2024年05月06日( 月 )

コロナ禍に拠点倍増、九州地場サブコンの採用戦略(後)

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尾園建設(株) 常務取締役 松本 貴志 氏
工事部長 兒玉 裕介 氏

 躯体工事・尾園建設(株)はコロナ禍の2021年、九州内で4つの支店を新設するなど拠点拡大を図り、23年6月期には売上高50億円(グループ完工高60億円)を計上した。事業拡大する同社の常務取締役・松本貴志氏および工事部長・兒玉裕介氏に、業界環境の現状や職人不足への対応策などについて話を聞いた。

新入社員が相談しやすい環境整備

 ──入社後の研修や生活についてのフォローなどはいかがでしょうか。

 兒玉 入社後1年間は、福岡本社で研修を行います。使用する部材について学んだり、自社の資材センターで簡単な足場の組み立て・解体など実務的な研修を行ったりするほか、座学や、実際に工事現場を見学して目で見る研修も実施しています。

 松本 学校の先生方から、新入社員は採用した後が大変だとよくお聞きしています。たとえば、「話し相手がいない」とか、「入社した後は会社がほったからし」だとか。ですので、当社では必ず年齢が近い先輩社員とコンビを組ませています。そのためにも、採用は継続することが本当に大事だと感じます。採用が途切れた時期は、社員同士のコミュニケーションがうまくいかないことがありました。入社2年目までを対象に、3カ月に1回程度、食事会などの集まりを開いて、積極的にコミュニケーションを取るようにもしています。

 兒玉 私も新入社員に直接声をかけて、生の声・相談を聞くようにしています。私含めフロント陣、幹部も基本的には現場経験者のため、職人たちの気持ちがよくわかり、親身になって話し合うことができることも大きいと思います。
 1年間の研修が終わった時点で、勤務地の希望を聞いています。地方から出てきて、福岡に魅力を感じて福岡に残って頑張りたいという社員もいれば、地元に帰りたいという社員もいます。福岡で働いて、いずれ年齢を重ねたときに地元に戻りたいなど、さまざまな希望があり、本人の意思に臨機応変に対応しています。

他産業に負けない業界アピールが不可欠

 ──専門工事を含めた建設業界の課題、それに対する対応策はいかがでしょうか。

 松本 建設業界は、まだまだ旧態依然とした組織風土や企業文化が残っています。たとえば、CCUSや社会保険を導入していない企業が低価格で受注する一方で、導入している企業が不利になるという状況があります。国土交通省がCCUSで技能者の能力を可視化し、各社の有資格者や社員数など明確に提示するようになったことから、大手ゼネコンは社会保険加入やCCUS加盟先への発注に徐々に変わってきています。

 兒玉 CCUS加盟については、当社の協力会社のなかにも、100%当社の仕事のみという会社については加盟していますが、当社以外の下請に入っている会社では、加盟のメリットがわからないという理由などで、未加入のケースもあります。働きかけはしていますが、時間がかかりそうです。

 松本 やはり課題は人材です。当社だけではなく、業界全体で他産業と同じくらい若い子たちが入ってくるようにしないと、先がないと思います。少子化で学生が減るなか、就職希望者も同様に減ってきます。そのなかで、他産業に負けない給料面や休日面など、目に留めてもらえるような条件をアピールすることや、卒業生を連れた学校訪問をしっかりと行っていくことで、建設業、しかも専門工事業者を選んでもらえるように、業界の魅力を発信していくしかないと考えています。

(了)

【内山 義之】


<COMPANY INFORMATION>
代 表:尾園 浩範
所在地:福岡市博多区博多駅南6-15-21
創 業:1962年
設 立:1966年2月
資本金:1億円
URL:http://ozono-kk.jp


<プロフィール>
松本 貴志
(まつもと・たかし)
1974年、福岡県出身。92年に九州産業大学付属九州産業高等学校・建築科卒業後、尾園建設(株)に入社。とび工としてさまざまな現場にて経験を重ね、2022年、常務取締役に就任。趣味はゴルフ。

兒玉 裕介(こだま・ゆうすけ)
1982年、宮崎県出身。2001年に日向高等学校卒業後、2年間、尾園建設(株)の協力会社に勤務の後、03年に尾園建設に入社。宮崎県を中心に現場職長を担い、グループ会社である南九州尾園建設(株)を経て、現職。趣味はスポーツ観戦。

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