2024年05月05日( 日 )

みどりの窓口の廃止・営業時間短縮とサービス(前)

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運輸評論家 堀内 重人

 JR各旅客会社が、みどりの窓口を廃止するか営業時間を短縮しており、利用者に対するサービスや利便性が低下している。その背景として、指定席券を予約するネット販売システムの急速な普及が挙げられる。一方、大手民鉄もネットでの特急券販売やチケットレスのサービスを充実させているが、窓口を廃止したり営業時間を短縮したりといったことは、極力行っていない。今日であっても、指定券の券売機では対応できない乗車券・指定券類もある。経費増を抑えつつ、みどりの窓口を可能な限り維持する方法をどのようなものか。

みどりの窓口の閉鎖と営業時間短縮

みどりの窓口 イメージ    JR各社がみどりの窓口を廃止し営業時間を短縮する背景として、インターネットやスマホなどで指定席券を予約する販売システムの急速な普及が挙げられる。実例を挙げれば、「えきねっと」「e5489」「エクスプレス予約」、JR九州列車予約サービス、JRハイウェイバスの「高速バスネット」などがある。

 この流れは2000年代半ばから始まっており、JR各社はみどりの窓口の廃止や営業時間の短縮などを行っている。また新幹線が開業したことで、並行在来線を運行する旅客会社は、JRから経営分離されて第三セクター鉄道へ移管している。この場合、みどりの窓口はJRが指定する旅行会社扱いとするか、業務委託駅扱いとなるが、それへの対応は駅によって異なる。

 あいの風とやま鉄道、IRいしかわ鉄道などでは、一部の駅でみどりの窓口の営業を継続している。各社が単独の駅やJR線との接続駅ともにJR西日本指定旅行会社の取り扱い会社となり、クレジットカード決済や定期券発行などの一部業務の取り扱いが制限される場合がある。

JR各旅客会社の動き

 JR北海道はみどりの窓口の代替として、「話せる券売機」を有人駅の約8割に設置している。将来的には営業時間の短縮だけでなく、窓口を半分程度にまで削減したいとしている。

 JR東日本は2005年からみどりの窓口の代替として、「もしもし券売機Kaeruくん」の導入を開始した。これにより既存の窓口を順次廃止するだけでなく、2025年までに管内のみどりの窓口を約7割減らし、140カ所程度まで集約する考えを表明した。

 例外として、小諸駅はJR東日本の公式ホームページではみどりの窓口なしの扱いとなっているが、実際はしなの鉄道が業務委託を行うかたちで、えきねっとの受取対応やクレジットカード決済を取り扱うなど、実質的にはみどりの窓口の機能を担っている。

 ただし、えきねっとの受付対応やクレジットカードの決済は、JR線を利用する場合だけであり、しなの鉄道を利用する場合は取り扱いを行っていない。その一方で、山田線と三陸鉄道が接続する宮古駅は、みどりの窓口業務に関しては人件費の安い三陸鉄道への業務委託を行っている。

 だがJR東日本の公式のホームページでは、みどりの窓口が設置された駅として扱われており、利用者からすれば、みどりの窓口があると思って安心して駅へ行くと、券売機だけであり、不安になるケースもある。

 JR東海は、民営化からしばらくは他社と同様にみどりの窓口として案内していたが、現在は白い看板に「JR全線きっぷうりば」と表記している。一部の構内案内地図を除いて、そのマークも用いていないが、扱いとしてはJR他社のみどりの窓口同様である。乗車券類の購入、変更や払戻し、クレジットカードによる決済も可能である。

 だがJR東海は、地方路線を中心に駅舎の無人化を進めている。駅舎が無人化されない場合は、駅が所在する自治体などに簡易委託される。無人化された場合は、「みどりの窓口」は撤去されるが、簡易委託の場合はマルス端末を設置して指定券や企画切符などを引き続き取り扱う駅もある。

 ただし、クレジットカードによる決済が不可になったり、乗車券類の払戻しや変更ができない駅もあるなどサービスの低下がみられる。 JR東海は、みどりの窓口から「JR全線きっぷうりば」へと表記を変更した理由として、「どの駅の窓口でも指定席の発売が可能なため」としている。

 JR西日本は、乗車券・定期券・指定券が購入可能な、多機能で通信対話型の券売機である「みどりの券売機プラス」に代替を進めている。最初は東海道本線の須磨駅と甲南山手駅を皮切りに導入し、この券売機が導入されるとみどりの窓口を廃止している。

 京阪神地区のみどりの窓口は、2030年度頃には30駅程度までに減らす意向を示した。JR西日本の管内全域でも、2030年度末までに約340駅から100駅程度まで削減する考えを示した。

(つづく)

(後)

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