きららの湯、継続的な運営は可能か
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新生きららの湯、グランドオープンは6月
糸島市二丈深江の顔でもある温泉施設「二丈温泉きららの湯」(以下、きららの湯)が、当時運営を担っていた民間事業者から糸島市へと返還されたのが、2023年7月1日のことだった。コロナ禍やロシア・ウクライナ戦争などによって、社会情勢は大きく変化し、その結果として、きららの湯は集客を封じられ、通常営業再開後も、燃料費高騰の影響を免れなかった。
きららの湯の返還から遡ること1週間以上前、市は新たな譲渡先を公募型プロポーザル方式で募集すると公表した。きららの湯は22年11月から休業に入っており、普段利用していた近隣住民などから、営業再開を待ち望む声が多数寄せられていた。
プロポーザルの結果、きららの湯の譲渡先には飯塚市のプラントメーカーである(株)フリーザーシステムが選定された。その後、市の定例会において審査・議決がなされ、同社へのきららの湯の無償譲渡および貸付が正式に決定した。
新たな運営事業者の下、再スタートを切ることになったきららの湯は23年12月、先行して大浴場とお食事処「旬菜工房きらら庵」の営業を再開するかたちで、第1弾プレオープンをはたした。今年4月には既存の全施設がリニューアルされるほか、読書コーナーが新設される第2弾プレオープンを迎える。そして6月には、岩盤浴や多彩なサウナ、家族風呂などのスパ機能の充実を図り、半地下にシミュレーションゴルフや卓球、ビリヤードなどが楽しめるスポーツ広場を整備して、晴れてグランドオープンとなる。
依然厳しい市場環境を生き残れるのか
ここまで順調に再生への歩みを進めているように見えるきららの湯だが、旧運営事業者から市へと返還されたときと、市場環境はさほど変わっていない。燃料費は高止まり状態が続いており、湯を沸かし、サウナを稼働させ続ける必要がある温浴事業は、苦戦を強いられることになる。また、日常的にきららの湯を利用するのは糸島市民、とくに近隣の二丈深江エリアの住民と考えられるが、同エリアの人口は近年約4,600人で推移しており、市全体の人口が2025年にピークを迎えることを考えると(市公表資料参照)、エリア外からの広域集客を果たせなければジリ貧だ。
新たな運営事業者であるフリーザーシステムは、01年4月創業のプラントメーカー。プレハブ式の冷蔵庫や冷凍庫などの設計・製作、食品工場に欠かせない急速フリーザーなどの冷熱設備の設計・製造などを手がける。06年8月からは顧客からの要望に応えるかたちで、食品工場の新築・改修工事を主とする建設事業にも取り組んできた。また、23年7月には福岡市西区今津に「Alba HOTEL&Glamping(アルバ・ホテル&グランピング)」をグランドオープン。ホテル事業にも乗り出している。
多岐にわたり事業を展開している同社だが、温浴事業への挑戦は初。ノウハウも少ないなかで、市には高齢者向け入湯助成以外の支援を期待したいところだが、市は「新たな支援を行う予定はありません」と話す。
同社の23年3月期決算を見ると、売上高は16億3,876万円で前期比23億6,744万円の減収。3,726万円の営業赤字となったが、特別利益の計上により最終黒字を確保した。ただし、当期純利益率は1%を割り込む状況が続いている(20~23年3月期)。
これに関して市は「選定委員会の委員には、公認会計士や中小企業診断士、大学教授などにも就任いただき、継続的に事業を運営することができるか、多角的に判断していただきました」としたうえで、「(フリーザーシステムから)提出された事業計画書、収支計画書、法人概要書、法人役員名簿、法人の登記簿謄本、直近3年間の法人税申告書およびその添付書類などで構成された提案書を基に、総合的に審議いただいています。このことから、市は、同社による安定的かつ継続的なきららの湯の運営がなされると考えています」と回答した。
きららの湯の営業再開に際して、市民からは喜びの声が挙がっている。市もきららの湯の営業再開にあたり、「地元の方からも多くの喜びの声を寄せていただいています。また、産直きららとの連携や従業員の地元採用など、すでに地域とのつながりを強く意識した事業展開を行っていただいています。これからも、さらに地域に愛される施設となるよう期待しています」と話している。であればなおさら、再び民間事業者から市へと返還されることがないように、市には支援の拡充など、より一層の官民連携を期待したい。
【代 源太朗】
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