• このエントリーをはてなブックマークに追加
2018年04月05日 07:02

(株)アダル、武野重美会長が見た上海の「いま」(6)

上海行政の豹変

 上海市政府の豹変ぶりが武野社長に幸運をもたらした。もちろん、環境汚染撲滅の要因となる素材加工業の一掃政策は決定済みであったことは承知のこと。加えて、上海市政府は松江区の目覚ましい発展に直面して「工場開発区ではもったいない」と考えたのである。15年前に松江区を工場開発区に指定して10年前から工場進出をはたした。そこで得た土地利用権(50年間)の収入は莫大なものであっただろうと推察される。

 上海政府が次に考えたこと、欲を掻いたことは「『商業施設・商業地域』に指定すれば土地利用権が数倍高く売れる」という目算だ。写真を参照していただきたい。ショッピングモールの繁盛ぶりは一目瞭然である。日曜昼前ということもあり、飲食店は家族連れで満員であった。この松江区の商業施設の開発業者(デベロッパー)は、上海政府に工場用地よりも高い土地利用権を納めて(5倍ともいわれる)開発権利を取得したのである。

 福岡の一般的な中小企業の経営者からすれば、「上海という社会主義の大都会に、『民間不動産開発業者』などという業種があるのか!!」という素朴な疑問を抱かれることだろう。

 この松江区のモール開発業者は上海の至るところで同様の商業施設を運営しているそうだ。傑物企業の1つとして、上海政府へのパイプはかなりの要人クラスに食い込んでいるとか。上海市政府としても不動産ビジネスをめぐる処理に暗躍してくれる民間企業の存在は重宝がられるのである。不動産取引税の収入は上海市政府にとっても貴重なものなのだ。

不動産のツキは上海でも有効

 松江区の開発進展状況をかいつまんで説明した。読者は「それが野中社長とどういう風に関係があるの?」という素朴な疑問の念を抱かれるであろう。「大いに得した」というのが率直な回答である。まずこの経営者が、先程の浙江省に工場移転を決断したことはすでに述べた通りである。

 この社長はいろいろと思考を巡らせた。「売るべきか、もつべきか」を検討したが、現在の工場をある不動産業者に一括貸しすることにした。前述したように、スタートは本社機能ビルと2棟の工場であった。松江区の工場経営が順調であったから、新しい大型工場を建設できた。5年前のことである。この大型工場の存在が、今回の移転に大きく貢献することになる。

 一括で借り切る不動産業者は、すでに写真で見た通りに大型工場の小口化の間仕切りをして事務所用に用途転換を図っている。また一部ではショールームとしても活用し、40以上に分けて貸しだすそうだ。借り手はたくさんいるとか。武野社長の方には年間1億円の賃貸料支払いする契約を行った。それでもこの不動産業者側は十分にビジネスになるという。この賃収1億円は新工場建設の借入返済に充てるとか。返済原資があれば気分は楽である。

 武野社長は不動産には非常にツキがある人だ。日本でも、購入した土地が10倍以上値上がりして含み資産が膨張した。おかげで銀行に絶大な企業信用を確立した実績がある。松江区においても、工場再開発区から商業施設開発区において用途指定が変更されたことで不動産の価値が暴騰した。

 もし工場用地の又貸しを選択したとするなら、あまりメリットを得られなかったであろう。卓越した経営判断を積み重ね、さらに『不動産の価値の急騰』という後押しを得ながら利益を得ていくのである。こういう特技があれば必ずや経営は成功する。ほかの地方都市行政でも、移転しようとする業者を虎視眈々と狙っている

(つづく)

(株)データ・マックスが主催する「MAX倶楽部NEXT」では5月8日(火)午後5時から、データ・マックスセミナー室(福岡市博多区中洲中島町2-3福岡フジランドビル8F)にて(株)アダルの武野重美代表取締役会長の特別講演会を開催。
中国進出から20年、集大成として新たに開設する新工場への想いを語ってもらう。

参加申し込みはこちらをダウンロードしてプリントアウト、必要事項をご記入の上
FAX:092‐262‐3389
までお送りください。

 
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

     

トップニュース

2020年10月02日 07:00

筑紫野市が旧上下水道庁舎で 公募型プロポーザル「市民のために」NEW!

 2019年1月から新庁舎での行政サービスの提供を行っている筑紫野市だが、以前使われていた旧庁舎の今後の利活用の動向に注目が集まっている...

2020年10月02日 07:00

【国交省答申】激甚化する災害~港湾の防災・減災対策はソフト面でもNEW!

 国土交通省交通政策審議会は8月、「今後の港湾におけるハード・ソフト一体となった総合的な防災・減災対策のあり方(答申)」(以下、答申)を発表した...

2020年10月02日 07:00

唐戸商店街と学生が連携する地域事業~教育を通じた「まちづくり」(前)NEW!

 『私は2008年に下関市立大学に赴任しましたが、財政学と地域経済学を専攻していることから、何らかの地域活動を行いたいという思いを抱いていました。そのなかで、ご縁があ...

2020年10月02日 07:00

歴史・交通・人をつなぐ結節点~海峡都市下関市のこれから(3)NEW!

 終戦後の49年11月に、下関に本社を置いていた大洋漁業(現・マルハニチロ(株))が母体となり、プロ野球団「まるは球団」(後の大洋ホエールズ、現・横浜DeNAベイスタ...

2020年10月01日 18:09

生死の境界線(1)肺癌宣告

 筆者は毎年4月、適正健康検査(1日ドック)を受けてきた。かれこれ20年になるであろう。これまで致命的な勧告を受けたことはなかった。今年は新型コロナウイルスのため定期...

2020年10月01日 17:10

【IR福岡誘致特別連載9】海外投資企業にもっとも高評価なのは既存の交通インフラ網

 交通網は全国のIR(カジノを含む統合型シティリゾート)の候補地において、もっとも重要かつ不可欠であり、IR誘致開発事業の要である。その目的地までの集客力が重要であり...

2020年10月01日 16:28

新型コロナの防疫対策で世界の先頭を走る台湾と意見交換(1)

 2020台湾最新ビジネスセミナー「withコロナ時代‐日台で切り拓く新ビジネスチャンス」が9月15日、TKP品川カンファレンスセンターで開催された。今回のセミナーは...

2020年10月01日 15:17

42号店「三宅店」をオープン~唐揚げ専門店「博多とよ唐亭」

 本日、唐揚げのテイクアウト専門店「博多とよ唐亭」の新たな店舗「三宅店」がオープンした。同店の42号店で、南区エリアでは6店舗目となる...

2020年10月01日 15:12

【縄文道通信第48号】「今なぜ縄文道なのか」―縄文道 ユートピア論―縄文道――武士道――未来道―今も息づき未来に活かせる(後)

 前回で紹介した日本列島から生まれた普遍性の道と併せて4つの大和の道に触れる。この4つの道は、紀元前660年の日本の最初の天皇誕生以前に約1万4,000年にわたって形...

2020年10月01日 14:37

マンション管理のIT化推進 大和ライフネクストが「IT総会」実証実験

 大和ハウスグループの大和ライフネクスト株式会社(東京都港区、石﨑順子代表取締役社長)は、一般社団法人マンション管理業協会(以下、「マンション管理業協会」)が検討を進...

pagetop