空き家「予防」へ太宰府に根ざし取り組む(前)
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(一社)太宰府市空き家予防推進協議会
創設者 淀川 洋子 氏
代 表 片山 順一 氏全国に850万戸あるとされる空き家は今後、さらなる増加が懸念されている。その「予防」について、福岡県太宰府市で産官学と連携しながら、地に足を付けた取り組みを行っているのが、(一社)太宰府市空き家予防推進協議会である。その創設者である淀川洋子氏と代表の片山順一氏に話を聞いた。
空き家を「増やさない」
──空き家問題に取り組もうとされたのは、なぜでしょうか。
淀川 私はリフォーム業・イエノコト(株)の経営に携わっていますが、重視しているのは単なるハコ(住宅)づくりや改修ではなく、人々の暮らしの改善です。建築士のほか、暮らしの専門家である家事セラピスト、古民家鑑定士などさまざまな専門家が関わり、施主の暮らし方をすべて聞き取ったうえで、それぞれの家族に適した暮らしやすい提案を行っています。
また、「家事塾」(※1)や、モデルハウスの開放などを通じ、地域の方々との関係づくりにも力を入れてきました。そのなかで、現存する空き家の問題への対応ではなく、空き家を増やさない方策が必要と考えたのが、空き家問題へ本格的に取り組むきっかけとなりました。
片山 空き家問題に本格的に対処するためには産官学の連携が必要と考え、2018年6月に太宰府市空き家予防推進協議会を設立しました。同年8月に国土交通省の「平成30年度 空き家対策の担い手強化・連携モデル」事業に採択され、太宰府市と協定を締結しました。その後、太宰府市役所の都市計画課内に「くらしの相談窓口」を設置するなどし、20年10月に法人化して今に至っています。
「人の終活・家の終活」セミナー、「考えよう!家のこと」シンポジウム、「空き家サミット」、さらには太宰府市の各自治会公民館における啓発講座、空き家予防講座などの定期的なイベント実施を通じて、各関係機関・福祉団体などとの協定・連携の輪を広げてきました。
※1:文筆家で、断捨離ブームの前から「片付け」の重要性を説いていた故・辰巳渚氏の思想を継承。(一社)「辰巳渚の家事塾」(東京都、淀川氏が代表)を立ち上げ、「家のコトは生きるコト」をコンセプトに全国で家事セラピストが活躍している。 ^
ワンストップで相談対応
──法人名に「予防」と入っていることに興味を引かれます。
淀川 国は、空き家対策として流通、再利用を促すために「空き家バンク」(※2)制度を立ち上げており、徐々に対応が進みつつありますが、なかにはなかなか流通に乗せられないものもあります。そうした空き家所有者の相談に寄り添い、ワンストップで解決にあたりたいと考え、相談窓口として開設したのが協議会です。名前に「予防」を入れた理由は、現在夫婦2人住まいの空き家予備軍(60 代以降)に、「自分の家や親の家を今後どうすべきか」を考えてもらい、空き家を生まない世界を目指したいという思いからです。
空き家の所有者は、相続問題が発生した際、どこから手を付けて何をしたらいいのか、また誰に相談すればいいのかわからない方がほとんどです。空き家は、「誰かが住む」「誰かに貸す」「誰かに売る」「誰かに管理してもらう」の4つの選択肢しかありません。実家をどうするのか、相続発生前によく話し合い、各種専門家に相談し、知識を蓄え備えておけば、空き家が放置される可能性は大きく下がるのですが…。
片山 東京など遠方にお住まいの空き家相続者、所有者も多く、抱えている問題も介護や実家のペットのこと、お葬式やお仏壇のことなどさまざま。そもそも相続をどのように進めるのか、決まっていないケースもあります。しかし、行政では相談内容によって対応する部署が分かれているほか、対応できる範囲も限られています。
ですので、私たちはこれまでバラバラに対応してきた行政や法律、金融、不動産などの専門家の間に立ち、そのなかから適切な相談相手を依頼者に紹介する「前さばき」のような役割を担っています。また、太宰府市内の諸団体との連携によるワンストップ対応や、学生と協働で空き家の利活用などを進めてまいりました。幸いなことに、福岡市のベッドタウンでもある太宰府市の空き家率は10%と全国(13.6%)より低い状況です。しかし、従来の対策を続ければ、空き家が増えていくことは避けられないでしょう。
※2:過疎地の空き家情報を登録し、その所有者と入居希望者とを仲介するサービス。過疎地域の地方自治体や NPO(非営利組織)が、地域活性化の一環として実施するもの ^
(つづく)
【田中 直輝】
<INFORMATION>
(一社)太宰府市空き家予防推進協議会
創設者:淀川 洋子
代 表:片山 順一
所在地:福岡県太宰府市通古賀4-4-16-102
設 立:2018年6月
TEL:092-925-6782
(事務局 イエノコト(株) )
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