2024年05月05日( 日 )

みどりの窓口の廃止・営業時間短縮とサービス(後)

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運輸評論家 堀内 重人

 JR各旅客会社が、みどりの窓口を廃止するか営業時間を短縮しており、利用者に対するサービスや利便性が低下している。その背景として、指定席券を予約するネット販売システムの急速な普及が挙げられる。一方、大手民鉄もネットでの特急券販売やチケットレスのサービスを充実させているが、窓口を廃止したり営業時間を短縮したりといったことは、極力行っていない。今日であっても、指定券の券売機では対応できない乗車券・指定券類もある。経費増を抑えつつ、みどりの窓口を可能な限り維持する方法をどのようなものか。

写真1 券売機
写真1 券売機

    地方都市の駅でも、みどりの窓口を廃止するケースが出てきており、特急「やくも」や寝台特急「サンライズ出雲」の始発駅である出雲市駅でも、みどりの窓口が廃止され「みどりの券売機プラス」に置き替わっている(画像1)。また駅舎の無人駅化にともない、みどりの窓口の廃止や関連子会社への業務委託を行い、さらに営業休止時間が設けられるケースもある。

 規模の小さい駅のなかには、みどりの窓口が設けたうえで、みどりの券売機も併置する駅もある。一方、規模の大きな駅ではみどりの窓口は存続しているが、営業時間の短縮以外に、窓口の係員が削減されるため、長蛇の列ができるなど、サービスダウンが目立つ(画像2)。

写真2 福井駅での長蛇の列
写真2 福井駅での長蛇の列

    JR四国は、管内にみどりの窓口が32駅に設置されていたが、2021年10月から2022年1月にかけて、半分に当たる16駅でみどりの窓口を閉鎖した。それにより乗車券・特急券などを購入する人が不便になることを極力回避するため、代替としてJR西日本と同様に、「みどりの券売機プラス」を設置した。

 JR九州は2022年3月以降、主要駅のみどりの窓口の営業時間を短縮した。そして乗降客数が少ない駅では窓口での販売を廃止する方針である。これにより福岡県でも、枝光駅のように博多近郊区間にある乗降客数が多い駅なども含め、約30駅が窓口廃止の検討対象となっている。

みどりの窓口の現状と最後の設置

 時刻表の索引地図でみどりの窓口の表示がない駅でも、切符を発売する窓口が存在する駅もある。また特急列車の運行がない路線では、新駅が開業する場合は当初からみどりの窓口を設置しない。この場合は、指定券を販売する券売機のみ設置する。

 時刻表の索引地図では、みどりの窓口が廃止されて存在しない駅であっても、通信対話機能がない指定席券売機が設置された駅をみどりの窓口の設置がない駅と表示している。一方、係員と通話によるアシスト機能が備わった券売機を設置している駅は、みどりの窓口が設置された駅として表示されており、みどりの窓口があると思って行ってみると、実際は券売機だけであることがある。

 みどりの窓口やJR全線きっぷうりばが最後に新設された駅は嬉野温泉駅、新大村駅である。これは2022年9月に西九州新幹線が開業した際に設置された。

 その他のJR各社では、最近になってみどりの窓口などが新規に開業した事例として、2016年3月26日に北海道新幹線が開業した際、JR北海道は奥津軽いまべつ駅と新函館北斗駅がある。これらは新幹線の駅であるが、在来線に関してはJR東日本では東北本線の紫波中央駅、JR東海では東海道本線の御厨(みくり)駅、JR西日本では呉線の新広駅が該当する。

 このように新幹線が開業した場合、みどりの窓口を設置する事例が見られる以外は、乗降客数が期待できる駅が開業する時だけ、みどりの窓口が新設されるぐらいである。

今後のみどりの窓口の在り方

 JR各社が、係員と通話によるアシスト機能が備わった券売機を導入したとしても、みどりの窓口のマルスシステムとは異なり、「おとなの休日クラブ」などの企画乗車券で乗車する場合、指定券がうまく受け取れなかったりする。

 またJR各社は、近鉄や東武、西武、小田急などの大手民鉄とは異なり、規模が大きい上、各種企画乗車券の種類も多い。仮に東京から大阪へ行くとなれば、券売機では東海道新幹線か東海道本線を経由するかたちでしか、乗車券類を購入することはできない。利用者のなかには、北陸新幹線を利用して旅行する、あるいは中央本線を経由して名古屋から新幹線で大阪へ向かう人もいる。

 このようにJRの場合は、規模が大きく路線数も多いことから、オーダーメイドのような乗車券類を求める需要があるが、それにまったく対応できていない。また各種割安な企画乗車券類だけでなく、定期券やホテル、レンタカーなども券売機では購入・予約することができないケースがある。

 JR各社では、スマホなどで乗車券・指定席券類が購入できるようになったことや、人件費が嵩むため、「経費がかかる上、必要性が低下している」として、みどりの窓口を廃止しているが、オーダーメイドの乗車券類や企画乗車券類、定期券を購入する人、列車以外にホテルやレンタカーを予約する人もいるため、非常に不便になっている。

 経費が嵩むことを回避するには、みどりの窓口の係員を、パートやアルバイト、嘱託職員で担う方法がある。これはスーパーマーケットやコンビニのレジ係は、パートやアルバイトで対応しているように、日本では最低でも高校まで卒業していることから識字率も高く、JRのみどりの窓口の業務も、少し教育を行えば、マルスという端末の操作も可能となる。

 係員によるアシスト機能が付いた指定券の券売機を設置したとしても、使い勝手が悪くて、購入することができない乗車券や指定券があるため、係員が端末を操作する、従来型のみどりの窓口も、上に書いたような方法で存続させなければならない。事実、係員によるアシスト機能が付いた指定券の券売機の利用率は、低いように感じる。

 一方、JR各社よりも規模が小さい大手民鉄は、乗車券・特急券などを販売する窓口を減らし、縮小するようなことを極力避けようとしている(画像3)。そのようなことを実施すれば、利用客が不便になり迷惑を掛けるからである。近鉄に限らず、有料特急を運転する大手民鉄は、インターネットによる販売だけでなく、チケットレス乗車を進めているが、紙媒体の乗車券・特急券などがないと「不安である」と考える人が多いことも影響している。

写真3  近鉄駅の窓口
写真3  近鉄駅の窓口

 大手民鉄ができることが、JR各社でできないわけがなく、「コスト削減が最優先」という経営スタイルを改め、利用者の利便性も担保しながら、増収・増益を目指すスタイルを確立するようにすべきだ。みどりの窓口が存続している駅でも、長蛇の列ができて利用者を平気で待たせるようなあり方は、サービス業として望ましいとはいえない。

(了)

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