2024年11月01日( 金 )

李強中国総理 新経済戦略を打ち出す

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中国経済 イメージ    中国政府は年に一度の全国人民代表大会で、2023年のGDP成長率を2022年の3%から5%に引き上げるとしたが、中国の民間企業は概ねこの数字に期待薄である。その理由は、経済回復への包括的な刺激策の発表を強く望んでいたなかで、李克強前総理の政府活動報告でも李強新総理の記者会見でも、中国経済を救う処方が出なかったためである。 

 2023年の中国経済はどうなるのか、といった不安感情が広がっている。

 2月に入り、中国最大のコンテナ埠頭である上海の洋山港で空コンテナが大量に滞留した。この港は2022年、輸出を目指す各社がコンテナを奪い合い、欧米向けの航路の運賃が50%以上値上がりするほどだった。

 洋山港がこのような状態に陥った理由は単純なものだ。2022年の注文分を今年1月までにすべてさばいた上、2022年はコロナ規制で中国製品の納期が大幅に遅れたことで各国とも2023年度は注文先を東南アジアなどほかの国や地域に切り替えたので、中国企業は今年2月から受注が止まった。この結果、輸出が大幅に減ったのである。

 アメリカ通商代表部の最新のまとめでは、今年2月の中国からの輸入量は2022年同月比で26%減った。「世界は中国が必要」というこれまでの自信が、ここ2カ月の輸出から過去にない打撃を受け始めたようである。

 北京や上海で複数の民間企業に取材したところ、2023年は2022年より厳しくなるとの見方が大勢を占めていた。3年間にわたるコロナ禍で各社とも資金やたくわえが尽き果て、新しい設備を買って生産を立て直すこともなくなった。経済の回復も遅く国内外で注文が減り、2023年が生き残る術を探ることが最重要課題となっている。

 中国はもう何十年も、不動産、IT、金融が3本柱として急速な経済成長をはたしてきた。しかし3年間のコロナ禍でこの3本がすべて傾いた。

 今回の全人代でもアフターコロナにおける包括的な経済の再建策が掲げられなかったことで、政府には経済成長を刺激する材料や景気回復への起爆剤はもうない、との心配感が民間企業に広まっている。

中国経済はどうなるのか

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 李強総理は就任後初めての地方への訪問先として、製造業の重要拠点である湖南省を選んだ。鉄道車両メーカーの中車株洲、自動車メーカーのBYD、中国鉄建重工、藍思科技(レンズ・テクノロジー)などを視察し、質の高い発展という優先業務をしっかり捉え、経済成長の主軸を実体経済に据え続け、先進的製造業の成長に取り組み、ハイテク製造も推進して、近代的な産業体系の整備を急ぐようにと強調した。李強総理は、先進的製造業を伸ばすにはイノベーションや人材が頼りであり、企業は優れた技術者の養成や採用、活用に努め、核心的技術や主要技術、装備の開発を急ぎ、モノがいえる製品や技術を生み出すべきだと言った。技術イノベーションの価値や生命力を活用して、産学連携により十分に融合させ、製品規格や質の向上を進め、外観デザインも改善して、製品イノベーションによるマーケットニーズの開拓を目指すとのことである。

 また李強総理は、製造業を初めとする実体経済が中国経済の土台であり、国内外の情勢が複雑化し大きく変化するにつれて中国の製造業が岐路に立だされるなか、製造業を守るという決意を揺るがせず、一段と強いものにしていくべきだと指摘した。製造業のハイテク化やスマート化、エコ化を軸に据え、戦略的な取り組みに力を入れ、ハイレベルな技術を一本立ちさせて、従来型製造業の改良や戦略的新興産業を育成し、構成や全体的発展を堅持し、製造から創造へ、スピードから質へ、製品からブランドへという転換を急ぐべきという。また市場化、法治化、国際化したビジネス環境をつくり、先進製造業の支援を目指す政策を講じてより多くの資源を注ぐことで、成長につながる収益構造としていくべきだとも述べた。

 製造業が中国経済の土台だ、と初めて強調したことで、「製造業立国」という経済成長の新たな戦略やアイデアが示された。

 釣魚台国賓館で3月26日に行われた「2023年中国発展フォーラム」で、重慶市の黄奇帆元市長が演説のなかで「ここ数年間、ベトナムや夕イに進出した企業の60%が中国企業で、それもほとんどが民間企業である。生産拠点を移した商品は主に、1990年代に中国沿海部での労働集約型による原料加工や大規模な貿易をした軽工業品だ」と述べた。

 黄元市長は、「過去3度の産業革命は、末端がみな欧米の発明によるものであり、他者が発明して我々が生産をした。しかし、ATIを代表とする4度目の産業革命が訪れており、最終製品のなかでいくつか中国発明の物部あれば、産業チェーンの主導権を握ったことになる」と見ている。

 黄元市長は中国が産業チェーンを付加価値のあるものにするのに必要な3点を挙げた。それは、(1)産業チェーンの弱みを補い、資本を埋めることで技術的進歩をはたすこと、(2)大手製造業あるいは受託メーカーを育て、できればアップルのような川上側の企業とする、(3)第4次産業革命の技術から最終製品を生み出す、といったことである。

 一方で産業チェーンを整備するには、産業チェーン構築の主導権を握り、開放をさらに拡大し、外国資本を導入することが必要だ。よって新たに就任した丁薛祥副総理は、「2023年中国発展フォーラム」で習近平主席の祝辞を読み上げた際に、「対外開放は中国の基本的国策で、現代中国を象徴するものだ。中国市場参入も引き続き拡大し、ビジネス環境を全面改良し、外国企業に国民同様の待遇を施し、一段と外国資本を導入し活用していく。そして高規格な国際的貿易ルールと結びつけ、ルールや規制、管理、規格などの制度的開放も拡大し、一段と高い対外開放を進めてよりハイレベルな開放型の経済体制を築き、世界の発展や繁栄に力を注いでいく」と強調した。

 また丁副総理は、中国から撤退という動きがみられることについて「引き留めに向けてさらなる市場の開放などを約束した上、新たな企業の誘致を進めることを当然望む。ただし、外国企業が安らぎを感じるビジネス環境を築くことが何より大切だ」と述べた。


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