まいも福岡市内の筆者の隣の区である。15分ほど彼と話をした。彼は縦走路の方へ登って行った。筆者は、さらにここで撮影を続けた。

(つづく)

脊振の自然を愛する会
代表 池田友行

(後)

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