2024年02月27日( 火 )

市議のガス抜きの場か?~「九州大学移転・跡地対策協議会」に思うこと

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 2023年4月から、九州大学・箱崎キャンパス跡地のまちづくりに係る土地利用事業者の公募が開始され、今年1月29日・30日の2日間で、申し込み受付を行っている。受け付けられた案が審査された後、4月上旬にも優先交渉権者が選定される予定だ。18年9月末の伊都キャンパスへの統合移転完了をもって閉校となり、その後の再開発に向けての蛹化の時期にあった箱崎キャンパス跡地が、いよいよ羽化に向けて動き出したことに対しては、何とも感慨深いものがある。

 その申込み受付が行われている最中の1月29日、「令和5年度 第2回 九州大学移転・跡地対策協議会」が開催された。
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 同協議会は、九州大学の移転、跡地利用の円滑な推進や、これにともなう諸問題への適切な対応を図るために必要な調査研究を行うことを目的として設置されたもの。これまで箱崎キャンパス跡地だけでなく、六本松キャンパス跡地のまちづくりや、伊都キャンパス周辺での学術研究都市づくりなどについて、参加している市議らが地元住民の意見や苦情、要望などを代弁するかたちで発言し、それを受けた市側が、今後のより良いまちづくりのための検討材料へと昇華していく──そうした議論の場として機能しているものだと理解している。

 だが、今回の跡地対策協議会では、とても有意義とは言い難い、一部市議による自説披露の茶番劇のようにも思えた部分があった。

 もちろん今回の協議会のすべてが、茶番劇だと言っているわけではない。たとえば、伊都キャンパス周辺における学術研究都市づくりにおける「通学に利用する路線バスを増便してほしい」「バス料金の減免措置を検討してほしい」「元岡地区にスーパーがほしい」「BRT(連節バス)の導入検討は?」など、すでにまちづくりが進んでいるエリアでの、地域住民からの要望や意見の発表については、それなりに価値があったと思われるし、議論の俎上に載せる妥当性があったと思われる。

在りし日の九大・箱崎キャンパス(2014年2月撮影)
在りし日の九大・箱崎キャンパス
(2014年2月撮影)

    問題は、今まさに事業者公募の真っ只中にある、箱崎キャンパス跡地のまちづくりに関するやり取りだ。とくに、一部報道にあった地場企業グループによる「アリーナ案」や「ITオフィス案」を持ち出してきて、「アリーナはグランドデザインにそぐわない」「ITオフィスは陳腐化が早く、50年・100年を見据えたまちづくりにふさわしくない」「地域の住民は大きな公園を望んでいる」──などと自説をのたまったうえで、何度も何度も「これについての市の見解はいかがか」と問うていた場面については、個人的にうんざりという感覚を覚えたのが正直なところだ。

 そもそも今回の公募の実施主体は九州大学とUR都市機構であり、福岡市ではない。また、アリーナ案やITオフィス案についても、一部報道で先行して報じられたものではあるが、協議会の開催時点ではそうした案が実際に提出されたわけではなく、もちろん決まってもいない類のものだ。実施主体でない市側としては、民間事業者からの提案の中身を知りうる立場ではないし、何かしらの意見をいえる立場でもない。それなのに何度も何度も「市の見解は」などと問うたところで、望んでいるような答えが返ってくるわけがないのはわかりきっていることだ。この間のやり取りは、傍から聞いていて、非常に不毛な時間だったと言わざるを得ない。

 おそらく市議側も、地元の支援者らから「箱崎キャンパス跡地はどうなるのか?」などと問われ、「私は協議会でこういう意見を言ってやりました!」的なポーズのために、こうした発言を繰り返したのかもしれない。あるいは、箱崎キャンパス跡地の今後の再開発をめぐる動きから、カヤの外に置かれている現状に対する不満を発散させるための、“ガス抜き”の場だったのだろうか──。

 もちろん箱崎キャンパス跡地に関する議論でも、それ以外の市議らによる「審査委員会の委員に地元の代表者が含まれていない」「もっと地域の声を尊重してほしい」などの意見については、たしかにもっともなものである。今後何かしらのかたちで地域の声がまちづくりに反映されるきっかけとなるのであれば、非常に有意義な発言だといえるだろう。だが、今回の協議会では、先の一部市議による自説披露が長尺で繰り広げられ、他の有意義な発言・意見の印象が薄れてしまったのが、非常に残念なところだ。

 九州大学移転・跡地対策協議会は今後も、伊都キャンパス周辺での学術研究都市づくりや箱崎キャンパス跡地のまちづくりについて、参加市議らが代弁する地元住民からのさまざまな意見や苦情、要望などを汲み上げ、より良いまちづくりを議論する場として、随時開催されていくことだろう。29日と30日の2日間をもって公募の申し込みは締め切られ、これからはいよいよ箱崎キャンパスの新たなまちづくりに向けて動き出していくことになるが、協議会が今後、一部市議のガス抜きの場としてではなく、建設的な意見を議論する場として、本来の役割を取り戻していくことを期待したい。

【坂田 憲治】

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