2024年05月14日( 火 )

若手が育つ独自の環境、「絶対品質」のため社内コラボも

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ
法人情報へ

(株)アクティス

アクティス

継手工事の老舗

 「私たちの業界は、職人の高齢化が問題となっています。ですが当社ではありがたいことに、たくさんの若手社員が活躍しています」──と(株)アクティスの河村貴夫社長は話す。

 「継手創造企業」と掲げるように、同社は鉄筋と鉄筋をつなぐ「継手工事」を担う企業。具体的には、マンションや病院・学校といった施設の鉄筋継手工事をはじめ、東京メトロやJR東北新幹線などの鉄道レールの継手や保守工事を手がけている。継手メーカーとして、高強度鉄筋専門継手「3CW工法」という日本初の技術を開発したほか、天然ガスを使った「エコスピード工法」という新しいガス圧接工法を取り入れたりと、技術革新を推し進めながら成長を続ける今注目の企業の1社だ。

 福岡の本社のほか、横浜2営業所、函館1営業所の全4拠点体制で、社員は50名ほどを抱える。ここ数年は、とくに人材育成に注力しているだけあって、若手が活躍し、離職率も低いという。では、具体的にはどのような対策を行っているのだろうか。

セクショナリズムを打破

(株)アクティス ​​​​​​​代表取締役社長 河村 貴夫 氏
(株)アクティス
代表取締役社長 河村 貴夫 氏

    まず手を付けたのは、働く環境の見直しだったという。ヒントは同社の「絶対品質」という理念に隠されていた。「絶対品質」を文字通り読み取れば、「アクティスでしかなし得ない高い技術を提供すること」なのだが、河村社長に言わせれば「絶対品質というのは、あくまで結果としてそうであるべきということ。それはもちろんなのですが、大事なのは、絶対品質を提供する人なのです」という。

 「鉄道の仕事は責任がともないますし、絶対に鉄道を止めるようなことがあってはいけないので、社員たちのモチベーションも高い。ただその反面、休暇が取りにくく、体調を崩してしまうというケースも起こりかねません。まずはそこを改善しないことには、絶対品質はあり得ないと考えています」(河村社長)。

 つまり、新人もベテランも関係なく、全社員が自分のもてるスキルを100%現場で発揮できるようにすることこそが絶対品質というわけだ。近年はよりその意識改革を掲げ、各々のパフォーマンスを最大限に引き出し、生産性を上げることにつながっているという。

 次に手を付けたのが、情報共有の活発化だった。以前はセクショナリズムが強かったため、各営業所同士でコミュニケーションを取る機会は少なかった。しかし、生産性を上げるためには各営業所の連携が必須と考えた河村社長は、チャットアプリなどオンラインツールを駆使し、営業所同士の交流を密にするよう環境を整備した。

 営業所それぞれで繁忙期などが異なるため、忙しくなる時期にはほかの拠点から人員を補充するなどして、効率的に経営資源をシェアするという目的もある。たとえば、函館は1月から3月までの冬季は閑散期となるため、函館の人員を他の営業所に派遣することもできる。

 「今や、『社内コラボ』が共通言語になっています。当社にはすばらしい社員がたくさんいますので、交通費をかけてでもほかの営業所と連携することは、とても有益なことなのです。そうすることで、自分の営業所だけではなく、会社全体の動きも把握できるようになります」(河村社長)。

新入社員研修の様子
新入社員研修の様子

アクティスの外国人採用

 最も難しかったのは採用面だが、試行錯誤した結果、高卒者や海外の人材を安定して獲得できているようだ。新卒者に対しては、何度も高校に出向き、リクルートカードを配りながら先生や生徒への認知を図るという地道な活動が身を結びつつある。さらにベトナム人社員も多く抱えているが、日本人と同じようにバリバリと働いているという。

 外国人の採用は簡単ではない。河村社長は自らベトナムの両親を訪ね、仕事内容や日本での生活について、じっくり話して理解してもらうことを優先。「まずは家族に当社のファンになってもらえるよう、しっかりコミュニケーションをとっていきます。そうすると、もし本人が気持ち的に落ち込むことがあったとしても、家族の励ましで元気をもらえますからね」(河村社長)。

 そして、入社後には徹底したサポート体制で、一人前の職人に育て上げていく。座学や実務講習も充実しており、じっくり仕事に慣れていくことができる。勉強ばかりではモチベーションが下がりかねないが、この機会を活用して社内の仕様書や手順書の動画化を進めることとした。それらを若手に任せることで、中期的に業務の平準化を進めることにつながったほか、研修中のモチベーション維持にも貢献。さらに動画の制作過程では、自社の仕事への理解度を高めることにもつながっているという。

【外部ライター・モリカワカズノリ】


<COMPANY INFORMATION>
代 表:河村 貴夫
所在地:福岡県大野城市仲畑4-2-38
設 立:1977年2月
資本金:1,000万円
TEL:092-501-5963
URL:http://www.aqtis.biz

月刊誌 I・Bまちづくりに記事を書きませんか?

福岡のまちに関すること、再開発に関すること、建設・不動産業界に関することなどをテーマにオリジナル記事を執筆いただける方を募集しております。

記事の内容は、インタビュー、エリア紹介、業界の課題、統計情報の分析などです。詳しくは掲載実績をご参照ください。

企画から取材、写真撮影、執筆までできる方を募集しております。また、こちらから内容をオーダーすることもございます。報酬は1記事1万円程度から。現在、業界に身を置いている方や趣味で再開発に興味がある方なども大歓迎です。

ご応募いただける場合は、こちらまで。その際、あらかじめ執筆した記事を添付いただけるとスムーズです。不明点ございましたらお気軽にお問い合わせください。(返信にお時間いただく可能性がございます)

関連記事