2024年05月20日( 月 )

団体一丸で業界に人材を呼び込む

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ
法人情報へ

西日本圧接業協同組合
理事長 松本 一彦 氏

働き方改革を進められない、板挟みの現状

西日本圧接業協同組合 理事長 松本一彦氏
西日本圧接業協同組合
理事長 松本 一彦 氏

    ──建設業界においては、5年間の猶予期間を経て来年4月からいよいよ働き方改革関連法の適用が開始されますが、この「2024年問題」の影響については、どのように考えておられますか。

 松本 我々圧接工事業界としても、2024年問題の影響は非常に大きいと捉えております。厚生労働省の取り組みとして、来年4月からは時間外労働時間に罰則付きで月45時間の上限が設けられることになるわけですが、その一方で、国土交通省は建設業の働き方改革を推進する完全週休2日制や月給制度導入などの若年者の採用と雇用の促進を行っています。

 2つの省庁がそれぞれ違う角度から、労働者の環境改善を目的に法改正と指導をされています。従来の建設現場では日曜日だけ休みの工程となっており、週休1日型で6日稼働ですが、週休2日型現場では5日稼働となります。つまり、これまで6日間でやっていた工事を5日間で終わらせ、なおかつ残業もできないということになるわけです。

 となれば、結局は現場での生産性を上げていかなければならないので、ユニット工法やプレハブ工法など省人化工法も増加していますが、我々の手がけている鉄筋ガス圧接は資格を必要とする専門工事であり、生産性を上げるためには、どうしても人海戦術に頼るしか方法がありません。

 しかし、人海戦術に頼ろうにも、ご承知のように業界では、若い方が入って来ず、高齢者の離職が進んでいくなど、人手不足の状況が深刻化しています。つまり、働き方改革を進めるためには人手を必要とする一方で、業界の人手不足を解消するために、若手が入ってきやすい魅力ある業界にしていこうとすると、働き方改革を推進しなければならない──と、“卵が先か鶏が先か”のような非常にもどかしい状況です。そうした板挟みの状況下で、働き方改革を進めざるを得ない2024年問題の到来は、我々の業界にとっては本当に頭が痛い、とても大きな問題だと捉えています。

そろわない足並み、大手と地場で広がる格差

 ──こうした働き方改革などの大きな問題に対しては、建設業界全体で足並みをそろえて取り組んでいくことが必要なのでしょうが、なかなかそうもいかないようですね。

 松本 週休2日制にしても、長時間労働の是正にしても、(一社)日本建設業連合会(日建連)に加盟しているような全国大手のゼネコンであれば取り組んでいけるのでしょうが、地場の中小ゼネコンではまだまだ各社の温度差があり、建設業界が大手と地場とで二分化している状況です。

 5年ほど前から言われている社会保険の未加入問題のほか、CCUS(建設キャリアアップシステム)にしても、地場ゼネコンではきちんと考慮して対応しているところは、まだそれほど多くありません。それは単価にも反映されており、我々の圧接工事でいえば大手と地場との単価が1割くらい違ってきます。とはいえ、大手の工事だけ請けて、地場の工事は請けないというわけにはいきません。

 長時間労働の是正についても、すべての作業所が国交省4週8休プログラム工程を法律化できれば、工程に追われた土曜・休日出勤もなくなり残業も減少できますが、民間発注が大半を占める建築現場では難しい問題でしょう。

 当社(栄進工業(株))では、現在の4週6休の月給体制から、4週7休ないし8休の体制を段階的に導入していくことを予定していますが、ここでも大手と地場との差があります。大手の現場は4週8休に準じたスケジュールになっていますが、地場や短工期の現場だとそうはいきません。すると、現場が閉所しない限り、我々も出ざるを得ませんし、結果として4週8休に向けてのシフトがなかなか進まず、足踏み状態が続いています。

 とはいえ、当社では可能な範囲で長時間労働の是正には取り組んでおり、現場のニーズに合わせた人数を出して、工程内に収めて、残業を減らすことを基本に、毎月の残業管理と健康管理のフォローはきちんと行っています。残業時間が月45時間を超えたら指導を行い、翌月にはなくすという取り組みなのですが、こうした残業管理を業界内の各社が行っていく必要があると思います。

外国人に若手入職者など、業界に人を呼び込むために

 ──業界内にも多くの外国人技能実習生がいると思いますが、19年の制度創設直後から特定技能1号で働く外国人労働者が在留期限を迎える、もう1つの「2024年問題」もあります。

 松本 当社でも遅ればせながら、初めての外国人技能実習生をミャンマーから入れようとしていますが、日本人の若手入職者が年々減っていっている状況下で、今や外国人技能実習生は建設業界にとって欠かせない存在となっています。ただし、国の施策による在留期限の問題や、送り出す側の国際情勢の問題、そして受け入れる企業側の体制の問題など、いろいろと課題も多いと思いますので、業界全体の人手不足の解消策を、外国人技能実習生だけに頼るわけにはいきません。外国人技能実習生を受け入れるための環境整備をきちんと進めていく一方で、日本人の若手を呼び込む努力も絶えず続けていかなければならないと考えています。

 ──西日本圧接業協同組合(西圧協)においても、以前から業界に若手を呼び込もうと、さまざまな取り組みを行っています。

 松本 将来的な担い手を確保していくことは、業界団体としての大きな役割の1つだと考えており、西圧協でも以前から九州地方整備局とも連携しながら、高校などでの出前講座や現場見学会の実施、ガス圧接DVDの制作・配布などを行っています。ですが、残念ながら今のところは、活動量に見合うだけの大きな効果は生まれていません。この点については、特効薬に期待するのではなく、まずは中高生やその親御さんに業界のことを知ってもらうために、あきらめず中長期的に業界の魅力を発信し続けていくことが大事だと考えています。

 天神ビッグバンや博多コネクティッドの再開発ビル、熊本・菊陽町のTSMCをはじめとする半導体関連の大規模工場など、都市を形成するほとんどの建築構造物には圧接工事を主とし、溶接工法や機械式継手が用いられており、鉄筋継手工事業を含めた建設業界は、建物やインフラなどの施工を通じてまちをつくっていくことで社会に貢献する、非常に重要な役割を担っている存在だと自負しております。

 なかなか進まない働き方改革や人手不足の解消に向けた取り組みなど、乗り越えなければならない課題は山積していますが、西圧協においても会員企業同士の横のつながりなども強化しながら、一丸となって対処していきたいと思います。

【聞き手:内山 義之/文・構成:坂田 憲治】


<プロフィール>
松本 一彦
(まつもと・かずひこ)
1966年1月、熊本県天草市生まれ。84年3月、熊本県立天草高等学校卒業。同年4月、栄進工業(株)に入社。2006年3月に同社統括営業部長、10年3月に専務取締役を歴任し、13年3月に代表取締役に就任。社外でも、西日本圧接業協同組合の理事長(12年5月就任)や、全国圧接業協同組合連合会の副会長(22年5月就任)などの要職を務める。

月刊誌 I・Bまちづくりに記事を書きませんか?

福岡のまちに関すること、再開発に関すること、建設・不動産業界に関することなどをテーマにオリジナル記事を執筆いただける方を募集しております。

記事の内容は、インタビュー、エリア紹介、業界の課題、統計情報の分析などです。詳しくは掲載実績をご参照ください。

企画から取材、写真撮影、執筆までできる方を募集しております。また、こちらから内容をオーダーすることもございます。報酬は1記事1万円程度から。現在、業界に身を置いている方や趣味で再開発に興味がある方なども大歓迎です。

ご応募いただける場合は、こちらまで。その際、あらかじめ執筆した記事を添付いただけるとスムーズです。不明点ございましたらお気軽にお問い合わせください。(返信にお時間いただく可能性がございます)

関連記事