2024年07月19日( 金 )

【先進人(5)】ガザの人々の日常を映画で伝える ヒューマニズムからの和平交渉を(前)

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ユナイテッドピープル(株)
代表取締役 関根 健次 氏

 10月7日に始まったハマス・イスラエル戦争により、双方が被害を受けている。攻撃による目に見える被害も甚大だが、イスラエルがパレスチナ・ガザ地区を完全封鎖したことにより水・電気・通信などのライフラインが寸断され、ガザに住む人々さえも状況を飲みこめないまま、被害が拡大していくことが懸念される。映画配信事業を行うユナイテッドピープル(株)代表取締役・関根健次氏は、ガザ地区のドキュメンタリー映画の上映・配信により私たちがより関心をもつよう働きかけるとともに、日本政府こそ第3国として和平交渉を進めるべきと訴えている。

ガザ完全封鎖は最悪の人道危機

 ──ハマス・イスラエル戦争について、現地はどのような状況なのでしょうか。

ユナイテッドピープル(株) 代表取締役 関根健次 氏
ユナイテッドピープル(株)
代表取締役 関根 健次 氏

    関根健次氏(以下、関根) ハマスが10月7日、イスラエルに侵入し、侵入後に多くの民間人を殺戮したことはテロ行為です。音楽フェスティバルに居合わせた数百名を殺害し、続けてイスラエル人の共同コミュニティ「キブツ」に侵入し、多くの住民を殺害しました。ユダヤ人コミュニティからすると、これほどの事態はホロコースト以来のもので、ホロコースト以降でもっとも多くのユダヤ人が殺されてしまいました。非常にショッキングで、ハマスがこれほどの規模の攻撃を行うことを多くの人々は想像してなかったと思います。

 これにより今回の戦争が始まったのですが、その背景にはこれまでのイスラエルによるパレスチナの占領政策があります。抑えつけられてきたことにもう我慢できなくなってハマスが爆発してしまった結果といえますが、ハマスのこの殺戮行為は最大限に非難されるべきです。イスラエル、ガザ地区双方の友人からそれぞれの痛みを聞いています。普通に暮らしていた市民が、女性や子どもも関係なく殺され、今もショックを受けたままです。日本に留学している若いイスラエル人の女性に話を聞いたところ、突然涙が出てくるといいました。そうしたトラウマをイスラエル人が抱えています。ガザと双方ともが痛みを抱えているのが今回の戦争であり、どの戦争もそうです。

 多くの方が9.11事件となぞらえて語っています。アメリカは9.11で非常に強いショックを受け、愛国者法を成立させ、アフガニスタン戦争、そしてイラク戦争と突き進んでいきました。そのテロとの戦いを掲げ、そこでは常に先制攻撃論を唱え実行しました。イスラエルも今回のハマスの攻撃を受けて非常に感情的になっており、ハマスがイスラエルに2度と攻撃を仕掛けられないよう徹底的に殲滅すると宣言しています。イスラエル軍のガザ地区への攻撃はこれまでにないもので、ハマスから受けた攻撃の規模に反比例しています。

ガザ地区
ガザ地区

    ガザ地区はこれまで17年にわたりイスラエルにより経済封鎖され、「天井のない監獄」と言われてきました。以前、一部の人はイスラエルに出稼ぎに行けましたが、今回の戦争で完全に封鎖されました。これによって、基本的にはガザ地区に水や食料、医薬品、燃料といった物資が一切入らなくなりました。人の行き来もできません。例外を除いて国際的に協力活動を行っている医者、国連職員も入れず、誰もガザから逃げることもできません。パートナーが外国籍であるなどして、複数国のパスポートをもっているような人など一部だけが出られています。

 完全封鎖によって、ガザ地区の200万人以上の住民全員が命の危機に晒されています。病院が避難所になり、多くの人が病院に運ばれ病室も不足しているため、廊下で手術を行っているのが現実です。しかも医薬品がないため、妊婦が麻酔薬なしで帝王切開を受け、手術後も痛み止めがないという、想像を絶するような状況です。

 燃料も不足し発電できない状況です。水の浄化設備が動かないために人々は汚水を飲まざるを得ず、感染症が懸念されています。WHOは(23年)11月下旬に、ガザ地区では今後、ミサイルなどの攻撃よりも、感染症などの病気で死ぬ人の方が多くなる恐れがあると発表しています。病院でも電気がなくなり、人工呼吸器をつけていた未熟児の赤ちゃんが酸素不足により命を落としていいます。このように、人々が命を落とす事態が実際に起きています。

 イスラエル軍が行っていることは、ハマスの行為に対する懲罰としてガザ地区の住民全員を苦しめる、コレクティブ・パニッシュメント(集団的懲罰)です。これは国際人権法上、非常に問題があり、かつ国際法にも違反しています。

 イスラエルは、ハマスがいるところをすべて軍事上のターゲットとしているのかもしれませんが、病院・救急車や学校、しかも避難所に指定された学校、一般の民間人が暮らしている家屋さえも攻撃しています。しかし、戦争にも民間人をターゲットにしてはいけないというルールがあります。グテーレス国連事務総長も警鐘を鳴らしていますが、現在に至るも、イスラエルは攻撃の対象から病院や学校を外していません。

 ガザ地区では、電気がなく、昼間も真っ暗で、通信が遮断され、インターネットや電話ができないため、情報難民になっている方々がいます。多くの人が、なぜこうも空爆されるのか、なぜ家族や親戚が殺されているのか、何が起きているかさえも知らずに死んでいくという状況でもあります。今のガザ地区はまさに「地上の地獄」です。

(つづく)

【文・構成:茅野 雅弘】


<プロフィール>
関根 健次
(せきね・けんじ)
ユナイテッドピープル(株)代表取締役、(一社)国際平和映像祭 代表理事。ベロイト大学経済学部卒。大学の卒業旅行の途中、偶然訪れた紛争地で世界の現実を知り、後に平和実現が人生のミッションとなる。2002年、世界の課題解決を事業目的とするユナイテッドピープル(株)を創業。09年から映画事業を開始、多くのドキュメンタリー映画を配信している。14年より誰でも社会課題・SDGsがテーマの映画上映会を開催できる「cinemo(シネモ)」を運営開始。21年9月21日、ピースデーにワイン事業「ユナイテッドピープルワイン」を開業。

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