2024年05月05日( 日 )

【BIS論壇No.434】日本の危機管理

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 NetIB-Newsでは、日本ビジネスインテリジェンス協会理事長・中川十郎氏の「BIS論壇」を掲載している。
 今回は1月12日の記事を紹介する。

 今般の能登地震災害救助対策に関し、対応が後手に回り、しかも小出しで批判が起こっている。

 能登地震災害対策に際し、岸田政権の対策の要である「内閣危機管理監」の村田隆・管理監は地震災害発生当時、入院中で出勤しなかった。出勤したのは、災害発生の2日後の1月3日だったと報じられている。その結果、能登地震災害対策は後手に回り、能登地震の震度7.6とほぼ同じ規模の震度7.3の2016年の熊本地震の際の災害救助派遣部隊の規模に比べ、能登地震の派遣数が極端に少ないことが問題視されている。

 16年の熊本地震の際は地震発生2日後に2,000人、(能登は1,000人)、5日目には熊本では2万4,000人が派遣されたのに、能登へは熊本の5分の1の5,000人しか派遣されていない。災害発生の能登は冬で、積雪もあり、緊急なる救助活動が必要にもかかわらず、救助隊員が熊本に比し、極端に少ないのは救助活動上問題視されるべきだ。その結果、災害派生後1週間たっても、「災害の現状がつかめていない」状態だ。これは危機管理上大問題である。林官房長官は能登近辺に自衛隊基地がなく救助隊員輸送が遅れ、少人数だったと言明しているがこれは派遣救助隊員数が少なかったことの理由にはならない。

 道路が寸断され、支援に遅れが出たというが、3方海に囲まれた能登半島では迅速に海上自衛隊の海からの援助、航空自衛隊のヘリコプター、ドローンなどの支援、さらに衛星を活用した監視など実行すべきではないか。危機管理の要諦は日頃から危機を想定し、事前のシミュレーションによる準備が肝要である。はたして内閣危機管理監および関係省庁は、地震大国・日本として事前対策が十分なされているのかはなはだ疑問である。日本では世界の地震の20%が発生しているのだ。能登地震で内閣の地震災害対策のずさんさが浮き彫りになった。地震・台風常襲地帯の日本で、原発をさらに増設するなどもってのほかである。

 さらに岸田政権は防衛予算を過去の2倍近い年間8兆円への増額を国会ではなく閣議で決定している。しかし、地震、台風が毎年襲う日本では防衛予算は過去のGDP 1%にとどめ、防衛予算増額分は災害対策、さらに教育費、少子化対策に回すべきである。米国のFEMA(連邦緊急事態管理庁)は7,500人の人員を抱え、年間予算は2.2兆円以上で災害危機管理に迅速に対応している。日本の内閣危機管理官室も米国を見習い、さらなる人員増強、予算の増額を真剣に考えるべき時であろう。


<プロフィール>
中川 十郎(なかがわ・ じゅうろう)

 鹿児島ラサール高等学校卒。東京外国語大学イタリア学科・国際関係専修課程卒業後、ニチメン(現:双日)入社。海外駐在20年。業務本部米州部長補佐、米国ニチメン・ニューヨーク開発担当副社長、愛知学院大学商学部教授、東京経済大学経営学部教授、同大学院教授、国際貿易、ビジネスコミュニケーション論、グローバルマーケティング研究。2006年4月より日本大学国際関係学部講師(国際マーケティング論、国際経営論入門、経営学原論)、2007年4月より日本大学大学院グローバルビジネス研究科講師(競争と情報、テクノロジーインテリジェンス)

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