2024年05月02日( 木 )

話題の次世代メモリ半導体「HBM」(後)

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

日韓ビジネスコンサルタント
劉明鎬 氏

SKハイニックスがリードしている背景には

 SKハイニックスはメモリ分野においてサムスン電子に次いで世界2位の企業である。30年以上サムスン電子を超えることができなかった。ところが、SKハイニックスはHBM市場の到来を予見し、サムスン電子より早くHBM市場に注目、準備を進めていた。それで、SKハイニックスはHBMを最初に開発することができた。同社は2013年HBMを開発して以来、5世代製品でHBM3eも開発を完了し、2024年上半期から量産する計画だ。

 5世代のHBMは秒あたり最大1.15TB以上のデータ処理ができる。5GBの高画質映画230本以上を1秒で処理できる能力である。以前の製品と比較して発熱も10%改善されている。その結果、エヌビディアのGPUに供給されているHBMは、SKハイニックスの製品になった。同社は数十年ぶりに次世代メモリ分野においてサムスン電子をぬいてシェア1位を達成している。このような流れを受け、半導体市況が低迷しているなかでも、SKハイニックスの株価は上昇を続け、時価総額でマイクロンを追い抜くような状況である。HBMは需要増加で、今後も供給が需要に追い付かない状況が続きそうだ。SKハイニックスはHBMの好調で昨年第4四半期から赤字を抜け出している。

予想される今後の展開

AI半導体 イメージ    サムスン電子はHBMの開発においてSKハイニックスに遅れてしまった。しかし、サムスン電子も遅まきながら市場の展開に気づき、1位奪還に向けて動き出している。サムスン電子の強みは、半導体の委託製造のファウンドリ事業を営んでいることと、パッケージ技術もあることだ。サムスン電子は自分のファウンドリで生産したGPUと自社製品のHBMを一緒にパッケージングして顧客に収めることができるメリットがある。

 一方のSKハイニックスは、ファウンドリ事業があったしても最先端ではないので、今回ファウンドリ世界最大手であるTSMCと組む道を選択している。エヌビディアはGPUをTSMCで生産しているので、SKハイニックスはHBMをTSMCに収めて最終的にそこで製品化するこということだ。それに対してサムスン電子はHBMの生産量も2.5倍に増やし、SKハイニックスより良い条件で顧客に納品できることを目指している。もちろんマイクロンもHBM市場の状況を座視しているわけではない。しかし、マイクロンはSKハイニックスに比べて少し競争力が落ちるようだ。

 AI半導体が半導体市場をリードしているなか、韓国のメモリ2社は、次世代メモリ市場であるHBM市場をめぐって激しくぶつかっている。SKハイニックスがせっかく取った1位の座をキープできるのか、それともサムスン電子が1位を奪還するのか、業界では注意深くその推移を見守っている。AIで半導体業界は賑わっているものの、忍び寄る景気停滞の足音に半導体業界は大丈夫だろうかと警戒する声もある。

(了)

(前)

関連キーワード

関連記事