2024年04月29日( 月 )

FOMO(日本株持たざる恐怖)が経済好循環を引き起こす(後)

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 NetIB‐Newsでは、(株)武者リサーチの「ストラテジーブレティン」を掲載している。
 今回は2月5日発刊の第349号「FOMO(日本株持たざる恐怖)が経済好循環を引き起こす」を紹介する。

米国流の好循環を阻んでいるもの、(1)企業による利益退蔵

    米国流の、株価上昇による資産の増加?消費増加?経済成長?株価上昇、という好循環が日本でも定着できるだろうか。そうなれば、日本経済と人々の生活水準を大きく引き上げていくことができる。いまの日本株ブームはその可能性を垣間見せていると考えられる。

 これまで日本では企業は十分に利益を出しているのに株価が安いことによって家計の財産はあまり増えず、企業のもうけが経済の好循環に十分に結びついてこなかった。その第一の理由は日本企業の儲けの過半が企業内に退蔵され、需要拡大と成長につながってこなかったことにある。米国の場合企業利益のほぼ8割が配当と自社株買いで株主に還元され(図表4)、それが家計の資産所得と株価値上がり益となって消費を支えている。ちなみに米国では家計がSNSなどを通して株式投資に参入した2020年までの10年間、唯一最大の株式投資主体は企業による自社株買いであった。リーマン・ショック後の株高はもっぱら自社株買いによって実現したのである。(図表5)。

 それに対して日本企業は配当と自社株買いによる株主還元率は4割と米国の半分に過ぎず、企業は利益の多くを金融資産として運用し、遊ばせている。その一部は戦略的海外投資であるが、自己資本比率は異常に高くなっている(図表6)。金融庁・東証によるPBR1倍以下の企業に対する是正措置の要求は、企業の内部留保の有効活用を求めるものである。企業の自社株買いが増加し、ROEなど資本効率が劇的に改善し、PBRが上昇すると期待される。

米国流の好循環を阻んでいるもの、(2)極端なリスク回避姿勢

 第二に日本の家計がリターンの高い株式投資を敬遠してきたため、株価が上昇してもその恩恵が行き渡らず、家計の資産形成は米国に大きく後れを取ってきた。しかしNISA改革などにより家計のリスクテイク姿勢が高まろうとしている。株式投資により家計の金融資産からの所得が大きく増加していくだろう。

FOMOが日本の好循環を引き起こす、岸田政権の『新しい資本主義政策』も寄与

 このようにして日本においても米国のように、企業の儲けが社会還元され需要創造に結び付くという動きが、株高を契機にして起こり始めている。図表7、8に見るように、日本企業は過剰の資本保有により、ROE(自己資本利益率=自己資本成長率)が著しく低くなり、主要国中最低のPBRを余儀なくされてきた。これは家計と同様企業も「Cash is King」メンタリティーに毒されていたためといえる。岸田政権の新しい資本主義政策は、ここに照準が定められている。米国流の、株価上昇による資産の増加?消費増加?経済成長?株価上昇、という好循環が日本でも定着する可能性は大きい。

(了)

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