2024年05月20日( 月 )

持続的な森林経営、事業の集約化が必須(前)

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浮羽森林組合
代表理事組合長 岩佐 達郎 氏

浮羽森林組合 代表理事組合長 岩佐 達郎 氏

 全体として厳しい事業環境に置かれているといわれる林業だが、状況は地域によってさまざまで、一様に語ることはできない。うきは市と久留米市の森林を管轄する浮羽森林組合は、たとえば若年層の入職などといった点で健闘している。同組合の代表理事組合長・岩佐達郎氏に、組合の現状と今後の方向性について話を聞いた。

森林経営計画の策定率

 ──管轄エリアの森林の状況はいかがでしょうか。

 岩佐 浮羽森林組合は、うきは市と久留米市の森林を管轄エリアとし、管轄する森林面積は9,206ha(人工林面積は7,576ha)におよびます。そのなかで森林整備事業、林業・園芸資材の販売・修理サービス、行政との連携事業を展開しています。森林整備事業については、間伐や植林などの森林整備、原木の販売などを業務としています。

 当組合の大きな特徴としては、主伐採後の再造林面積がほぼ100%で、持続的な森林経営を行えていること、効率的な森林施業と保護により、森林の持つ多様な機能を発揮させることを目的とする森林経営計画の策定面積が管轄森林面積の6割以上(策定率)となっていることです。小規模分散の所有状況や世代交代、さらには価格の低迷や造林費用の負担が大きいことにより、策定率の全国平均は3~4割程度にとどまっていることと比較すれば、高水準といえます。

 うきは市域を中心に話をしますと、その森林面積は、市の面積の約半分となる約5,900haを占めますが、策定率は8割以上に上ります。この点から、うきは市とその周辺部は、比較的健全な森林の状態が保たれているといえそうです。それは、うきは市の山林の特徴の1つてある路網(森林内での作業に用いる道)の密度の高さからもうかがえます。密度が高いほど路網整備が進んでおり、作業効率の向上につながるのですが、全国平均の約24m/haに対し、うきは市は約100m以上/haと、4倍以上の規模となっています。

 このほか、うきは市には全国に63カ所しかない「森林セラピー基地」()があること、さらに浮羽森林組合が施業を委託されているうきは市有林は、持続可能な森林管理や環境配慮がなされていることを示す「森林認証」を得ていることも特徴となっています。

※健康増進やリラックスを目的とした包括的なプログラムを提供している地域 ^

県内製材品の3割を製造

 ──伐採された原木はどのような経路を経て、流通・利用されているのでしょうか。

 岩佐 大まかに分けると、伐採後まず原木市場と木質バイオマス工場に運ばれます。このうち、前者については福岡県森林組合連合会の「浮羽事業所」や、うきは市に隣接する大分県日田市の原木市場に運ばれ、そこで競りにかけられ幅広い地域に供給されます。そこから市内を含む製材所などに運ばれ加工されるのですが、うきは市には製材所が約20カ所存在し、福岡県内の製材品の3割程度を製造しています。製品もプレカットや集成材を含む構造材、羽柄材、フローリングやツーバイフォーパネルまで生産しており、家づくりに必要な製品の全般が生産されています。

 そのため、うきは市では地域木材の活用を推進しており、地域木材を活用した住宅を建てる場合には最大60万円を支援する補助金制度などが用意されています。地域木材の活用を積極化することにより、ブランド化や定住促進を図るとともに、地域経済への効果を期待した行政政策です。県産材利用は運搬・加工における温室効果ガス排出の抑制といったSDGsへの貢献や福岡県の森林整備を推進するものでもありますので、利用を検討いただければと思います。

機械化も進められている
機械化も進められている

(つづく)

【田中 直輝】


<INFORMATION>
代表理事組合長:岩佐 達郎
所在地:福岡県うきは市浮羽町朝田381-5
設 立:1941年3月
出資金:1億2,617万7,500円
TEL:0943-77-2158(本所)
URL:https://www.ukiha-forest.com/

(後)

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