2024年05月26日( 日 )

DXにより変わる企業の在り方 プラットフォームから革新を生み出す

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(株)INDUSTRIAL-X
取締役CSO 吉川 剛史 氏

 人口減少、地方と東京の格差拡大、円安による資材の高騰、外資による日本企業買収など、さまざまな要因が日本の産業に影響を与えている。DX推進支援を通して産業構造の変革を図る(株)INDUSTRIAL-Xの吉川剛史取締役CSO(最高戦略責任者)は、日本の産業が置かれた現状について、ブレークスルーを起こすか、戦略的に保護する必要があるとの認識を示す。DX活用により企業にどのような変化がもたらされているか、また同社のDXのプラットフォームについて話を聞いた。

DXの低コスト化=民主化
地方こそ活用すべき

 (株)INDUSTRIAL-X 取締役CSO 吉川剛史 氏
 (株)INDUSTRIAL-X
取締役CSO 吉川 剛史 氏

    吉川剛史氏は、第4次産業革命が進展するなか、従来のノウハウ、ルールや成功哲学が大きく変更を迫られる可能性があり、そのなかでDXの活用は都市と地方、大企業と中小企業の間の格差をなくす手段の1つになると強調する。格差解消にとどまらず、データ分析とAIの活用により従来とは異なる視点が持ち込まれることで、企業が成長と生産性の向上を同時に実現するチャンスにもなるという。

 企業のなかには、DXとAIの推進により高精度な予測を実現させ、無駄をなくし、社員のゆとりや働きがい、幸福度を向上させることに成功しているケースが出てきている。伊勢神宮の「おかげ横丁」にある創業150年以上の食堂では、天候やその他の要因の分析により来客数や客単価のほぼ正確な予測が可能となったことで、発注やシフトの無駄をなくし、売上の増加のみならず、食品ロスの削減や従業員の長時間労働の軽減を実現。SDGsに配慮しつつ生産性を大きく向上させた事例を挙げた。

 現在のDXの特徴として吉川氏が挙げるのが、そのいわば民主化だ。低コスト化により、DXの推進に大きな投資は不要となった。たとえば簡易なローコードのツールを使って自社で業務アプリケーションを開発・作成することも容易になった。

 AIは企業にとってハンディキャップをなくすドライバーであり、AIの進化を経営基盤の刷新に活用できる。一方、大手のシステムインテグレーターが地方まで十分にカバーできていないのが実情。地方では、物理的な拠点が限られるなかで、DXの重要性は高いにもかかわらずだ。

DX推進企業が集まる
プラットフォームを構築

DXのサービスおよびプラットフォームの連関図

 INDUSTRIAL-Xは民間の力で産業構造変革を実現するという壮大な目標を掲げる。関連のコンサルティング、コンセプト提供から採用・人材育成支援、ソリューション調達支援、DXアウトソーシングまでのサービスを提供し、顧客のDX推進を阻害する要素を1つひとつ除去する。

 同社の事業で注目されるのが、DXソリューションの共同利用型プラットフォーム「Resource Cloud」。これは企業1社1社が個別にDXを進めるよりも、他社が開発したソリューションを業界あるいは地域で共有しながらDXを進める方がよいとの考えに基づき構築された。サービスを利用したい企業とツールを開発し提供する企業が参加している。双方がマッチングをしたり、フィードバックを行ったりしながら、より良いサービスの共有を図る。たとえば、高知県で産官学が合同で取り組み、同社が監修したIoP(Internet of Plants)の事例では、広島の企業が活用することができるといった具合だ。

 同社は各ユーザーのニーズに合わせて、ツールだけでは解決できない点について伴走型で支援を行う。今後は導入支援や定着化支援などに力を入れるほか、コンテンツを拡充し、人的資源関係のサポートも始める予定。将来は資金調達機能を備えることも視野に入れている。また、中小企業診断士や税理士などの専門家に対してもコンテンツを紹介し、ネットワークを広げていく予定という。

 プラットフォームを通じて、ユーザー企業は自社開発しなくても効率的にサービスを利用できる。サービスを提供するベンダー企業は開発費の回収にもなる。また、同社は顧客を巻き込むことで、新たな成功事例をつくり出す。複数社の協業により、そのなかから新たなイノベーションが生まれるとも期待される。

 また、同社はDX推進をESG経営に役立てることも提唱しており、プラットフォームを通じてカーボンニュートラルなどESG要素も取り入れ、企業価値を高めるべく取り組んでいる。九州では、金融機関が産業振興の視点で融資や投資を行う傾向が他地域よりも強く見られると実感している。

災害対策で進む九州自治体のDX

    九州でも多くの顧客を抱える同社。九州の企業のDXに関する状況について、吉川氏は「関連の人材不足が顕著であり、採用支援を行っている。そもそも人材が豊富でないことから、顧客企業の比較的年配の社員がDXへの理解を深め、DXを普及させるエバンジェリストに変貌させることを提案し、研修なども行っている」と語る。

 顧客の業種では製造業のほか、農業や建設業の顧客も多いという。九州の農業について、データドリブンの普及が進んでおり、二酸化炭素の濃度など各環境データを測定して収穫の量や時期の予測を行う農家が増え、これらのサービスの他地域での横展開やカスタマイズしての再現が進んでいるという。

 九州では地震や水害など毎年のように自然災害に見舞われたこともあり、防災対策から自治体のDXがほかの地域よりも進んでいる。実際に、九州から高知の事例についての問い合わせも多く、九州の農業でもこうした産官学連携の取り組みが拡がるのではないかと考えている。

 建設業界などでも、DXを進めることで生産性を向上させる取り組みが進んでいる。多くの従業員は現場にいるが、現場作業の効率化や省力化を進めるほか、契約関連の書類作成やオフィスとの情報共有を現場でできるようにすることで、生産性をさらに高められると指摘する。

 今後、同社のDX推進の成功事例のノウハウが同社のネットワークを通してほかの地域や企業にも広がり、地方の経済活性化と持続可能な成長に貢献することが期待される。

【茅野 雅弘】


<COMPANY INFORMATION>
代 表:八子 知礼
所在地:東京都港区西新橋3-25-31
設 立:2019年4月
資本金:1億7,800万円
URL:https://industrial-x.jp


<プロフィール>
吉川 剛史
(よしかわ・たけふみ)
1966年生まれ、熊本県出身。早稲田大学卒業。NTT、日本オラクル(株)執行役員、(株)ユニクロ海外事業開発部長、COACH A(U.S.A) Inc. CEO、明豊ファシリティワークス(株)専務取締役などを経て、(株)Y’s Resonance 代表取締役社長。(株)INDUSTRIAL-X設立時よりアドバイザーを務める。

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