2024年06月21日( 金 )

予算に見る住宅政策、脱炭素・ストック活用が重点

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予算に見る国の重点

良質なストック形成のイメージ

 国の住宅政策の方向性を確認できるのが、国土交通省住宅局が示す予算だ。2023年の「予算概要」の基本方針のなかで示された重点施策は、①「カーボンニュートラル(脱炭素)」、②「レジリエンス」、③「スマートウェルネス」、④「ストック活用」、⑤「DX(デジタルトランスフォーメーション)」の5つ。このうち①では、22年度に断熱など性能等級5・6・7が創設されたほか、25年からは省エネ基準適合義務化、30年からは新築の省エネ性能をZEH水準にするなどの目標が掲げられている。

 ②については、停電時の備えという点で、太陽光発電や蓄電池の導入も効果が高いと考えられ、電気代高騰や前述の省エネ政策、自家消費型の住宅の重要性が増していることから、23年度もこれらの導入が促進されるものと見られる。③については、住環境と健康の密接な関係を示すエビデンス(科学的根拠)が多く蓄積されてきたことから、住宅が国民の「健康」と「命」を守る重要な役割を担っていることが徐々に浸透しつつある。

 ④には、住宅ストックの約9割が現行の省エネ基準に達していない現状において、25年の省エネ基準適合義務化により不適格な建物を増やさないことに加え、良質な住宅ストックの形成に向け、長寿命化リフォームや空き家対策などに一層力を入れていくという考えが表れている。⑤は、人材難による人件費や資材の高騰など利益を圧迫要因が多いなか、生産性と品質の向上が求められることから喫緊に対応すべき問題となっている。そのため、国は積極的にDXを推進、事業者を支援する流れが加速しそうだ。

断熱改修にも注力

ふくおか県産材家づくり推進助成制度のチラシ
ふくおか県産材家づくり推進助成制度のチラシ

    さて、このような国の方針を受けて、福岡県や福岡市などの自治体はどのような取り組みや支援策を設けているのだろうか。まず県は①について、新築を対象に「ふくおか県産材家づくり推進助成制度」を設けている。前提となるのは、木が植林と伐採を計画的に行うことで、再生可能な資源であること。木材は内部に長くCO2を固定する役割も担っており、地域産材の活用は地域の森林の保全につながるほか、輸送や加工で発生するCO2排出量を抑制し、カーボンニュートラルへの貢献につながる。

 同制度では基本タイプ(一律50万円の助成金)の場合、使用する木材のうち70%以上が県内加工材、かつ5㎥以上を県産木材とするうえで、木造軸組工法の戸建、長期優良住宅の認定を受けていることなどが条件。県産木材振興型(県産木材を10㎥以上使用など)、環境配慮型(熱交換型換気システムや太陽光発電3kW以上の設置など)、新しい生活様式型(リモートワークスペース設置など)のなかから1つの追加で20万円、2つの追加で30万円がさらに助成されるものとなっている。

 ①と③、④を組み合わせた「福岡県既存戸建て住宅断熱改修費補助金」制度もある。高性能建材(断熱材、窓・ガラス・玄関ドア)を用いた既存戸建住宅の「断熱リフォーム工事」と、それと併せて行う「高効率省エネ設備機器(高効率な空調、照明、換気、給湯機器)の設置工事」の実施で、最大120万円(補助率3分の1)までが補助されるというもの。ストック住宅には高齢者の居住者が多く、断熱改修により温熱環境が向上すると健康寿命が延長されるといった研究成果を反映したものといえる。

 県では「ふくおか型長期優良住宅」の推進プロジェクトも展開している。09年から始まった国の認定制度「長期優良住宅」の基本性能に加えて、耐震性能、バリアフリー性能、フレキシブル性能、3世代対応、県産材使用、防犯性能のいずれかのうち1つ以上グレードアップさせたものを指す。県と提携した金融機関が取り扱う住宅ローンの金利引き下げ、融資手数料の割引を受けられることなどがメリットとなっている。長期優良住宅は住宅を長持ちさせることで、世代を超えて利用でき、住宅の建設、解体にともなう環境負荷低減、1世代あたりの住居費負担を軽減し、その分をその他の生活向上に充てることを目的としている。

福岡市は耐震が充実

 ここからは、県下自治体の主な住宅関連施策を見ていく。福岡市では住宅の耐震改修工事費補助事業、木造戸建住宅の耐震建替費補助事業、共同住宅の耐震診断費補助事業という、ストック住宅の地震対策メニューが充実している。耐震改修工事費補助事業は、②と④に対応するもので、新耐震基準(1981年)以前に建築確認を経て着工した2階建て以下の木造戸建、3階建て以下の共同住宅が対象で、このうち戸建では1戸あたり90万円を上限に助成。耐震シェルター設置も助成され上限25万円となっている。

 耐震建替費補助事業は、同じく新耐震基準以前に建てられた2階建て以下の木造戸建で、耐震診断の結果「倒壊する可能性が高い」と判定されたものが対象。助成金額は1戸あたり20万円(一定の要件を満たす場合、30万円が上限)となっている。共同住宅の耐震診断費補助事業は同じく、新耐震基準以前に建てられた2階建て以上(予備診断は3階建て以上5階建て以下)、延べ面積1,000m2以上が対象。補助金の額は、耐震診断に要する費用のうち、住宅の用に供する部分の耐震診断に要する費用に3分の2を乗じた額以内とされている。

 福岡県内の総住宅数(18年住宅・土地統計調査による、空き家等の居住世帯のない住宅を含む)は約258万戸で、そのうち約35%が福岡市に集中している。古い木造家屋も多く、地震発生時に倒半壊する、あるいは火災で被害が拡大することが懸念されている。なお、近年の自治体の動きとして、住まいにおける地震対策を促進するために、耐震診断アドバイザーを派遣する制度を設けているケースも見られる。

 23年度には子育てしやすい居住環境づくりの促進、既存住宅の流通促進を図る目的のため、子育て世帯の住替えに係る初期費用の一部を助成する「子育て世帯住替え助成事業」を拡充。これまでの所得要件を廃止するとともに、助成上限額(最大25万円)の引き上げ要件である、多子世帯の対象を子ども3人以上から2人以上に拡充し、子育て世帯の経済的な負担の緩和に取り組んでいる。

地域材の活用推進も

うきは市の山林と作業する林業関係者
うきは市の山林と作業する林業関係者

    地域の木材を活用した住宅づくりの支援も目に付く。八女市では、独自の「八女材普及促進住宅資材助成事業」を11年度から実施している。木造住宅の普及拡大を促進し、八女材の需要拡大を図ることで、八女市林業の発展と木材・木造住宅関連産業の活性化、さらに定住化促進を目的としたもので、定額80万円を補助する内容だ。要件は、八女市内に居住するための新築、増築の木造住宅であること、床面積が50m2以上であること(増築物件の床面積も同様)、八女材の使用量が木材使用量の70%以上を占めていること。なお、設計士や建築施工業者を対象とした助成(1件あたり5万円)を行っているのも特徴だ。

 うきは市も同様に、「地域木材利用促進事業」と銘打ち最大60万円を助成している。特徴は、戸建住宅だけでなく、賃貸住宅、店舗、事務所、レストランの新築、リフォームを対象としていること。うきは地域材の木材使用量が70%以上であること、主要構造物(柱、桁、梁など)についてうきは地域材の乾燥材(平均含水率20%以下の木材)を使用すること、うきは市内の建築業者の施工であることなどが要件となっている。

 森林面積が多い八女市やうきは市は、地域材の活用促進をカーボンニュートラルだけでなく、森林の保水機能による国土保全という観点、木材の健康作用などといった点も重視しており、冒頭の5つのポイントのなかでは①~③、うきは市は増改築にも対応することから①~④に対応するものといえそうだ。

 なお、最後に⑤のDXについてだが、福岡県は昨年度かから24年度までの「福岡県DX戦略」を策定。建設現場におけるICT活用工事や遠隔臨場の普及促進、建築工事の図面チェックなどのAI活用、インフラの施設情報や維持管理情報のデジタル化などの取り組みを支援、推進している。

【田中 直輝】

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