能登半島地震による輪島市の復旧状況(4)
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運輸評論家 堀内 重人
元旦の午後4時10分に発生した直下型地震の能登半島地震。気象庁の発表では、この地震のマグニチュードは7.6であり、内陸部で発生する地震としては日本でも稀な大きさの地震であったという。3月10日時点の輪島市の交通インフラやライフラインの復旧状況を中心に、現状を報告したい。
ライフライン(1)電力
北陸電力管内では、最大で約4万戸が停電した。新潟県内では、約1,500戸の停電が発生した。北陸電力は1月31日に、早期復旧が困難な一部地域の約2,500戸を除いて、概ね復旧したと発表した。日本では、地震や台風などの自然災害が発生した際、電気は比較的早く復旧する。地震で電柱が倒れたり、折れたり、電線が切れたりもするが、新しい電柱を建てて、新しい電線を張って復旧させる。
これは利用者への迷惑を少なくする点では、有効であるといえるが、日本は地震大国であることや、電柱や電線は街の景観を著しく悪くしている。筆者は、電柱と電線というかたちで仮復旧させつつ、電柱の地中化を提案したい。地震や津波で街全体が壊滅してしまった地域であれば、電線を地中化させた状態で、復興を目指すべきだと考える。街に電柱があれば、地震以外に台風でも、それらが倒れて被害を拡大させる危険性があるからだ。
石川県の志賀原子力発電所では、運転停止中の1号機・2号機で変圧器内の絶縁油の漏洩や、使用済み燃料貯蔵プールの水の飛散が確認されたが、いずれも安全上の問題となる被害や、福島第一原発のような放射能漏れも発生しておらず、外部への影響はないとされた。
また消火設備が動作したが、火災の発生は確認されていない。さらに敷地内の状況を改めて確認したところ、1号機の海側に設置している高さ約4mの防潮壁が、数cm傾いているのが発見された。東日本大震災では、津波による被害も大きかったが、福島第一原発による放射能漏れがあり除染を行う必要もあったため、復旧に時間を要している。
石川県の七尾大田火力発電所では、稼働中の1号機・2号機が停止した。新潟県の糸魚川火力発電所が地震から約6時間後に運転を停止したほか、富山県の富山新港火力発電所では1号機・2号機で出力の低下が発生した。太陽光発電所は七尾市と能登町に3カ所あるが、被害を受けた。感電を防ぐため、経済産業省は壊れた太陽光パネルに近づかないよう注意を呼び掛けた。
北陸電力、北陸電力送配電、東北電力、東北電力ネットワーク、東京電力エナジーパートナー、東京電力パワーグリッドは、災害救助法が適用された市町村、それに隣接する市町村に対し、特例処置として電気料金の支払期限の延長などを認める申請を経済産業省に行い、1月5日に認可された。
ライフライン(2)水道
石川県内では、1月7日時点で14の市町において6万6,000戸余りで断水が続いていた。とくに輪島市・珠洲市・七尾市・穴水町・能登町・志賀町・中能登町では、ほぼ全域で断水した。石川県では、浄水場が被災した上、配水管が広範囲で損傷したことから断水が長期化している。地震発生から約1カ月が経過した2月2日時点では石川県内では約4万戸で断水が続いていた。2月14日時点では、輪島市と珠洲市のほぼ全域を含めた石川県内では、約3万戸が断水していた。
輪島市の水道局へヒアリングしたところ、3月2日の時点で6,086戸が断水していた。断水している世帯の人に対しては、避難所に給水タンクを設置して、定期的に給水車が出動して対応しているという。
石川県以外でも、地震により配水管など水道設備の被害を受けた住戸が新潟県・富山県・長野県・岐阜県・福井県で13万5,640戸に達した。富山県氷見市では1月7日時点で5,100戸が断水していたが、こちらは浄水場などが被害を受けなかったこともあり、1月21日までに完全に復旧した。新潟市内でも断水の被害があったが、震源地から離れているため、直ぐに復旧している。
水道は、浄水場が被害を受けると、飲み水として使用できる安全な水が供給できなくなる上、配水管が破損すると地下に埋まっている配水管を交換して、安全かつ安定的に供給できる体制を整えるまで時間を要してしまう。また「水道が復旧した」と言っても、地震前のように、自由に使える訳ではない。筆者が輪島市内で入った食堂では、食器類を洗浄するだけの十分な水が確保できないため、使い捨ての食器類で、カレーが提供されていた(写真10)。
下水道に関しては、石川県輪島市など6市町の下水管延長計685kmのうち、52%に当たる359kmが被災した。とくに珠洲市では、下水管の94%が機能を喪失する甚大な被害を受けた。この下水管機能停止の数値は、東日本大震災の1%、阪神・淡路大震災時における兵庫県内の2%、熊本地震における熊本県上益城郡益城町の3%、新潟県中越地震における長岡市の22%と比較して、突出している。
また被災地では多くの住宅で下水道ではなく浄化槽が使われていたが、浄化槽も地面に浮き上がったり配管が壊れたりして使用ができなくなったケースが多かった。断水から復旧しても、トイレで水を使うことができなくなっている公共施設もある(写真11)。そこで被災者が、自己負担なしで浄化槽を修理する方針が決定した以外に、環境省は2月16日から浄化槽に関する相談を受け付けるフリーダイヤルを設置した。
ライフライン(3)ガス
都市ガスは、金沢市内などで普及していた。金沢市内は、金沢エナジーにより供給されている地域では、供給に対する支障が121件、富山県内の日本海ガスにより供給されている地域では27件とガス漏れが131件あった。
北陸ガスが供給している地域では、ガス漏れが297件確認されたが、いずれも1月5日までに復旧するなど、北陸ガスには災害救助法が適用されたこともあり素早く復旧した。
輪島市では、都市ガスが普及しておらず、家庭は燃料店からプロパンガスを購入して使用しているため、ガスが止まるというトラブルは発生しなかった。
ガスは、電気や水道とは異なり、ガス漏れが発生すると、周辺に火気があれば、爆発する危険性を有するため、電気や水道より復旧に時間を要する。
(つづく)
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