2024年05月10日( 金 )

大胆に攻めたコロナ禍の経営戦略 30店舗を超える新出店と継続した採用

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ
法人情報へ

(株)タケノ

「必ず終わる」と前に進んだ
コロナ禍の3年

(株)タケノ 竹野孔 代表取締役社長
(株)タケノ
竹野 孔 代表取締役社長

    居酒屋「竹乃屋」など50店舗以上の飲食店を運営する(株)タケノ。竹野孔代表取締役社長は1976年、大学1年生のときに焼鳥屋を始め、79年に法人化、それ以来、40年以上にわたって事業を拡大してきた。

 竹乃屋で人気の看板メニューが「博多ぐるぐるとりかわ」。鶏皮はブームを経て博多グルメとして定着しており、同社は後発参入ながらも、その分ブランディングに注力してきた。「博多ぐるぐるとりかわ」は、工場を3交代制でフル活動させて、月に80万本を生産している。焼いて寝かせること72時間、人の手で1本1本刺し、手間暇かけてつくりあげる手法とその味は、変化が早い飲食業界の流れに反して、ずっと変わらない。

博多ぐるぐるとりかわ
博多ぐるぐるとりかわ

    事業を順調に展開してきたものの、2020年に突如新型コロナウイルス感染症に襲われた。緊急事態宣言の発令と政府からの行動制限・外出自粛要請を受け、多くの店舗が一時休業を余儀なくされた。しかし「必ず終わる、だからこそ攻める」と、コロナ禍中の約3年で、33店舗(リニューアルオープンを含む)を出店する。周囲から多くの反対に遭い、福岡空港店と博多駅デイトス店では、オープン準備中に内装業者からも心配された。それでも、竹野社長の方針は揺らがなかった。新店舗出店の傍ら、テイクアウトはもちろん、通販サイトの立ち上げ、冷凍自販機設置、全国へ催事出店など、攻めの対策を講じてきた。

 「実は新しく立ち上げた事業のほとんどは、コロナ前から考えていたことでした。すでに頭のなかにあったので、すぐにかたちにできたのです。先の見通しが立たないなかで意識したことは、意思決定を早急にすることでした。出店はもちろんですが、撤退も同じです。機を逃すと損失も膨れ上がります。コロナは必ず終わる、と未来を基準に考えてきました」と竹野社長は振り返る。

 23年4月時点で、店舗数は58店。売上高は19年に34億円であったのが、20年に18億円と落ち込んだものの、21年26億円、22年46億円と増収を続け、コロナ以前よりも伸ばしている。

福岡空港店
福岡空港店

アフターコロナの波に飛び乗る

 「仕事はすべて、ご縁でやってきた」という竹野社長。新規出店もその他の新企画も、人が運んでくれて動き出すそうだ。また、事業計画は単年ベースで立て、目標をつくって無理をするよりも結果として目標を達成するというスタイルを理想とする。変化のスピードが早い現代では中長期的な計画の実現は難しくなっており、柔軟に軌道修正することを前提とした方がよいとの姿勢だ。

 アフターコロナにおいて、福岡では博多と天神から賑わいを取り戻している。外国人観光客も戻り、新しい商談が次々と行われている。同社も、長崎、大阪など県外への出店、九州初都市型ワイナリー出店、日本ハムとのコラボレーション商品、FC第1号の出店など、人の動きに先駆けて事業を動かしている。

 「3年続いたコロナで、一瞬だけ弱気になったことがあります。しかしそれ以上に、今できることを真剣に考えて、実行してきました。飲食業界全体が大打撃を受けており、従業員にも当然不安があったと思います。振り返れば、正解が分からない意思決定の連続でした。ご縁を紡いで前を向いてきましたので、その成果を今からしっかり出していきたい」と竹野社長。

 今後、新規店舗出店はもちろん、通販事業の拡大、FC事業の拡大、それらに対応するため、第2工場の設立などを進める予定である。スクラップ&ビルドを進めながら、先行き不透明ななかでも、取捨選択し力強く舵を取っていくという。コロナで攻めたことの答え合わせが、これから始まる。

採用を続けることで信用される企業に

生ワイン飲み比べ
生ワイン飲み比べ

    同社はコロナでも積極的に採用してきた。新卒採用数は、19年31名、20年42名、21年16名、22年16名、23年26名と推移している。採用を続けることで、人材を送り出す調理系の学校との信頼関係を構築した。入社後は、外部の人材育成システムも利用し、指定の講座を受けて合格するまで研修を行っている。それらは人事評価にも反映されてくるので、全員が真剣に取り組んでいる。

 ほか、社内コンテストで3カ月限定の季節メニューを募集し、採用者には売上の5%をバックするなど、前向きに行動したくなるような仕組みが用意されている。業態も店舗数も多く、頑張ればその分誰でも幹部になるチャンスがある。生産から創作までできる面白い仕事であり、それを大変と思うか、楽しいと前向きに取るかで、未来はまったく別のものになる。

 現在、社員アルバイトを含めると従業員は約1,200人。コロナ以降、人手不足が続いているが、これは労働集約型の業種が常時抱える課題である。給与などの条件をよくする、定休日を設けるなど福利厚生面で工夫と配慮をしつつ、コスト面では電気代や食材費の高騰にも対応していかねばならない。QRコードのオーダーシステム、非接触セルフレジの導入も進めながら負担軽減を図っている。今年は、早急に第2工場を建設する予定で、さらに雇用を増やす必要がある。

 「定年後も、70歳まで働いてくれる人もいます。理由はいろいろあると思いますが、結局のところ、この仕事が好きなのではないかと思いますね。『店は舞台、我々は役者、お客さまは観客』と、常日頃から社員には伝えています。役者になりきり、来てくれるお客さまに楽しんでもらうこと、元気になってもらうことが、我々の使命です」と竹野社長。これからの未来に向けて、前向きな挑戦を一緒に続ける仲間を募集している。


<COMPANY INFORMATION> 
代 表:竹野 孔
所在地:福岡市博多区博多駅南4-18-27
創 業:1976年8月
設 立:1979年4月
資本金:3,000万円
TEL:092-451-0078
URL:https://www.takeno.co.jp

<RECRUIT> 
募集職種:店長候補、ホールスタッフ、
     キッチンスタッフ
応募資格:飲食店経験者(バイト可)歓迎、
     未経験も可
採用実績:2023年度/26人
採用予定:30人程度
問合せ先:092-451-0078
採用担当:人事総務課


<プロフィール> 
竹野 孔
(たけの・とおる)
1955年6月8日福岡市生まれ、76年大学1年生のとき、父親が食堂を廃業したことをきっけかに、自身で焼鳥屋を創業。79年に法人化。当初は苦労をしたものの、その後、順調に事業を拡大。居酒屋をはじめ、肉バルなど約50店舗を展開。趣味はハーレーでのツーリング。

関連記事